米国の主要なIT企業として、グローバルに知られているグーグル。その事業は、検索エンジンはもちろん、オンライン広告やソフトウエア、ハードウエアなど様々な領域にわたる。グーグルがここまで多分野にわたって躍進できた理由とは何か。そして現在はどのような未来を見据えて方針を決め、どのような事業に着手しているのか。これまでの記事をまとめた。

グーグルの遠隔

 1988年に創業し、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を使命に掲げ、検索エンジンや広告のビジネスモデルで成功を収めてきたグーグル。その理念のもとビッグデータを集め、強みを生かした事業を行うようになった。提携やM&Aによる組織の拡大と成長を進めている。市場における支配力の強さゆえに批判も集まるが、現在も様々な商品・サービスを開発し、その重要性はより増しているようだ。

グーグル、10年の計

 グーグルは創業から15年(記事掲載当時)。この先の10年はどこに向かうのだろうか。グーグルは次のビジネス拡大のカギは、新興国の「まだネットにつながっていない人たち」と新たなデバイス開発にあると考えている。アジアやアフリカでは現地の携帯電話会社と手を組み、グーグルやメールなどの一部サービスが無料利用できるようにし始めた。また、今後はスマホの次のデバイス開発にも注力する。例えば「Project Glass(プロジェクトグラス)」では、眼鏡から見える世界にデジタルデータをかぶせて表示でき、音声操作が可能だ。

グーグル、見えてきた野望

 2013年末、グーグルが東京大学発のベンチャー「シャフト」を含むロボットベンチャー8社を買収した。グーグルはその目的は発表していないが、ヒントはグーグルのミッションステートメント「世界中の情報を整理する」にある。同社はビッグデータを蓄積するが、その元となる情報は人間が収集するものである故に「穴」がある。ロボットに情報収集させることで情報の質・量ともに高めることができる。グーグルの狙いは、ロボットをネットやクラウドを通じて連携させ、独自のスマロボ生態系を生み出し、人間だけでは集めることが不可能な情報を得ることであるようだ。

グーグル、碁で「人間超え」の意味

 グーグルのAI開発が順調に進んでいる。同社傘下企業「ディープマインド」が開発した囲碁AI「AlphaGo」が人間のプロ棋士を破ったのだ。既にトッププロをしのぐとされる将棋AIとは異なり、囲碁AIはプロとは歴然とした差があると考えられていた。その理由として、囲碁プレーヤーは直感的に複数の手を読み、感覚的に判断していることがある。これまでの囲碁AIでは困難だった、人間が「感覚」としか表現できなかったものをディープラーニングで克服した点が革新的である。囲碁における「人間超え」の先には、AIの現実世界への応用がある。その汎用性は気候や疫病分析にも応用できると考えられている。

グーグルの成功を分離原理で明らかにする

 グーグルの成功要因は何か。一般的には、Webページをランク付けするPageRankという仕組みを開発したこと、PageRankを膨大なWebページ数同士で比べられるようにしたこと、検索結果に広告を組み合わせたことの3点が挙げられる。これらの要因を発明原理に当てはめ考えてみる。広告モデルに関しては“サービス利用者と支払いとを〈分離〉する”ノウハウとして捉えられる。またWebページに関しては、Webという“タダで大量にあるもの”を原料に、それから価値を〈分離〉する方法を開発したため成功したと考えられる。このように既存ビジネスに対し、発明原理を介し分析することで、時を超えて応用し、役立つポイントが分かる。

もうからなくてもアマゾンに対抗するグーグル

 グーグルは、デリバリーサービス「グーグルエクスプレス」を拡大している。これは米アマゾン・ドット・コムに対抗して開始したものだ。グーグルの検索エンジンを生かし、すぐさま画面上で関連サイトに誘導できるメリットは大きい。また、一部の生鮮食品は配送・販売しないという選択と集中を行うことで、様々な地域で拡大展開しやすくしている。グーグルはまだこのエクスプレスを拡充するための具体的な施策を語るまでには至っていない。ただ、他の物流企業と連携することでスピード配送できるようにしており、スムーズな配送に問題意識を持っているようだ。

AIでも世界制覇狙うグーグル、日本で攻勢

 検索サービスで世界を制覇したグーグル。次なる野望は、グーグル製のAI技術を世界に普及させることだ。既に様々な場面で活躍しているのが、同社の機械学習システム「TensorFlow(テンサーフロー)」だ。グーグルはこのテンサーフローを世界中の企業や組織が使えるようにオープンソース化し、世界を驚かせた。その狙いは、テンサーフローを誰もが使えるようにし、エンジニアが新しい製品やサービスを早く作れるようにすること。そしてAIの普及を飛躍的に高めることだ。日本も例外ではなく、商品を選定するシステムに組み込んだ事例が既に出てきた。様々な事例でフィードバックを得て進化したテンサーフローは、グーグルのあらゆる製品の品質向上にも活用されている。

グーグルやフェイスブックが偽ニュース対策

 グーグルと米フェイスブックが偽ニュースへの対処に乗り出す。両者ともに偽ニュースサイトがデジタル広告で金もうけできないようにする方針を発表した。グーグルは偽ニュースを掲載するサイトにグーグルのオンライン広告サービスを使えなくするという。米国では、成人の44%がフェイスブックからニュースを得ている。これらのニュースはユーザーがシェアしたりトレンディングトピックスというコーナーにランクインしたりすることでユーザーの目に付く仕組みだ。アルゴリズムが記事を判断するのではなく、偽ニュースサイトの収入源を断つことでその存在意義自体を骨抜きにすることが狙いだ。

進化を「超越」する グーグルの野望

 ついにコンピューターが新たな次元へ突入した。カナダのベンチャー企業、Dウエーブ・システムズの量子コンピューターが日本に初上陸する。これまでは北米に設置した機械をクラウド利用していたが、東京工業大学と東北大学が共同研究センターを作ることで日本企業がフル活用できるようになったという。量子コンピューターにより、スパコンが数百年かかっても解けない問題が一瞬で解けるようになる。このインパクトはIT業界だけでなく、あらゆる産業に及ぶ。既に様々な企業、そして各国の政府が量子コンピューター開発に取り組んでいる。

米司法省、グーグルに対する反トラスト法違反の調査を準備

 米司法省は反トラスト法違反の疑いで、米グーグルを調査する準備を進めている(2019年6月時点)。2011年から約2年の間、米連邦取引委員会(FTC)がグーグルが競争を阻害していると調査を行ったが、同社が是正措置を取ることで和解した。今回はFTCと司法省が米大手テクノロジー企業に対する互いの監視領域について協議し、司法省がグーグルを担当し各事業について精査する準備を進めているようである。

司法省が反トラスト法調査を宣言、グーグルらに再び試練

 司法省が、巨大インターネット企業がいかに市場の権限を独占して競争を回避しているか、反トラスト法違反の調査を始めると報じられた。司法省はリリースの中で具体的な社名は明言していないものの、「検索エンジン、ソーシャルメディア、小売りサービスなど」と記載しており、グーグル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムを指しているのは明らかだ。

最後に

 現在は検索エンジンだけではなく様々な事業に取り組むグーグル。他企業と提携しイノベーションを起こしていく姿勢こそ成功した要因なのかもしれない。「世界中の情報を整理する」ことを使命に、ロボットやAI技術を駆使したビッグデータ収集や海外進出が進んでいきそうである。

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