習近平国家主席は、中国史においても力のある指導者として知られ、憲法改正や大規模な反腐敗運動などを行い、自らの地位を確固たるものにしている。本記事では、そんな習近平国家主席と、その政権の歩みを過去記事を振り返りながら紹介する。

習近平政権のこれまで

 習近平政権が始まったのは、2012年。18年には憲法改正を行い、習近平国家主席が、生涯にわたりその地位を維持することが可決され、憲法にその名前が刻まれるなど、長い中国史においてもひときわ大きな力を持った指導者となった。存命中に憲法に名前が記されるのは、毛沢東以来初めてのことだという。また、習近平国家主席が最高指導者となってから、中国ではかつてない規模の、反腐敗運動が行われている。最初の1年で、26万人以上の党員が投獄されている。

中国の習近平政権はどこに向かうのか?

 表紙に「RISING CHINA」と大きくデザインされた書籍、『中国が普通の大国になる日』。本書は、中国礼賛本ではない。著者は、習近平政権の中国が進む道は、これまでの共産党一党独裁という政体を民主化に近づけていくことしかないと訴える。もちろん、長年続いた一党独裁政治を、一気に民主主義体制へ切り替えることは簡単ではない。しかし、このまま所得再分配機能が働かずに格差問題が深刻化すれば、共産党幹部の腐敗に対してたまっている国民の不満が止めようのない暴動に発展してしまう。それを避けるには、最低でも司法の独立性を認め、国民による政治の監督・監視機能を整えなければならないと指摘する。また、習近平政権への様子見が終わる14年頃に、中国は内部崩壊するだろう、と本書は予測していた。これは、欧州各国が「チャイナリスク」をヘッジするため、投資先を他国に移していたことを受けての予測。本書は、中国への偏重投資を続ける日本企業への警告書でもあった。

「習近平が恐れるのは中産階級の離反」

 そんな現在の中国の、絶望的な状況に置かれた農民の姿を描いた書籍『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』を執筆した川島博之・東京大学大学院農学生命科学研究科准教授と、ノンフィクションライター、山田泰司氏の対談記事を紹介しよう。川島氏は、中国共産党の現在の体制(17年当時)、つまり習近平政権の意思は、都市戸籍を持つ4億人が農村戸籍の9億人から搾取する「戸籍アパルトヘイト」をもう20年ほど継続したい、というところにあるだろうと述べていた。そして、その上で中国政府にとって驚異なのが、中産階級の離反だという。農民は既に分断され、農民工も個人個人は不満があるけど、少しでも騒動を起こせば逮捕できるため怖くない。しかし、中産階級はそうもいかない。しかし、彼らも大きな不安を抱えているのだという。中産階級の支持を得られないのは、習近平政権にとっては大きな打撃だ。

習近平は「父の思い」覆し、独裁憲法に走るか

 18年1月半ば、通常より1カ月ほど早く、2中全会(第19期中央委員会第二回全体会議)が行われ、3月の全人代で行われる憲法修正案が全会一致で可決された。その内容はいまだ公開されていないが、少なくとも憲法前文に「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という言葉は盛り込まれたようだ。習近平国家主席が今回の憲法修正で、父親の法治への思いを完全に否定し、“文革憲法”に逆行させるような修正を行ったのなら、それはもはや、82年憲法の修正ではなく、新たな“習近平憲法”の制定である。習近平が独裁を行うための憲法だ。さすがに、中国憲法が大きく変更され、しかもそれが、強国主義を掲げる習近平の独裁を後押しする形の様変わりであれば、日本にとって、自国の憲法改正をきちんと考える時機であろう。

習近平独裁を裏付ける「新憲法」を読み解く

 中国の政治が大きく音を立てて変わろうとしている。18年2月26日から28日までの間、普通なら秋に開かれ、経済政策をはじめとする新政権の政策の方向性、改革の方向性を打ち出す場となる、三中全会が突如招集されることになった。その三中全会の招集が発表された翌日の25日に、3月に開催される全人代で可決される予定の憲法修正案が公表された。この修正案で、第79条の国家主席任期の「連続二期を越えない」という制限が取り払われたことで、中国内外は騒然となった。習近平独裁が始まる!とおびえた中国人が一斉に「移民」のやり方をネットで検索したために、「移民」がネット検索NGワードになってしまったという。新華社が公表した修正点は21か所。以下の記事では、その中で特筆すべき8点を紹介する。

習近平氏はもう後戻りできない

 憲法を修正してまで習近平国家主席がやりたいことは、共産党政権の存続だと亜細亜大学アジア研究所の遊川和郎教授は分析する。18年は中国が改革開放政策を取り入れてから40周年で、その間に中国は確かに目覚ましい経済成長を遂げた。しかし、裏側では貧富の格差が広がり、党内に腐敗が蔓延。このままでは共産党の存続が危うい。習近平国家主席は、そう危機感を募らせた。同氏は「世直し」をして、もう一度共産党政権存続の基盤を再構築することが自分の一番の使命だと考えているのだろうと語った。

「中国式グローバル経済」へと舵を切る習近平政権

 一方で習近平国家主席は、中国が主催する博鰲アジアフォーラム年次総会の開幕式(18年4月10日)で、対外開放拡大を打ち出し、知財権を強力に保護するといい、輸入自動車の関税引き下げや合弁自動車企業の外資持ち株比率制限の緩和、金融市場の外資参入制限の緩和などを約束した。世界中のグローバル企業関係者たちは、この演説に拍手喝采。中国に貿易戦争をしかけた米トランプ大統領も、こうした習近平の発言に感謝と歓迎の意をツイッターで早速表明。アナリストたちは、米中貿易戦争は回避されると安堵し、アジア株、米先物株も一時的に上昇した。

習近平は1人ぼっち? 外遊に党中央の動静を探る

 このように、グローバル路線を打ち出した習近平国家主席。しかし、18年7月下旬に行なった、この年初めての外遊には、王滬寧や劉鶴といった、習近平政権のキーマンの姿がなかった。ちなみに、この外遊の行先はアラブ首長国連邦、セネガル、ルワンダ、南アフリカ、モーリシャス。自らが大戦略として掲げる一帯一路(シルクロード経済圏戦略)について、アラブおよび、アフリカ諸国から協力と支持を取り付けることが主な目的だったと見られていた。この「一帯一路戦略」にとってきわめて重要な外遊に、王滬寧と劉鶴が同行していないことが、いろいろな憶測を呼んだ。「一帯一路戦略」は、王滬寧と劉鶴が立案者。「一帯一路」という命名は王滬寧が考え出したものといわれている。一部では、4日の会議以前と以後で、党中央における勢力図が激変した、という噂があったという。

習近平氏肝いりの「アジア文明対話」 その意味を考える

 19年5月15日、北京で、第1回「アジア文明対話」が開催された。これは、14年に習近平国家主席が提唱してから、5年目にしてようやく実現にこぎつけたものであり、「一帯一路」国際フォーラムと並ぶ今年の中国外交の重要行事だった。同氏が、このアジア文明対話を重要視していた背景には、米中関係の悪化があった。とある中国人学者は、(国営メディアの)人民日報や新華社が公式には使用を控えていた『貿易戦争』という言葉を使い始めたことが物語る通り、中国は米国の仕掛ける貿易戦争を受けて立つ臨戦モードに入った。同時に、足元のアジアでの結束を固める必要性をより強く認識し、それが『アジア文明対話』に対する習主席の深いコミットにつながったと述べた。

習近平氏の「文明の対話」と米国で復権する「文明の衝突」

 一方、「異なる文明間の交流と対話」による平和的共生を呼びかけた習主席の演説の半月前、米国務省政策企画局長のキロン・スキナー氏は、米中競争を「異なる文明、異なるイデオロギーとの戦い」と呼び、「米国がかつて経験したことのない戦いである」と指摘して、波紋を呼んていた。彼女の認識は、米国の政治学者サミュエル・ハンチントン氏が1990年代に提唱した「文明の衝突」論を念頭に置いたものだ。ハンチントン氏は、文明を「最高の文化を持つ人間の集団」と定義し、「すべての国は文化を共有する文明圏に参加し、協力しようとするが、文化的に異なるものには対抗しようとする」と論じた。これに対し、習主席は、「文明は本来衝突しない」「文明に優劣はない」「自らの人種や文明が優れていると考え、他の文明を改造し、果ては取って代わろうとするやり方は愚かで破滅を招く」とくぎを刺したのだ。

習近平氏はどんな本を読んでいるのか

 そんな現政権トップの習近平国家主席は、どんな本を読んでいるのか。2015年12月31日の大みそか夜10時、中国では、NHKに相当する中央電視台(CCTV)が、習近平国家主席の国民に対する新年の挨拶を放映していた。この習氏の賀詞は後日、挨拶の内容とは違うところで注目を集めることになる。それは、習氏が挨拶を行った、北京の中南海にある執務室の本棚に並んでいた蔵書である。中国のネットメディア「新浪新聞」が、賀詞翌日の16年1月1日付で、CCTVの映像を拡大し、本棚に並んでいた本が何かを、一部ではあるが割り出してリストにして報じたのだ。周代(紀元前11世紀~紀元前8世紀)に編まれた中国最古の詩編で儒教の基本経典「五経」の1つである「詩経」。また、韓愈、柳宗元など7世紀から13世紀の唐代・宋代に生きた名文家8人の散文を集めたもので、当時の社会や生活に根ざしたテーマの文章を多く収録した「唐宋八大家散文鑑賞大全集」などがリストに掲載されていた。

最後に

 ここまで、習近平政権について、そして習近平国家主席自身についてのニュースを紹介してきた。独裁政権を長期で継続させようとする同氏の政策方針については、様々な見解があり、特に米国との対立は、近年強まっている。習近平政権が今後どこに向かっていくのか、注目する必要があるだろう。

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