クラウド時代に最適化した、さまざまなビジネス向けサービスを送り出しているfreee。主力サービスの「クラウド会計ソフトfreee」は、リリースからわずか5年で100万件のユーザーを獲得している。この記事では同社に関する過去のトピックを紹介していく。

クラウドを武器に成長を続ける「freee」とは

 いわゆる「クラウド会計ソフト」のパイオニアとして有名な「freee」。会計ソフトを中心に、労務管理や会社設立手続き、資金調達など、会計業務と関連するさまざまなクラウドサービスを立て続けにリリースし、話題を集めている。

 freeeを創業したのは米グーグル出身の佐々木大輔氏だ。グーグル時代は日本やアジアでの中小企業向けマーケティングチームを統括するなど活躍していたが、2012年7月にfreee設立。翌13年には最初の(そして現在も主力の)サービスとなる「クラウド会計ソフトfreee」をスタートさせた。

 当初顧客のほとんどは社員数が10人未満の中小企業と個人事業主だったが、月額980円(法人は1980円)という手ごろな価格設定も功を奏し、サービス開始半年で利用事業所数が1万件を超えている。さらに開始6年目の2018年には100万件を突破、2019年12月には東証マザーズ市場に上場した。

 freeeが提供するサービスの魅力は、価格だけではない。最初にリリースされた会計ソフトfreeeでは「カード情報との同期機能や明細からの自動仕訳」といった画期的な機能や、ソフトそのものの使いやすさが大きな支持を集めた。

 なお、同社が「クラウド会計ソフト」以降にリリースしたサービスには、以下のものがある(現在もサービスが続いているものをピックアップした)

  • クラウド人事労務ソフトfreee
  • マイナンバー管理freee
  • 会社設立freee
  • 中堅企業向けクラウドERP
  • 申告freee
  • 開業freee
  • 創業融資freee

 これらのサービスにもクラウドならではの手軽さと機能性が生かされており、コロナ禍でリモートワークを取り入れる企業が増える中、さらなるユーザー拡大が期待される。

 この記事では、サービス開始から現在までのfreeeの歩みを過去記事から振り返ってみる。

国内初の「フィンテックファンド」は成功するか

 フィンテック分野の有望企業として投資家の注目を集めるfreee。2015年12月には、設立されたばかりの「FinTechファンド」から第1弾の投資先に選ばれている。FinTechファンドはその名の通り「フィンテック分野の有望ベンチャー」に投資する目的で、SBIインベストメントが設立した国内初のフィンテックファンドだ。

 すでに米大手ベンチャーキャピタルやリクルートホールディングスなどから数十億円規模の出資を受けているfreeeだが、同社にこれほど資金が集まる背景には、フィンテック関連企業は「日本で100社あるかないか程度で、少ない」(SBIインベストメント 後藤健取締役)という事情もあるという。

 日本のフィンテック業界を発展させていくためにも、freeeの活躍に期待がかかっている。

小さいほど格好いいクラウドが無駄を撲滅

 サービス開始からちょうど3年目の2016年3月、クラウド会計ソフトfreeeのユーザー数が60万事業所を突破した。成功のカギについて、freeeの佐々木代表は「リーズナブル」という言葉を挙げる。

 佐々木氏の言うリーズナブルとは、言い換えると「シンプルに、効率よく仕事ができる」こと。それを具現化したのが、クラウド会計ソフトfreeeの「経理に関する入力作業の自動化」という機能。たとえばfreeeの会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの取引状況がAIによって自動的に仕分け・分類される。これまで経理担当者が毎日繰り返していた作業が「圧倒的に簡単になる」のが魅力だ。

 佐々木氏がfreeeのサービスを生み出した背景には「家族が3日間ぐらい帳簿と格闘していた」子供時代の思い出や、「チームの経理担当者が1日中、入力作業に忙殺されていた」ベンチャー企業での体験があるという。「存在しないなら作るしかない」という思いでクラウド会計ソフトを開発したように、今後も「社会運動を加速したい」と佐々木氏は語る。

freee流、クラウド時代の「エコシステム」作り

 2018年にサービス導入事業所が100万件を突破したfreee。わずか6年という大躍進の背景にあるのは、クラウド時代の「エコシステム」づくりだ。

 freeeのサービスは、1社だけで完結するものではない。たとえばクレジットカード決済サービスでは米国の「スクエア」と連携し、経路検索と運賃計算は「ロデム」と連携している。こうした連携相手は、小さなものまで含めると約4000件に上るという。

 これほどまでに多くの企業(サービス)を巻き込むことができたのは、freeeが「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」を公開しているからだ。データ流出への恐れから日本ではAPI公開に慎重な企業が多いというが、同社の佐々木CEOは、API公開が「利用者に新しい価値を提供する」という強い信念の下で活動を続けている。

マザーズ上場佐々木CEOが狙う「人工知能CFO」の座

 マザーズ上場を果たしたfreeeだが、佐々木CEOは「ここからが第1章」と話す。freeeはこれまで、クラウド会計ソフトを通して経理作業の自動化など画期的な価値を提供してきた。しかし「会計や人事のソフトウエアにとどまらず、いずれは人工知能CFO(最高財務責任者)となって中小企業の成長を促す」のが佐々木氏の次の狙いだ。

 好調なサービス、何度にもわたる資金調達成功、上場などすべてが順調に見えるfreeeだが、実は創業以来「赤字」が続いているという。それでも海外の投資家を中心に資金は集まり続けている。その理由について佐々木氏は「日本ではSaaSに対する理解が浅い一面があるが、海外投資家はその点理解が深い」と言い、その点で成長に対する期待も大きい。freeeの今後を世界が注目している。

新型コロナで進むリモートワーク、取引先まで配慮しているか

 コロナ禍がさまざまな企業のサービスや業績に影響を与えている。自社への影響について「もう少し時間をかけてみなければどれほどの影響を受けているか分からない」と語るfreeeの佐々木CEOも、業務の「明確なピークがなくなっている」というマイナスのベクトルと「クラウドサービスに興味を持ち始めている企業が増えている」というプラスのベクトルを感じているという。

 もちろん他社と同様、freeeでも業務のスタイルは変わりつつある。3月から全社でリモートワークを導入しており、「押印を必要とする法務部」の出社頻度もかなり減らしている。入社式では新入社員の紹介を動画で制作し、インタラクティブなコンテンツとして社員にストリーミング配信するという新しい試みも行った。

 それでも「押印や対面といった従前から続く日本の慣習」を変えていくには、自社だけでなく取引相手のことも考えなければいけないと、佐々木氏は言う。

最後に

 2013年のサービス開始以来、順調に拡大し続けるfreee。そのカギはクラウド会計ソフトという画期的なサービスだけでなく、「無駄をなくしたい」という佐々木CEOの信念だ。一方で赤字体質からの脱却や先の見えないコロナ禍での事業展開など、freeeが抱える課題は決して小さくない。これからのfreeeの歩みに要注目だ。

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