インド生まれのベンチャー企業「OYO(オヨ)」。2013年の設立以来、OYOブランドのホテル運営を中心にホテル内の飲食事業やコワーキング事業などを世界中で手がけている。今回は2019年の日本進出をめぐるトピックをはじめ、同社の事業戦略を過去記事から振り返る。

インド最大のホテル企業「OYO」とは

 2013年、インドの起業家リテシュ・アガルワル(Ritesh Agarwal)氏によって設立されたOYO。わずか19歳の起業家(当時)が始めたホテル事業は、それから6年のあいだにインド最大のホテル企業へと成長した。

 15年にソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめとする複数の投資ファンドやベンチャーキャピタルから1億ドル以上を受けたのを皮切りに、16年には9000万ドル、17年には2億5000万ドルもの資金調達に成功。インド国内だけでなく、東南アジアや中国、サウジアラビア、英国、北米にも進出した。19年にはヤフーとの合弁会社を設立し、日本でも事業を開始している(現在は提携解消)。

 OYOの事業内容は「不動産運用」だ。既存ホテルを改装して「無料Wi-Fi、朝食、エアコン、テレビ、お風呂、トイレの清潔さ」など一定の基準を満たし、そこにOYOのブランドを与える。ホテルオーナーにとっては「ブランドの力」が手に入り、利用者にとっては「質の高さが担保される」というのがメリットだという。ホテルそのものの運営以外にも、ホテル内の飲食事業やコワーキング事業にまで手を広げる同社。インド国内だけでなく、世界でも業界トップの座を狙っている。

賃貸サービスで日本市場に参入

 日本への事業進出は、19年3月28日にヤフーとの合弁会社を設立し、「OYO LIFE」という賃貸サービスを展開することから始まった。OYO LIFEのコンセプトは「ホテルを予約するように賃貸を借りる」というもので、仲介手数料や敷金、礼金などの初期費用は不要、アプリをタップするだけで部屋を借りることができる。利用者には、家事代行やカーシェア、コワーキングスペース利用、家具家電レンタルなどのシェアリングサービスが提供されるのも魅力だ。

 物件オーナーには入居の有無にかかわらずOYOから賃料が支払われる。このためOYOが十分な利益を上げるには、物件の質や使いやすさ、シェアリングサービスなどの魅力で高い稼働率を維持する必要がある。

 サービス開始時点ですでに1万3205人が事前登録し、都内に確保した1008室のうち470室が入居契約済みになったという同サービス。日本ではまだまだ黒字化が難しいとされるシェアリングサービスで、どれだけ成長できるか注目が集まる。

なぜ日本で“賃貸シェア”なのか

 インドを中心にホテル事業を展開するOYOだが、日本で行うのは「賃貸サービス」。OYOとヤフーによる合弁会社(現在は合弁解消)のCEO、勝瀬博則氏(当時)によると「ビジネスモデルとしては既存のサービスアパートメントや月決め賃貸マンションと変わらない」という。

 OYO LIFEが特徴的なのは、その売り方だ。入居時の初期費用がかからず、スマートフォンのアプリを数回タップするだけで部屋が借りられる上、カーシェアなどのシェアリングサービスも提供されるなど利用者にとっての利便性は高い。月額の賃料は相場より高めだが、「毎年のように次々と部屋を替える場合」は従来の賃貸より割安だ。OYOがこのような事業を始める背景には「これからは、賃貸を活用して自由に引っ越しを繰り返す生活を好む人が増える」という分析があるという。

 家賃保証があるため物件オーナーにもメリットが大きいが、そのぶんOYOとしては、高い入居率を維持する必要がある。慣れない運用形態に加えホテル業界からの警戒もある中、事業の行く末は不透明だ。

ホテル運営事業は、1年半で世界トップ狙う

 OYOは本業の「ホテル運営」でもさらなる事業拡大を目指している。具体的には1年半以内に46万室(19年1月時点)から100万室まで運営規模を拡大、世界トップの座を狙うという。

インドネシアでホテル事業拡大

 インドネシアで毎月70のホテル(19年1月時点)を開業しているOYO。19年には1億ドルを投じて、さらなる事業拡大を図るとしていた。

米国に進出、北米で事業拡大へ

 19年2月、米国テキサス州で試験的にホテル展開を開始したOYO。北米での事業拡大を目指す。

インドのホテル大手OYO、サウジアラビア進出

 19年2月には、日本とサウジアラビアに進出。急速な事業展開が続いている。

中国で同業を買収、M&Aも活用

 19年3月、OYOが中国のホテル企業Qianyuを買収。すでに中国国内で36万室を展開するOYOだが、M&Aを通しさらなる事業拡大を目指す。

ベトナム主要都市で90以上のホテルを展開

 19年7月、OYOはベトナムに進出した。すでにハノイ、ホーチミン、ダナンなどの主要都市で90以上のホテルを展開している。同社はベトナムで5000万ドルを超える投資を計画しており、さらなる事業拡大を目指すという。

ラスベガスで大型カジノホテルを買収

 19年8月、OYOはラスベガスの大型カジノホテル「フーターズ・カジノ・ホテル」を買収した。買収額は1億3500万ドル。19年末までには米国内で150のホテルを傘下に収める見通しだとした。

フードベンチャー買収へ。飲食事業の拡充目指す

 OYOが力を入れているのはホテル運営ばかりではない。19年2月にはインドのフードベンチャー「フレッシュメニュー」の買収を発表。ホテルでの飲食事業の拡充を図るとしている。

OYO、インドではコワーキング事業にも乗り出す

 19年7月、インド国内ではコワーキング事業にも乗り出した。ニューデリーでコワーキングスペースを展開するInnov8を買収し、同事業で先行する米ウィーワークに挑む。

最後に

 急速な成長で世界中から注目を集めるOYO。一方で日本への事業参入をめぐっては、ヤフーとの提携解消や中小ホテルとの契約トラブルなど、当初の思惑通りには進んでいない様子だ。

 良くも悪くも日本のホテル業界に衝撃を与えたOYOが、今後どのように事業展開を進めていくか要注目だ。

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