人気のピークは過ぎたものの、ポケモンGOほど世界中で幅広い層から支持を得たスマホゲームはないだろう。その人気の背景には、ポケモンというコンテンツの強さと、テクノロジーの革新性があった。本記事では、過去記事を参照しながら、ポケモンGOのこれまでを振り返る。

世代を超えて受け入れられた

 ポケモンGOは、モバイル機器を用いた位置情報アプリや位置情報ゲームを制作するナイアンティックと、ゲーム企画のポケモン(東京・港区)によって共同開発されたスマートフォン向け位置情報ゲーム。2016年7月6日、オーストラリア、ニュージーランド、米国で、先行してサービスを開始すると、瞬く間に人気が広がった。同月22日には、日本でもサービスを開始。ポケモンに親しみのある20、30代はもちろんのこと、これまでスマホゲームに触れたことがなかったポケモン非ネーティブ世代の40代以上も含め、幅広い年代層に受け入れられた。

登場とともに爆発的な人気となったポケモンGO

 16年7月6日に、米国で配信が開始されたポケモンGO。瞬く間にその人気は全米へと広がり、一大ブームとなった。米調査会社によると、リリース直後、米国での1日の利用者数は約2100万人となり、人気ゲーム「キャンディークラッシュ」が記録した同2000万人を超える歴代1位を記録した。

 同ゲームを開発したのは、米グーグル発祥のベンチャー企業、ナイアンティック。熱狂は順次、世界各国へと飛び火し、任天堂の株価は15日までに7日終値から86%も急騰し、時価総額は約1兆8200億円も増加したことから、ポケモンGOは「任天堂復活」の象徴としても報じられた。

「ポケモンGO」で犯罪やセキュリティー問題が発生

 しかしその人気の陰で、16年7月6日のリリース後まもなく、プレーヤーを巻き込んだ犯罪やハプニングが起きた。一つは、ミズーリ州のショッピングセンターの駐車場に止められた車にプレーヤーを誘い込み、所持品を奪うという窃盗。リリース翌日から犯人らが捕まる7月10日までの間に10人以上が同様の被害に遭ったようだ。

 日本でも報道されたハプニングとしては、ポケモンを探していた女性が偶然死体を発見したことが挙げられる。この19歳の女性は、ポケモンを捕まえようと川岸を歩いていたところ、うつぶせの男の死体を発見。すぐに警察に連絡をしたが、彼女はその後1時間怖くて泣き続けたという。このほか、交通トラブルやセキュリティー問題も起きている。

「ポケモンGO」の利用が個人情報のリスクをもたらすことも

 「ポケモンGO」などの位置情報ゲームでは、自分の居場所という個人情報をゲーム会社に提供しなければならない。その際に注意が必要なのは、ニックネームの付け方だ。

 ニックネームに、氏名の一部を使うといった形で、個人を特定しやすい名前を付けてしまうことには危険が伴うという。というのも、特定の場所に、いつも同じ名前があると、職場や自宅が近くにあることが容易に想像できるからだ。そこから、地域を特定してフェイスブックのページを探されると、氏名を割り出されてしまうリスクがあるという。

マーケティングにも衝撃をもたらした

 ポケモンGOは、マーケティングにも衝撃をもたらした。ポケモンGOで遊んでいると、そのうち、“Pokestops”(日本語で「ポケストップ」。アイテムを入手できる場所)または“Gym”(日本語では「ジム」。ポケモン同士が闘う場所)として登録されている場所があることに気づく。これはやっていただかないと説明が難しいが、プレーヤーとすれば一定のレベル以上になると「寄りたくなる」場所だ。その場所に立ち寄る人が多くなれば、ポケモンGO上だけではなく、リアルな意味でも人が増える。

 これに便乗する形で、米国ワシントンでは、ジムに設定された地点でポケモン関連のキャンペーン(「ポケモンコスチュームコンテスト」)を行い、通常以上の売り上げを上げるなど、ポケモンGOを集客ツールとして活用するケースが出てきた。日本マクドナルドもポケモンGOとの連携を発表。集客ツールとして注目を浴びた。ブルームバーグは、ポケモンGOは18億ドルの価値があると報じている。

ポケモンGOの成功は社会との「折り合い」を付けたとき

 ポケモンGOの開発に最初から携わったポケモンの宇都宮崇人専務執行役員は、開発の裏側を語った後、次のように語っている。「僕はまだ、『成功した』と社内で言ってないんですよ。本当にそう思っていないんです。いわゆる『社会との折り合い』を付けないと、ポケモン自体のブランドを損なうことにもなりかねないし、その辺の舵(かじ)取りを間違えるとプロジェクト自体の失敗にもなる」。優れたサービスであっても、広く社会に受け入れられなければ、成功とは言えない、と考えているようだ。

ポケモンGOは大人が飽きずに楽しめるのか

 ビジネス書作家の戸田覚氏は、16年9月の段階で飽きてきた、と語っている。同氏は、1)ポケモンGOは社会人でも楽しめるのか、2)ポケモンGOにはどうしてアンチが多いのか、3)アプリとしての完成度はどうなのか、4)ポケモンGOの人気は定着するのか、の4つのポイントに沿って、ポケモンGOの行く末を考察している。

現実世界とデジタルの世界の垣根をなくすAR

 ポケモンの開発・配信を担っているのは、米グーグルの社内ベンチャーとして産声をあげ、15年に独立した米ナイアンティックだ。 ジョン・ハンケCEO(最高経営責任者)は、ポケモンGOを通じたナイアンティックのゴールを「瞬発的なヒット」ではなく、「息の長い成功」だとする。そしてゲームを通じ、人と人との間につながりが生まれ、そのつながりが深まるのを手助けしたいとする。

 また、ポケモンGOの楽しさは、単にポケモンを捕まえることにあるのではない。外を歩き回り、足を運んだことのない場所に出向き、その場所でいろんな人々とつながる点だという。そしてポケモンGOで使われているAR(拡張現実)は、視覚的な体験を提供するだけではなく、現実世界とデジタルの世界をつなぎ、両者の垣根をなくす取り組みだとする。言い換えれば、現実世界にデジタルの情報が、シームレスに共存する取り組みなのだ。

日常がポケモンのおかげで彩り豊かになった

 なぜ、ポケモンGOで遊ぶ人が絶えなかったのか。その理由を、ハンケ氏は何気ない身の回りの日常が、ポケモンたちのおかげでより彩り豊かなものになった点を挙げる。ポケモンGOは、キャラクターを捕まえるのにも攻略アイテムを入手するのにも、とにかく現実世界を歩き回らないといけない。それまで日常の中で見過ごしていた、ちょっとしたことに気付いたり、ポケモンGOをプレーしている人々と顔を合わせたりすることで、日常をより豊かにするというのだ。

開発者が語る、ポケモンGOの「次」

 IngressやポケモンGOの展開はどうなるのか。ハンケ氏は米ナイアンティックが生み出したIngressは地元の人とコラボレーションすることで、地元の人とのコミュニティーを形成できたという。その例の一つが、17年11月に開催されたポケモンGOのリアルイベント「Pokemon GO Safari Zone in 鳥取砂丘」だ。ここには、約8万9000人が参加し、18億円の経済効果があったという。

 米ナイアンティックは次の展開として新たなゲーム「Ingress PRIME(18年11月にリリース)」を開発していた。古参ユーザーががっかりせず、かつ新規ユーザーが後れを取らず、萎縮せずに遊べる――そんな環境を作っていくとする。そのキーとなるのがナイアンティックが取り組んできたコミュニティー、人と人を出会わせるということなのだろう。

ナイアンティック、時価総額40億ドルに

 そんなナイアンティックだが、ロイターは19年1月、同社が2億4500万ドルを調達したことを報じている。この資金調達で時価総額は40億ドルとなった。ちなみにナイアンティックはその後の19年6月に「ハリー・ポッター」シリーズを題材とした新ゲーム「ハリー・ポッター:魔法同盟」をリリースしている。

最後に

 ここまで、ポケモンGOのこれまでと、その人気の理由を過去記事を参照しながら紹介してきた。ナイアンティックの ハンケCEOは、ポケモンGOは単なるARゲームではなく、人と人を現実世界でつないだり、日常を豊かにしたりする存在だとし、それが人気の背景にあると語っている。新ゲーム「ハリー・ポッター:魔法同盟」をリリースしたナイアンティックは今後、何を目指すことになるのだろうか。

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