「デフレ脱却」と持続的な経済成長を掲げ、2012年に打ち出されたアベノミクス。その影響と、評価は実際のところどのようなものなのか、過去記事を参照しながら紹介していく。

アベノミクスとは

 アベノミクスは、安倍晋三総理大臣が、第2次安倍内閣において掲げた一連の経済政策の通称。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」そして「成長戦略」、これを「3本の矢」と呼び、物価が継続的に下がるデフレからの脱却と持続的な経済成長を目指したものだ。アベノミクスのこれまでの成果に関しては、様々な見解がある。以下、詳細を見ていこう。

リフレの是非で占うアベノミクスの行方

 この記事では、アベノミクスを理解するために、格好の書籍2冊を紹介している。まず1冊目は『日本人はなぜ貧乏になったか?』(村上尚己著、中経出版)だ。本書は、デフレ放置を正当化する通説に対して「真相」を対置する形で、インフレ目標導入による金融緩和を強力に推し進めるアベノミクスを理解していく構成となっている。アベノミクスの理論的な根拠を手っ取り早く理解したい向きには格好の1冊だ。

 2冊目が、『リフレはヤバい』(小幡績著、ディスカヴァー携書)だ。本書は、インフレ目標、マネーの大量供給、インフレ期待への働きかけ、日銀法改正などに代表される、アベノミクスが推し進めるリフレ政策を真正面から批判した本だ。なぜリフレはヤバいのか。「それはリフレが国債を暴落させるからである」。リフレによって引き起こされる円安は、投資家を日本国債売り、米国債買いへと動かす。

アベノミクスで銭湯窮地!?

 アベノミクスに対しては、様々な見解があるが、実際に経営上の打撃を受けている事業者もいる。1日1軒のペースで消え、将来的に半減が予想される銭湯は、そのひとつだ。銭湯の数は68年に全国で1万8325軒を数え、それ以降、減少の一途をたどっている。1つの原因として東日本大震災をきっかけに、耐震工事の必要性に迫られていることが挙げられる。改修費の負担に耐えられない銭湯が相次いでいる。そのうえ2013年にからは、厄介な問題が浮上している。「アベノミクス」の影響である。大胆な金融緩和によって円安にふれているため、燃料となる重油の価格が2012年末に比べて1割以上上昇。銭湯は1日当たりドラム缶1本分(200リットル)を使うので、月で6万円程度の負担増となる。零細経営が多い中、この負担は決して小さくない。

アベノミクスで↑上がる場所↓下がる場所

 一方、もちろんアベノミクスがもたらしたのは、悪影響だけではない。不動産市場では、アベノミクスで価格上昇の期待が高まっていた。本記事では、首都圏主要駅ごとのマンション価格上昇度からランクづけした。2%を大きく上回るAランクには広尾や品川、恵比寿、渋谷、中目黒など都心の超人気エリアが入った。それ以外でも三軒茶屋、学芸大学、吉祥寺など「住みたい街」として名前が挙がる駅がランクインしている。一方、JR常磐線の主要駅である柏(千葉県)、都心部へのアクセスは多少劣るが、緑豊かな郊外の優良住宅地として一定の人気を誇る場所に関しては、今回の分析では2%を下回るEランクに沈んだ。

アベノミクスに4つの誤算

 しかし、2014年には、4~6月期の経済成長率が大きく落ち込むなど、消費低迷を示す指標の発表が相次いでいた。「想定外」の事態が起きているのではないか。「アベノミクス」に厳しい見方を示すエコノミスト、河野龍太郎氏に話を聞いた。同氏は「アベノミクスの4つの誤算」を指摘する。1つ目は、実質ベースの円安がかなり進んだのに実質輸出が伸びていない点。2つ目は、企業業績が回復しているのに能力増強投資が増えていないこと。3つ目は、円安で実質購買力が損なわれている点。4つ目が、追加の財政政策によって民間の建設投資が抑制されていることだ。

アベノミクス「第2幕」 自民大勝後の隘路

 2014年12月、与党優勢で衆院選は最終盤に入り、“信任”を得たアベノミクスは「第2幕」に入ろうとしていた。しかし、アベノミクスの成果の源になっている金融・財政政策は難局を迎えていた。最大の課題は基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の名目GDP(国内総生産)比の赤字を2015年度に2010年度から半減し、2020年度に黒字化する目標の達成だ。これは、民主党政権時代の2010年から政府の国際公約としてきた。安倍晋三政権になってややトーンダウンしたものの、なお「政権として最大限努力する」(菅義偉・官房長官)目標と位置付けられていた。

アベノミクス、第2幕も道険し

 2015年、集団的自衛権の行使を限定的に可能とする安全保障関連法が成立。10年越しの悲願を達成した安倍晋三首相だが、支持率低下など痛手も大きかった。安倍首相が当面重視する課題ははっきりしていた。10月に行う内閣改造・自民党役員人事と「経済最重視」路線への回帰をセットで打ち出すことで政権の「リセット感」をアピールし、消耗した政権体力の回復を目指すこと。「アベノミクス第2ステージ」と銘打って取り組む経済政策では、10月に企業に設備投資を促すための政府と経済界からなる「官民対話」を設置し、地方の活性化や子育て・介護支援策とともに柱に据えた。政府・与党内では年明けの大型補正予算編成に向けた「タマ込め」も始まっていた。

合格点には遠いアベノミクス労働、税制改革から立て直せ

 2012年末に発足した第2次安倍晋三政権。2016年は衆院議員の任期で言えば最終年であり、政権の政策効果を評価していい時期に来ていた。では、アベノミクスはどうだったか。バークレイズ証券チーフ・エコノミストの森田京平氏は「結論から言えば、合格点には程遠いとみている」と語る。本記事では、当時のアベノミクスの状況を踏まえて、同氏による分析をお届けする。

参院選、アベノミクス評価は二分

 2016年は、森田氏のようにアベノミクスに対して批判的な見解が見られる一方で、肯定的なものも見られた。安倍政権の経済政策に対する通信簿は結果が大きく分かれていたのだ。参院選に関する世論調査で浮かんだのは、デフレ脱却への期待感と、賃金上昇につながらないもどかしさだった。実際、アベノミクスを「評価する」「どちらかと言えば評価する」とした回答は全体のほぼ半数にとどまっていた。7月10日に投開票を控えていた参議院選挙に合わせ、日経ビジネスオンライン(NBO)が実施した世論調査では、アベノミクスの評価が二分する結果になった。

アベノミクスの是非を再検証する

 有識者から、様々な見解が飛び交う中、大切なのは正しい知識を身につけることだ。本記事では、反対派、擁護派に関係なく、当時のアベノミクスについて分析した書籍をいくつか紹介している。まず1冊目が、『非伝統的金融政策』(宮尾龍蔵著、有斐閣)だ。非伝統的金融政策(量的緩和や信用緩和など)の効果やインフレ目標2%の妥当性を平易に解説し、懸念すべき副作用やマイナス金利の影響を理論と実証の両面から検証している。

 2冊目は『アベノミクスは進化する』(原田泰ほか編著、中央経済社)だ。マクロデータを駆使しながら、ハイパーインフレやバブル、財政赤字、日銀の債務超過、マイナス金利政策などのリスクを分析。そのうえで編著者は「金融緩和に効果はないし、突如ハイパーインフレになる恐れがあるからやらないほうがいい(大きな岩は簡単に動かないが、転がりだしたら止まらないから動かさないほうがよい)」という金融岩石理論を徹底的に批判する。3冊目が、『ヘリコプターマネー』(井上智洋著、日本経済新聞出版社)。著者は、政府や中央銀行が空からヘリコプターでお金を降らせるかのように貨幣を市中に供給することで景気が良くなるメカニズムを解き明かし、長期的なデフレ不況に対しても有効だと主張する。

安倍首相3選へ、アベノミクスの評価分かれる

 2018年の自民党総裁選では、アベノミクスへの評価も焦点となっていた。当時、安倍首相が先導してきたアベノミクスには、国民からの一定の支持があった。安倍氏自身も、アベノミクスの成果を強くアピールしていた。2018年8月12日に山口県下関市で安倍首相が行った講演では、こんな発言をしている。「5年前に日本を覆っていた重く暗い空気は、アベノミクスによって完全に一掃することができた。20年近く続いたデフレからの完全脱却に向け、今日本は確実に前進している」。確かに、デフレにあえいでいた5年前と比べれば、空気はだいぶ明るくなったのは事実だ。だが、「着実に前進している」のかどうかについては、異論も多く見られた。実際、野党だけでなく、金融界の専門家の間からも「アベノミクスは失敗した」という声が上がっていた。

最後に

 ここまで、アベノミクスについて、2018年ごろまでの状況を振り返ってきた。アベノミクスは、「デフレ脱却」を掲げ、様々な施策を打ち出してきたが、いまだに賛否が分かれている状況だ。経済の先行きに関しても不安の声が聞かれている。アベノミクスが成功に終わるか失敗に終わるか今後も注視していく必要がありそうだ。

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