緊迫した空気が続き、各国との先の見えない状況から長きにわたって気を休めることができない「北朝鮮問題」。今回はこれまで本誌が取り上げてきた北朝鮮にまつわる記事を通じて、各国との問題や外交の状況について解説していく。北朝鮮内の政治や軍事技術の進展に触れながら、日本、韓国、米国、その他諸国とのニュースから今後の問題収束について考えていこう。

北朝鮮問題とは?

(記事2ページより引用)
(記事2ページより引用)
[画像のクリックで拡大表示]

 「北朝鮮が飛翔(ひしょう)体を発射した」「日本海に落下した」など、最近も北朝鮮を巡るニュースが飛び込んでくることが少なくない。

 北朝鮮問題とは、北朝鮮による核兵器の開発および保有に伴い、米国やその他アジア周辺国との間に起こる問題のことを指す。日本人拉致問題も忘れてはならない。

 問題の背景にあるのは、1950年に韓国と北朝鮮との間で生じた国際紛争「朝鮮戦争」にあることは間違いない。実質、米国をはじめとした諸国と北朝鮮の間では終戦しておらず、共同宣言により「冷戦状態」が続いていた。そして転機となったのが2003年1月10日、米国の軍事的脅威を理由に挙げ、北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を通告したことだ。これを機に北朝鮮が正式に核の保有、その実験計画を掲げるようになり、米国との外交はもちろんのこと、周辺の日本や韓国との間にも緊迫した空気が流れている。

国防委員会を廃止!軍部主導から、金正恩氏自らがリードする政治へ

 北朝鮮との関係性がより緊迫した背景を考えるにあたって、北朝鮮の政治に大きな変化があったことは見逃せない。同国は16年6月29日に行われた最高人民会議(日本の国会に当たる)で憲法を改正して、国防委員会を廃止した。軍部が政治を主導していた「先軍政治」の体制から、金正恩氏をトップに戴く朝鮮労働党が指導する政治へ変化した、歴史的な瞬間でもあった。金正恩氏による「親政クーデター」とも言うことができる。これまでは軍部と軍人に権限が与えられ、いわば利権が独占された状態であった。金正恩氏は「核兵器開発」と「経済政策」の「並進政策」を推進するために、既存の体制を大きく変えたことになる。

相次ぐ核実験により、韓国内で高まる予防攻撃論・核武装論

●北朝鮮の核実験
回数 実施日 規模
1回目 2006年10月9日 M4.2
2回目 2009年5月25日 M4.7
3回目 2013年2月12日 M5.1
4回目 2016年1月6日 M5.1
5回目 2016年9月9日 M5.3
(注)数字は実験によって起きた地震の規模。米地質研究所の発表による。
(記事内の表を引用)

 16年9月9日の午前9時半ごろ、北朝鮮が5回目の核実験を実施したことが報道された。当初は「核実験によると見られる地震の規模はマグニチュード5.0。核爆弾の威力は(TNT換算)10キロトン程度と推定され、これまでで最大の規模である」と報道された。その脅威は韓国内で特に注視され、以前より高まっていた予防攻撃論や核武装論に、一気に火がついた。弾道ミサイル発射実験も回数を重ね、核弾頭の運搬技術も徐々に整いつつあることを各国に知らしめている。北朝鮮はこの頃から「いつでも戦争を開始できる」姿勢を示していることが本ニュースから分かる。

「米本土を狙う固体推進剤ミサイルの開発を止めない」と宣言

 17年4月15日、平壌で軍事パレードが実施され、射程1万km級と目される新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実物大模型が披露された。模型とはいえ、これを披露したことには明確なメッセージがあると専門家は言う。すなわち、北朝鮮は「米国本土を狙う固体推進剤ミサイルの開発を止めない」と宣言しているようなものだ。

 それまでに5回の核実験を実施している背景から、6回目が懸念され、米国との緊迫した空気がより一層高まった。

米朝首脳会談が実現するも北朝鮮の核放棄は大きく進展せず

 19年6月30日に突然実現した米朝首脳会談で、トランプ氏は現職の米大統領として初めて北朝鮮に足を踏み入れた。しかし、集まった首脳の振る舞いからは外交成果よりも政治的実利が目立つ状況でもあった。また、北朝鮮は国際社会の支援を次々に引き出しながら、核やミサイルの開発をエスカレートさせるばかりだ。

米国とは決裂?4回目の首脳会談は実現するのか

 19年10月5日、ストックホルムで非核化をめぐる米朝実務者協議が開かれた。協議後の両者の言い分には大きな食い違いがみられる。北朝鮮が「決裂した」と言うのに対し、米国は「良い議論ができた」と評価する。双方の思惑がある中で帳尻合わせができないままだ。北朝鮮の非核化については、実現するかどうか見通しは立たないが、今後の米朝首脳会談に持ち越されるだろう。

排他的経済水域を巡り、日本やロシアとも緊迫ムードに

 北朝鮮問題がより一層の緊迫ムードを高めるのは、外交交渉だけが原因ではない。

 例えば、日本やロシアでは排他的経済水域(EEZ)内で北朝鮮籍漁船とのトラブルが少なくない。日本では水産庁の取り締まり船に追突したり、ロシアでは国境警備隊の監視船に対し武力攻撃したり、と事件を起こしている。領海内ではないことから、慎重に対処すべき問題になっている。

米国とのあつれきから浮き彫りになった北朝鮮とイランの関係性

 2020年1月1日に北朝鮮は、朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験と核実験のモラトリアムをやめる決定をしたと発表した。米国と再び対立する姿勢に立ち戻ったのである。これをきっかけに北朝鮮とイランの関係性に注目が集まった。イラン・イラク戦争の期間、北朝鮮がイランに対して、北朝鮮製のミサイルを輸出したことがある。これは外貨稼ぎが目的と推測されている。核開発協力があると断定はできないが、米国との対立姿勢が再燃したため、20年の初頭では目が離せない事態であった。

最後に

 ここまで、北朝鮮問題の重点である核実験や非核宣言の大まかな流れ、各国との外交や取り巻く問題についてまとめてきた。続くミサイル発射実験、エスカレートする威嚇や制裁緩和の要求など、北朝鮮は米国と再度対立する姿勢を見せている。

 また、金正恩氏が「核兵器開発」だけでなく、「経済政策」の推進も掲げていることから、外貨を求め、イランなどその他の諸国との関わりも深くなり、問題はより複雑化している。緊迫した空気が漂うが、少しでも収束に進むことを願うほかない。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。