法令や社会規範、社内ルールなどの順守を意味する「コンプライアンス」。企業によるコンプライアンス違反は近年ますます注目されるようになっており、中には事業の軌道修正や倒産に追い込まれるケースも発生している。今回は過去記事を通して、近年のコンプライアンス関連の事例を振り返っていく。

至る所に存在する「コンプライアンス」違反問題

 コンプライアンスとは、法令や社会規範に従って公正・公平に業務を遂行することをいう。もともと英語のcomplianceには「法令順守」という意味があるが、ビジネス分野でのコンプライアンスは法令だけにとどまらず、社会や業界のルール、社内規則やマニュアルなどさまざまな「決まり事」を守ることを意味している。

 コンプライアンス(およびコンプライアンスに相当する概念)は昔から存在するが、「コンプライアンス違反」が個人や企業の信用を大きく揺るがすほど問題視されるようになったのは比較的最近のことだ。セクハラやパワハラ、さらにはマーケティングにおける言葉の選択に至るまで、現代においてコンプライアンス違反が問題になる場面は至る所に存在している。

 今回はコンプライアンス違反やコンプライアンスへの抵触が話題となった事例、コンプライアンス違反への対策などについて、最近の記事の中から紹介していく。

商品名からサービスの中身まで“昭和の常識”が招く炎上

 ファミリーマートのプライベートブランド「お母さん食堂」が、そのネーミングをめぐりネットで議論を巻き起こした。発端となったのは「このままでは『お母さんが食事を作るのが当たり前』という意識を社会に植え付けてしまう」と感じた3人のガールスカウトの高校生による呼びかけだ。3人は「商品名が社会に与える影響を企業にも知ってもらい、ジェンダー問題をなくしていきたい」と、ファミマに対しブランド名の変更を求める署名活動を開始した。

就活セクハラは今や、おじさん面接官の問題ではない

 今も昔も深刻なコンプライアンス違反とされるものの一つが「セクハラ」だ。現代においても就活生をターゲットにしたセクハラは4人に1人が経験しているという。

 かつてセクハラは昭和世代の男性社員が加害者となるイメージだったが、最近のセクハラは多少事情が異なる。セクハラ加害者となっているのが20~30歳代の若手社員であるということだ。研修などによりコンプライアンス意識が徹底されやすい中高年世代と違い、研修を受ける機会の少ない若手は「選ばれる側の学生を自分の意のままにできるという勘違いや公私混同」を起こしてしまうケースが少なくないからだ。

予算消化の圧力が生み出す、無用な業者との癒着

 「架空発注」も立派なコンプライアンス違反だ。単なる社内ルールや業界ルール違反になるだけでなく、「所得隠し」として法令(税法)違反に問われる可能性も高い。

 架空発注が行われる原因にはさまざまな理由が考えられるが、厳格すぎる予算管理が問題の引き金になることが多いという。単年度の予算管理を厳格に行い、個別の事情をあまり斟酌(しんしゃく)せずに、予算超過または予算未達にペナルティーを与えるような会社だと、社員が架空発注のような不適切な行為を起こしやすいのだ。

企業文化の違いが引き起こす「これってパワハラ?」

 パワハラも、企業においてしばしば問題になるコンプライアンス違反だ。パワハラの具体的な形態としては、「身体的な攻撃」や「精神的な攻撃」をはじめ、「人間関係からの切り離し」「過大または過小な要求」「思想など個の侵害」などが挙げられる。会社の管理職や社員は、まずこうしたパワハラの形態をよく知る必要がある。

 人は指摘されるまで「相手に不快感を与えているということになかなか気づかない」ケースも少なくない。こうしたパワハラを防ぐには、落ち着いて話せる「環境づくり」、実際の行動を記録しておき、その記録を基に話す「記録に基づき」などの指導のためのルールが有効とされている。

転職時の「おみやげ問題」はなぜ起こるのか

 企業にとって深刻なコンプライアンス違反の一つに「おみやげ問題」がある。おみやげ問題とは転職した社員が、前の会社の秘密の知的資産を「おみやげ」として渡す行為のことだ。

 こうした行為は企業間の信頼関係を損なうだけでなく、情報を漏洩した社員が秘密保持契約を締結していた場合、法律違反(不正競争防止法違反)に問われる重大な行為となる。問題は関係者の「無知」が原因になっていることにある。採用の決定に関わるラインの管理職の中には、自分の担当分野には詳しくても、法令や人事関連の規範について無知な人が残念ながら存在するのだ。

接待で身を滅ぼさないための傾向と対策

 官・民の関係でしばしば問題となるコンプライアンス違反は「接待」だ。官僚が過剰な接待を受けて懲戒処分を受けるケースは今も昔もなくならない。もちろん民間同士の接待でも、状況次第では背任罪に問われる可能性がある。

 どのような組織に所属していても、接待による問題の当事者とならないためには「李下(りか)に冠を正さず」の姿勢を続けることが重要だ。“特定の企業とベタベタな人”と認識されることは、出世や仕事上の大きな障害になるのだ。

最後に

 ビジネスの世界ではさまざまなコンプライアンス違反が起こりがちだ。その中にはセクハラや過剰な接待といった明確な違反行為もあれば、当事者が無意識で行うパワハラや、無知や不注意が原因で引き起こすコンプライアンス違反などがある。自分だけは大丈夫と考えるのではなく、他社の事例を通して自社や自らの襟を正していきたい。

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