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テクノロジーの発展で、昨今は資金調達の手法が多様化している。特に注目を集めているのが、クラウドファンディングだ。企業だけでなく、個人でも比較的簡単なプロセスで資金を集められるようになっている。本稿では、そんな資金調達の現在のあり方を、過去記事を振り返りながら紹介する。

多様化する資金調達の手法

 昨今、ベンチャーキャピタル(VC)や銀行からの資金調達に加え、クラウドファンディングが盛り上がりを見せている。もともとは、米国で爆発的に普及した資金調達の仕組みで、起案者が商品の試作品やアイデアをウェブサイトを通じて公開し、共感した閲覧者が資金を提供するという流れで行われる。提供する資金の金額が多いほど特典が多く付与されるのが通常だ。

資金調達もボーダーレスの時代

 企業や個人事業主の資金調達というと、これまではベンチャーキャピタルや銀行、そしていわゆるエンジェル投資家といわれるような資産家からのものが多かった。しかし近年、新たな資金調達法として注目されているのがクラウドファンディングだ。元グーグル日本法人社長の辻野晃一郎氏が率いる、アレックスが運営する、商品化のアイデアに対して幅広く資金を調達するサイト「COUNTDOWN(カウントダウン)」も、クラウドファンディングを支援するサービスだ。米国で爆発的に普及した、このクラウドファンディングだが、2011年ころから、国内でもクラウドファンディングサービスが見られるようになった。

ネット経由で800万円以上を調達

 12年4月には、事業経験のない女性が、わずか2カ月弱で800万円を超える資金を集めた。提供したのは地元の銀行でも信用金庫でもない。全国に散らばる800人を超える個人だ。東日本大震災による津波で、市民に親しまれた岩手県の陸前高田市の図書館を再建したい、こうした思いから、立ち上がったのが地元のNPO(非営利組織)に所属する図書館司書、吉田晃子氏。震災から1年の12年3月11日、吉田さんは「READYFOR」というサイトにプロジェクトを掲げて寄付を募った。すると、呼びかけに共感した個人から続々と寄付が集まり、目標としていた200万円はたった3日で集まったという。金融機関が仲介せずに、個人と個人を結びつける新たな資金集めの動きが芽吹きつつあることが分かる。

中国「仮想通貨資金調達禁止」のインパクト

 クラウドファンディングもその種類は様々だ。例えば、近年新たな資金調達法として注目を集めているものにICO(仮想通貨発行による資金調達)がある。ICOは、ブロックチェーンというコンピューターの分散型台帳技術を使ってつくり出すデジタルトークン・暗号通貨を用いて、クラウドファンディング方式で資金を調達する。17年ごろには、中国ではICOがブームだった。しかしその中国は、17年9月に全面的にICOを禁止。その影響で、元建てビットコインは大暴落。9月8日までの一週間で20%ほど値下がりしたという。中国当局側が規制に踏み切った理由の「建前」は、「仮想通貨によるクラウドファンディングなどは一種の非合法融資であり、金融詐欺やねずみ講などの違法犯罪活動に関わる行為、金融秩序を著しく乱すもの」というものだった。

ソニーが資金調達サイトを開放

 このように、クラウドファンディングという資金調達に関しては、世界中で様々な見解が見られる。そんな中、日本を代表する企業であるソニーは、インターネット上で不特定多数の個人から資金を募るクラウドファンディングサイト「First Flight」を18年に外部に開放した。15年7月にサイトを開設し、ソニー自身がFirst Flightを通じて4つの商品でそれぞれ1000万円以上の資金を集め、製品化してきた。そこで培ってきたノウハウを生かし、斬新な商品を創出する機運を日本全体に広げる狙いがあったという。

資金調達サイトで、ものづくりを盛り上げたい

 First Flightはインターネット上で支援者を募り、開発資金を募ると同時に、新商品を販売する通販機能も併せ持つ。ソニーの新規事業創出プログラム(SAP)から創出したスマートウオッチ「wena wrist(ウェナリスト)」を皮切りに、1億円超の支援を集める新商品も相次ぎ登場。クラウドファンディングという資金調達の手法は、ものづくり業界で着実に広がりつつあると言えるだろう。ソニーは同サイトを立ち上げた理由を、「スピード感を持って、お客様と直接コミュニケーションを取りたかった」と語っていた。「共創で顧客に感動を与える」ことを目指すソニー。First Flightの強みをどう生かし、今後どう展開していくのかが注目される。

手軽な資金調達を万人に

 18年になると、クラウドファンディング市場はさらに拡大。少額でいいから手軽に現金が欲しい──。そんなニーズをかなえるアプリが相次ぎ登場する。そんな中、「NYで絵画の勉強をしたいので渡航費用を集めたい」「日ごろ苦労をかけている家族に焼き肉をごちそうしたい」。こうした願いをかなえるために、友人や会社の同僚など、自分のコミュニケーション範囲にいる人たちから数万円を集めるスマホアプリ「polca(ポルカ)」が人気を集め始めた。

 同サービスを立ち上げたのは、引きこもりや高校中退、東京都知事選への出馬・落選などの経験を持つ異色の起業家、家入一真氏だ。自身が社長を務めているフィンテックベンチャーのキャンプファイヤー(東京・渋谷)を通じて仲介アプリを提供しているという。ポルカの最大の特徴は、集める資金の規模をあえて小さくしていること。従来は起業家が事業の資金を募るといった目的などで使われてきたクラウドファンディングだが、ポルカは、仲間内からの資金集めが主な役割だ。実際、目標として設定できる金額は最大でも10万円だという。

資金調達もトップ営業も「全力疾走のチーム戦」

 とはいえ、いくら資金調達の方法が多様化しても、それ自体が簡単になったということではない。ヒト型ロボットベンチャー企業「SCHAFT(シャフト)」を米グーグルに売却し、現在は水道管関連のビジネスを展開する「Fracta(フラクタ)」のCEOを務める加藤崇氏は、創業から数年間の経営の資金調達のあり方について述べている。

 同氏によると、スタートアップは創業から数年間、必要最小限の資金を使いつつ、製品・サービスのアイデアを構想し、これまた必要最小限のチームを形成して、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、それを市場でテストしていくことがメインの活動になるという。資金調達に関しては、1年半から2年おきに行いながら前に進むことになるが、資金が枯渇すれば、その段階で会社としては死を迎える、「極めて厳しい世界」と語っている。

資金調達は結婚と同じ?

 一方、国内でIoT家電の先駆けとなる製品を、次々に生み出してきたハードウエア開発ベンチャーのCerevo(東京・千代田)の当時の代表、岩佐琢磨氏は、資金調達は結婚と似ていると語る。「理想の結婚相手に出会うためには、家にいるだけじゃダメで、やはり婚活するなど自分から動かないといけない」。ベンチャー企業や、スタートアップは、投資してくれる側から評価を得るために、自らビジネス価値を創出し、戦略的に行動しなければならない、というわけだ。

最後に

 ここまで、資金調達を巡る国内の現状を紹介してきた。昨今資金調達のあり方は、クラウドファンディングの登場により、以前より多様化していると言えるだろう。そして、そのクラウドファンディングも、仮想通貨を用いたICOといった新たな手段の普及が見られるなど、スピーディーな変化が見られる。今後もその動向に注目していきたい。

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