日本はもちろん、海外でも深刻なセクハラ被害。意に沿わない退職を強いられたり、被害者が自ら命を絶つ最悪の事態を招いたりするケースも少なくない。セクハラをきっかけに、企業経営や政治に悪影響が出ることもある。過去に取り上げられた記事から、セクハラ関連のトピックを振り返ってみよう。

世界中に広がる「セクハラ」問題とは

 性的な嫌がらせを意味する「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」。どこからセクハラになるか(性的な言動をどの程度まで「嫌がらせ」と感じるか)は人によって異なるものの、「相手の意に反した性的言動」は基本的にセクハラといえる。

 日本で初めてセクハラを訴えた裁判は、1989年のいわゆる「福岡裁判」だ。上司から2年半にわたる性的な中傷や不当な解雇を受けたとして元上司と会社が訴えられ、女性側が全面勝利した。しかし同様の問題はその後も発生している。男女雇用機会均等法に関連して労働局に寄せられる相談の中で、セクハラに関するものは最も多いという。

 こうした傾向は海外でも同様だ。2017年には、SNS上の投稿に「#MeToo」というハッシュタグを付け、セクハラを告発する運動が盛り上がった。その舞台は欧米からアジアにまで広がっている。今回はセクハラ関連の過去記事から、日本の現状と米国・中国で話題になった事例を取り上げる。

多様化するセクハラ問題

 本人の意に反して部下や取引先の女性を誘ったり、「お茶出し」「お酌」といった雑務を当然のように女性に押し付けたりする行為は基本的にセクハラとされる。しかし最近では女性から男性、あるいは同性同士の言動がセクハラとなることも多い。飲食店や交通機関、さらにはSNS上の発言など、セクハラの対象となる人や場所は多様化する一方だ。

 セクハラをまん延させないひとつの方法として挙げられているのが、「ハラスメントを許さない」というトップによる宣言だ。そのために、欧米にならい社長にエグゼクティブコーチをつける企業もあるという。

介護職員への暴行、杖を股に当てるセクハラも

 セクハラ被害が多い職種のひとつが「介護業界」だ。厚生労働省の調査によると、介護職の42.3%、施設介護職員の44.2%、訪問介護職員の41.4%がそれぞれ性的嫌がらせを経験しているという。

 被害を受けた介護職員の中には「10年以上前のことだが思い出すと涙が出る」ほど精神的なダメージを受けているケースもある。

 介護業界が特殊なのは、要介護者が加害者になるという点だ。介護職員から要介護者への暴力やセクハラは大問題として扱われるが、その逆を問題視することは避けようとする風潮さえ見られる。

あの「ウーバー」がセクハラを容認したワケ

 2017年、オンデマンド配車サービスのウーバーで20人を超える社員が解雇されたことが明るみになった。きっかけとなったのはセクハラだ。セクハラを行う上司を「有能だから」という理由で会社ぐるみで放置していたのだという。

 こうした傾向の背後にあるのが「成果主義」の弊害だ。勝負に勝つことで得られる快楽や「勝てば何でも許される」といった態度は、いつの間にかセクハラの容認につながる危険がある。

セクハラ疑惑一色に染まった米最高裁判事の人事

 2018年、連邦最高裁判事候補のブレット・カバノー氏の承認を巡って上院司法委員会が大混乱した(当時)。原因のひとつとなったのは、36年前にカバノー氏から性的暴行を受けたという「セクハラ告発」だ。聴聞会での当事者の証言はテレビ中継され、1110万人が視聴するほど注目を集めたものの、結局カバノー氏は承認され、以降はFBIの捜査に委ねられたという。

 米国では近年、ハリウッド、政財界、マスコミ界などでセクハラ問題がクローズアップされ、「#MeToo」運動も活発になっている。男尊女卑が根強く残る米国社会で、セクハラが今後撲滅に向かうかどうか注目が集まる。

中国の名門大学を騒がせたセクハラ告発運動

 日本や韓国に比べ、女性の社会進出が進んでいる印象の中国でも、セクハラ告発運動が活発化している。2018年1月にはセクハラ告発をきっかけに、北京航空航天大学の大学院常務副院長が免職され、大学院指導教官資格と教員資格を取り消された。同年4月にはさらに別の学者も告発を受け、職務停止や教員契約の打ち切りというペナルティーを科された。

中国・女子受験生の「セクハラ自殺」の余波

 2018年、中国で19歳の女子受験生がセクハラをきっかけに自殺した。このショッキングな事件は、中国で反セクハラ立法の必要性の有無を議論する契機ともなっている。この事件に前後して、大学や学校現場でのセクハラ事件がいくつも報告される中国。ネット上での告発も枚挙にいとまがない。

 こうした背景にあるのが、「パワーがない人間は搾取されて当たり前」という、弱者敗者に厳しい中国社会の傾向だ。

弟子の尼僧が中国仏教協会会長をセクハラ告発

 セクハラ告発の波は「仏教界」にも波紋を広げている。2018年8月に、中国仏教界の最高指導者である「釈学誠」が、多数の尼僧に性的暴行を加えていたとして告発されたのだ。仏教界の最高権威者への告発は中国社会の注目を集めているが、釈学誠には習近平の後ろ盾があるとも噂されており、この問題がどのように決着するかは見通せない。

最後に

 洋の東西を問わず社会を揺るがす「セクハラ」問題。中には無自覚にセクハラが行われるケースもあるが、セクハラに対する社会の目は厳しい。「#MeToo」運動のように、積極的に「告発」に踏み切る被害者も増えている。

 職場でのセクハラが依然として多発する日本でも、セクハラを巡る世の中の動きに引き続き注目が必要だ。

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