日常生活に欠かせない業務に従事する「エッセンシャルワーカー」。新型コロナの世界的な流行を受け、特に医療関係者の存在や功績は大きな注目を集めている。一方で、エッセンシャルワーカーの待遇面や労働環境について課題を指摘する声も少なくない。ここではエッセンシャルワーカーをめぐるこれまでの話題について振り返る。

コロナ禍で注目を集める「エッセンシャルワーカー」

 新型コロナウイルスが拡大を続ける中、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人々が注目を集めている。英語の「エッセンシャル(essential)」は日本語で「必要不可欠」といった意味を持つことから、エッセンシャルワーカーとは日常生活に欠かせない職種、例えば「医療」「介護福祉」「小売り・販売」「公共交通」「通信事業」などに携わる労働者を指して使われることが多い。

 エッセンシャルワーカーは人々の生活や社会システムの基盤を支えているため、パンデミックの最中でも業務を停止することは難しい。中には医師や看護師のように、新型コロナに直接向き合うことが求められる人々もいる。このためエッセンシャルワーカーは、コロナ禍にあってはリスクと隣り合わせの職種だ。

 こうした背景から、政府もエッセンシャルワーカーを重要視している。大臣名で「エッセンシャルワーカーへの感謝のメッセージ」を表明したり、より具体的な施策として「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」(一定要件を満たす医療従事者に最大20万円の慰労金を支払う制度)をスタートさせたりしたのもその一環といえる。

 一方、エッセンシャルワーカーの多くは非正規労働者で、低賃金・長時間労働を強いられているとの指摘もある。政府が設置した新型コロナウイルス感染症対策分科会の「緊急提言」でも、エッセンシャルワーカーの多くが女性で「待遇面や働く環境面が厳しい状況にある」ことや「テレワーク導入が困難な職業である」ことが指摘された。

 社会に欠かせない存在としてたたえられる一方で、厳しい労働環境に置かれているエッセンシャルワーカー。今回は最近の記事の中から、エッセンシャルワーカーをめぐる現状と待遇改善を目指す動きについてまとめる。

のど元過ぎれば差別、非正規、低賃金も忘れるの愚

 「新型コロナのパンデミックで広がった言葉の一つ」として、エッセンシャルワーカーが注目されている。欧州でも「市民の生命と財産を守るために働いている人」として認識され、キーワーカー、クリティカルワーカーと呼ばれているという。

 しかしエッセンシャルワーカーの多くに共通するのは「労働市場での地位が低く、報酬も恵まれていない」という課題だ。特に日本では「訪問介護員の83.9%が女性職員(平成29年度介護労働実態調査)」「看護師は9割以上が女性(厚生労働省調べ)」で、働く女性の多くが厳しい労働環境に置かれていることがうかがえる。

 それに加え、コロナ禍で差別的な扱いを受けるエッセンシャルワーカーも少なくない。「バイ菌呼ばわり」されたり、理不尽に怒鳴られたりする人たちも多く、医師ですら暴言の対象になっている。これらの「カスハラ (カスタマーハラスメント)」はメディアでも報道されたが、筆者によればコロナ禍の沈静化(当時)とともに忘れ去られ、「何事もなかったかのように、日常が戻りつつある」という。

欧州大失業(4)山森教授「ベーシックインカムは希望の言葉」

 同志社大学経済学部の山森亮教授も、エッセンシャルワーカーの置かれた立場に懸念を感じている有識者の一人。新型コロナが拡大する中で「どこの国でも今、食品スーパーや物流で働く人たちがエッセンシャルワーカーと持ち上げられ拍手をされていますが、とても低い賃金で働いており、ワーキングプアとも言えるような状況から抜け出すのは簡単ではありません」と山森氏は語る。

 そのような「市場の力学」を変えるきっかけとして期待されているのが、ベーシックインカムの導入だ。ベーシックインカムとは「すべての人に無条件で一定の額のお金を給付する」制度。すでに北欧などで実証実験が始まっており、スペインでも不完全ながらベーシックインカムに近い制度の導入が決定された(当時)。

 一律にお金を配ることに対しては批判や抵抗も大きいというが、山森氏は「既存の生活保障や失業手当を充実させる方法」として一つの選択肢になり得ると考えている。

READYFOR米良社長「惨禍に見た共助の萌芽(ほうが)」

 そのような中、エッセンシャルワーカーの支援に力を入れる企業も現れている。

 クラウドファンディング大手のREADYFORでは「社会機能を維持するために前線で働くエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちこそお金が必要」と考え、2020年4月に「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」をスタートさせた。2020年8月の時点では個人や企業から8億4000万円近くの寄付金が集まったといい、エッセンシャルワーカーに対する関心の高さがうかがえる。

 「資本主義の世界でお金が流れにくい分野に、お金が流れる方法を編み出していく会社」を自認するREADYFOR。政府の支援が行き届いていない「あまりにも小さな団体」や「地域の飲食店」の支援を通して「自分たちの社会を自らの力で変える」きっかけをつくり、コロナ禍からの「日本の再興」を目指しているという。

最後に

 新型コロナの感染拡大で注目を集めたエッセンシャルワーカー。国はもちろん、多くの企業や個人がこれらの人たちの功績を認め、賞賛している。しかしエッセンシャルワーカーには低賃金の非正規労働者も多く、厳しい労働環境に置かれているという。国や企業が支援に本腰を入れる中、社会に貢献するエッセンシャルワーカーたちの今後に引き続き注目していきたい。

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