日本の就活が大きく変わろうとしている。経団連はこれまでの大学生の就活時期のルールを廃止すると決めた。背景には日本の伝統的な雇用形態の変化がある。これまでとこれからの就活では何が変わり、今後はどのような人材が求められていくのか。また、各企業はどのような対策に乗り出しているのか。関連する過去の記事をまとめた。

日本の就活、その現状

 日本の就活では、内定までのステップが分けられ、それぞれに時期が定められていた。しかし日本の雇用形態が変化しつつある現在、企業・学生の両者にとって問題が噴出し始めている。例えば、短期間に集中的に選考が行われることで、企業も学生もお互いのことを知る時間が十分取れずにミスマッチが生じている。一方、経団連に加盟していない企業では早期化が進み、ルールは形骸化しつつある。これらを踏まえ、経団連では2018年に就活の時期ルールを廃止するとした。ただこれにより、新たな問題も出てきているようだ、

止まらぬ早期化、迫る「大学4年間ずっと就活」時代

 就活の早期化・長期化が進んでいる。現在インターンの4分の1以上が、採用に大きく関わるものとされている。採用選考が3年の夏から始まっているといっても過言ではない状況だ。リクルートキャリアの調査によると、20年卒就活生の6月1日時点の内定率が70.3%と調査開始以来この時期としては最も高かった。企業側もインターンシップの実施率がここ数年急激に高まっている。一部の企業は1~2年生の段階から学生に接触する動きもあり、「4年制就活時代」が訪れるのも時間の問題かもしれない。

「1年から就活」拡大の功罪

 大学1年生にまで対象を広げて採用に直結するインターンシップを実施する動きが、外資系やベンチャーを中心に広がっている。それらの企業の共通点は日本経済団体連合会(経団連)に加盟していないことだ。経団連は倫理憲章でインターンシップを採用に利用することを加盟企業に対して実質的に禁止している。加盟していない企業は大学1年生から優秀な学生をいち早く囲い込む狙いだ。しかしこのような動きは、学生に「早く企業から内定さえ得られればいい」という発想を生みかねない。

就活、経団連ルール廃止を正式決定

 経団連は2020年春入社の学生を最後に、経団連が主導して大学生の就活時期を決めるルールを廃止すると正式決定した。3月に会社説明会解禁、6月に面接解禁、10月に内定という3段階を踏む就活ルールだが、近年はIT分野など非加盟企業による解禁破りが相次ぐ。今後、政府と大学が中心となり就活の日程を話し合う予定だが、経団連のルールよりは縛りが緩くなるだろう。大企業の解禁破りや青田買いの動きが早まるなどの影響が予想される。

選考通過のESを無料配布!“平成の就活”は終わった?

 就活口コミサイト「ONE CAREER」を運営するワンキャリアの最高戦略責任者である北野唯我氏に、現在の就活の問題点と今後について聞いた。北野氏は、これからの就活は「多様化」「民主化」「分散化」がカギになると話す。まず、学生は仕事選びに対して多様な価値観を持つようになっているため、就活ルールのもと画一的だった仕事選びも多様化するだろうと話す。民主化については、多くの就活生が情報収集のために半実名の口コミサイトを利用している。信頼性のある口コミを元に就活するようになり、就活情報の民主化が進んでいる。分散化については、これからは住む場所や大学名は意味が薄れ、就活イベントに行く必要もなくなっていくという。北野氏は、新時代の就活では情報の透明性が増し、企業もより透明性の高い情報発信が求められるようになると話す。

学生を集めて合宿も!? 三井物産、JTの新卒採用が激変

 新卒採用のあり方が大きく変わり始めている。その変化に企業はどのように対応しているのか。大企業の中でも特に挑戦的な取り組みを実践している三井物産と日本たばこ産業(JT)の採用責任者2人に話を聞いた。JTの妹川氏、三井物産の古川氏共に、会社の求める人材像が変わってきていると話す。目の前の課題を解決するだけでなく、問いそのものを立てる「課題設計能力」が求められている。学生・人事共に挑戦することの重要性が増しており、三井物産では新しく「合宿採用」や「突き抜ける人材ゼミ」などの取り組みを始めた。

大企業も気づいていた!平成の新卒採用はやっぱりおかしい

 旧来型の新卒採用の仕組みに違和感を覚え、それを変えようと踏み切ったJTと三井物産。その背景には、終身雇用や年功序列の仕組みが崩れ、学生の就労価値観が変化していることがある。両者はその前提のもと、新たな採用方法や人事制度に取り組んでいる。具体的には、採用時に学生を見極める時間を増やすことでミスマッチを減らすこと、年功序列ではない個に焦点を当てた研修を増やすことなどだ。これからは「個」が組織に合わせるのではなく、組織を「個」に合わせる仕組みを作る重要性が増していきそうだ。

就活人気ランキングから丸ごと消えた……あの業界とは

 学生の就活に対する意識が変化してきている。全体的な傾向として、学生の安定志向は依然強い。新しい傾向は、IT企業や大手コンサルが人気であり、かつて上位にランクインしていたメディア企業が姿を消していることだ。これは安定したキャリア構築をするために、スキルを身に付けることを目的として、大手コンサルを選ぶ学生がいるからだ。問題は、部門別採用の数が少なく、職業で仕事を選ぶことが難しいことである。中途採用のような細分化された採用構造にすること、そのために会社全体で変革を起こしていくことが今後重要になる。

学生を規格化する「就活ルール」は即廃止すべき

 経団連が就活ルールを廃止すると宣言したことを受け、健康社会学者の河合薫氏は、就活ルールがあることで、学生がそれに沿わなければならないという「規格化」が起きていたと指摘する。河合氏は、これは学生の自律性を阻むものと捉えている。また、人間の幸福度は「自己決定」の度合いと関係するという調査から、就職先の選択もさらに多様化すべきだと述べた。

踏み出せなかった就活、阻んだ性の悩み

 現在の就活はマイノリティーに対して問題はないのだろうか。例えばLGBTについて、ラッシュジャパン(神奈川県愛川町)や米アクセンチュア、資生堂のようなLGBT社員を支援する制度が整っている企業はいまだに少ない。性のあり方は多様であり、誰しもマイノリティーになり得る。画一的に皆が同じ服を着て同時期に動き出す就活制度のあり方について、再考する必要があるだろう。

「画一的な就活でいいのか」一石投じる顔採用

 化粧品メーカー、伊勢半(東京・千代田)は2020年卒業予定の学生の就活に「顔採用」を打ち出し注目を集めた。これは同社の企画・宣伝部門の採用方法で、同社ホームページかインスタグラムから自分らしさを表現したコンテンツを提出してもらうものだ。実際には「顔採用」ではなく、「もっと個性を表現してほしい」という狙いがあった。その効果として、エントリーが前年比で2倍以上になり、倍率が上がった。また、その話題性から他の部門での応募も増え、結果的に企業のブランド価値も上昇したと実感しているという。

令和の就活スタイルを占う

 人生100年時代といわれ、長く働き続けることが必要となる一方で、これまで日本を支えてきた雇用形態が崩れつつある現在。就活の仕組みを変えることは企業にとっても学生にとっても必要だ。企業からは、既にこれまでの新卒採用方法に限界を感じていたという意見もあり、今後はさらに就活が多様化していく。具体的に大学や企業がどのような動きを見せ、令和時代の就活スタイルがどのようになるか、記事から手がかりを探していただきたい。

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