ハイテク企業の一大拠点であるシリコンバレー。新しいテクノロジーやビジネスモデルが常に生まれ、有名企業や起業家がここから輩出した。それを可能にしてきた環境はどのようにつくられてきたのか。また現在は、トランプ政権の影響やシリコンバレーが発展したことによる住宅問題など、多くの問題が噴出しているという。現状はどのような街になっているのか、関連するニュースをまとめた。

シリコンバレーが注目される理由

 アメリカのカリフォルニア州北部に位置するシリコンバレー。多くの半導体メーカーや工場があったことがIT関連企業が多数生まれるきっかけとなった。アップルやグーグル、フェイスブックなどもシリコンバレーに拠点を置いている。また、スタンフォード大学やカーネギーメロン大学のような有名大学のキャンパスもある。優秀な学生が全国からこぞって集まり、起業家の育成にも力を入れているようだ。

シリコンバレーがもたらす未来

 現在シリコンバレーは変革の最中にある。そもそも、シリコンバレーから次々と画期的な技術や製品が生まれるようになったのは1950年前後だ。その後の技術革新には4つのフェーズがあった。まず、トランジスタ発明に端を発する半導体技術の進展。そして、スティーブ・ジョブズ氏らが創業した米アップルコンピュータ(現アップル)をはじめとしたパソコン時代。90年代半ばにはウェブブラウザーが誕生し、インターネット時代が到来。そして現在は第4のフェーズに突入。米Airbnb(エアビーアンドビー)や米Uber(ウーバー)のような、既存産業とソフトとの境界にある企業が成長している。

シリコンバレーに拠点の勘違い

 日本の優秀な技術者をシリコンバレーに送り出すだけではイノベーションは生まれない。では駐在員は何をすべきか。まずは現地のモノ作り・ITベンチャー、投資家と交わることでイノベーションの種を見つけること。現地の人材を多く雇い入れることも手だ。経営者はどうすべきか。独自のルールややり方をベンチャーに押し付けないことが重要である。大手企業には、投資したベンチャーに自由にやらせて言い分に従ってみるというところも出始めた。

シリコンバレーではデザイナーが重役を務める

 テクノロジー業界の新しい動向を捉えた会議を開催してきた米O’Reilly Mediaが、2016年1月に初めてデザインをテーマにした会議を開催した。デザインは、シリコンバレーのテクノロジーを作る上で重要な要素になっているのだ。ベンチャーキャピタルのパートナー(重役)としてデザイナーが加わるケースも増えている。デザイン性が重要視される理由は何か。それは企業にはストーリーが求められており、機能ではないストーリーを見いだすにはデザイナーの視点が重要だからだ。ただ、スタートアップでデザイナーの能力がうまく発揮されるためには、CEOなどトップの理解が必要である。

シリコンバレーがトランプ対策でカナダを目指す

 2016年12月ごろには、ハイテク産業に厳しいといわれるトランプ次期政権への対策として、カナダがシリコンバレーから注目されていた。アメリカでは不足するエンジニアを海外から雇うために必要なビザの発行が遅れ、スタートアップの急成長に追いつかないという問題が発生。しかしカナダでは、先ごろ移民法が改正され、技能労働者やアメリカ人の移住がしやすくなった。また、アメリカ国内で働いてきたカナダ人の間でも帰国する機運が高まった。こうして、英語が通じるトロントは既にテクノロジー産業のハブになっているという。

シリコンバレーが利益よりも大事にすること

 起業に必要な条件について、米国のYコンビネーター(以下、YC)COO(最高執行責任者)のカサー・ユニス氏の話を聞いた。YCは、起業家ポール・グレアムが若い起業家志望者を訓練する「夏合宿」として創立したものだ。YCが求めているのは、ソフトウエアを活用し、規模を拡大させる可能性があるスタートアップだ。ソフトウエアならば、ユーザーが本当に必要としているプロダクトの開発に成功すれば、指数関数的に成長できるからだ。またユニス氏は、起業において最も重要なのは起業精神と、それを育てるためのローモデルの存在だと話す。起業を志す人材や環境が整っているという点で、シリコンバレーは重要な場所だ。

反トランプを表明し始めたシリコンバレー企業

 トランプ大統領によるイスラム系国家に対する入国制限措置を機に、シリコンバレーの有名テクノロジー企業トップらが次々と反対の立場を明らかにした。意見表明には各企業に温度差がある。米Boxのアーロン・レヴィーCEOは強い口調で意見を表明した他、Airbnbのブライアン・チェスキーCEOは難民への宿泊場所提供を行うなど既に行動に出た者もいる。トランプ政権がテクノロジー業界に与えるインパクトは不透明ながら、様々な問題が降りかかる様相を呈していた。

なぜ若者たちは「シリコンバレー脱出」を望むか

 最先端の技術や起業家が集結し若者が引かれる街、シリコンバレー。そのはずが、民間団体による調査でミレニアル世代が街を離れたがっていることが分かった。理由は住みにくさだ。回答者は生活費の高騰や交通渋滞などを懸念しているという。最大の問題は住宅だ。良い学校がある地域は住宅や家賃がさらに高く、勝ち組でないと生活や、子供が通学することができなくなっている。実際に、シリコンバレー世帯の29%が何らかの援助なしには最低限の生活すらできないレベルだという。学歴による収入の差も全米平均よりずっと大きくなっている。こうした背景からか人気が停滞し、人口増加の伸びが緩慢になっているようだ。

「勝者」しか住めなくなったシリコンバレー

 今やシリコンバレーは「勝者」しか住めない町になってしまった。この変貌により、貧富の格差や住宅価格の高騰など社会問題が出てきてしまった。貧富の差が拡大しているだけではなく、勝者のレベルもが上がってきていることも問題だ。会社に歩いて通える距離に住もうとすると、年収の50%前後を賃貸料に費やす必要があるという。グーグルをはじめとするプラットフォーム企業が強大になるにつれ、地域社会にはひずみが生じ、弱い立場の人々に大きな犠牲を強いている。この解消のために、テクノロジー企業には病院にあるような「倫理委員会」を設置すべきだと指摘する教授もいる。

シリコンバレーの“貧困街”が抱く希望

 シリコンバレーの一角にある地域、イーストパロアルト。ここは平均所得が周辺の自治体より極めて低く、犯罪発生率も全米平均を大きく上回る。しかし高給取りのテック系社員が増えたことにより家賃相場が高騰している。その結果、低所得者はアパートを諦めキャンピングカーやガレージでの生活を余儀なくされている。テック企業が増え雇用も生まれたが、それ以上に低所得者用の住宅数が足りていないのだ。

イノベーションを起こすシリコンバレー流思考法

 イノベーションを生み出す思考法として、「デザイン・シンキング」(以下、デザイン思考)がシリコンバレーに定着している。デザイン思考には大まかに、共感、問題定義、創造、プロトタイプ、テストという5つのステップがある。まずは、何かを解決したいと思ったときにその対象者の思いに共鳴し、問題を定義する。次に解決策を考え創造する。ここで重要なのが、とにかくたくさんのアイデアを出すことと大胆な発想を次々に出すこと。その上でアイデアをいくつかに絞り、プロトタイプを作る。これを検証・テストしフィードバックをもらい改善点を直す。この繰り返しで製品化していくという流れだ。

最後に

 これまでシリコンバレーの変遷や起きた状況をまとめた。多くの有名IT企業や優秀な学生が集まる環境が整っている一方で、現在は移民労働者や住宅などの問題が起きており、かつての様相とは異なってきているようだ。今後のトランプ政権の動向や地域の格差問題などがどのように影響し変化していくかに注目が集まりそうだ。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

セミナー開催 フェルディナント・ヤマグチ流「部下育成」!

 本コラムの著者、フェルディナント・ヤマグチ氏が「日経ビジネス課長塾オンデマンド」主催のセミナーに登壇します。

 今回、課長塾オンデマンドではあえて、「企業人としてのヤマグチ氏として、登壇してください」とお願いしました。なぜならヤマグチ氏は、「コラムニストとの両立」という多忙な生活を、20年もの長きに渡り成立させてきた人だからです。本セミナーでは、そんなヤマグチ氏ならではの(仕事についての)方法論に迫ります。

 とはいえ講演時間は、わずか1時間。そこで今回は、「部下育成」にテーマを絞って話していただきます。部下やチームのマネジメントにお悩みの方は、ぜひご参加ください!






>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。