世界トップクラスの半導体メーカー、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company:台湾積体電路製造)。世界シェアの過半を占め、半導体の価格決定権を持つといわれるほど有力な企業だ。一方、同社が本社を置く台湾は中国との緊張関係にあり、台湾有事が同社や世界に与える影響も危惧されている。今回はTSMCを中心とした話題を過去記事から紹介していく。

半導体の価格決定権を握る「TSMC」

 TSMCは世界最大級の半導体メーカーである。1987年に台湾で創業。台湾はもちろん米国や中国にも製造拠点を持ち、2022年第3四半期の段階で世界シェアの56.1%を占めている。時価総額はトヨタの倍以上となる約62兆円だ(23年2月時点)。

 TSMCは圧倒的な供給力と高水準のチップ製造技術に強みがあり、世界の主要メーカーの多くが同社の半導体に依存している。このためTSMCは実質的に半導体の価格決定権を握っているとされる。

 一方、台湾には中台関係という地政学的リスクがあることから、台湾有事がTSMCに与える影響、そして世界に与える影響を危惧する声も大きい。

 この記事ではTSMCの動向や台湾有事をめぐる話題について、過去記事から振り返っていく。

台湾の“化け物”TSMC 知られざる強者の実力

 トヨタの2倍近い時価総額を誇り、実質的な半導体の価格決定権を持つことから「化け物のような会社」と評されるTSMC。半導体の受託生産(ファウンドリー)では60%(記事公開時)のシェアを占め、他社の追随を許さない。同社の強みは技術力の高さに加え、世界中に及ぶ情報収集能力と徹底した情報管理能力だ。一方で、地政学的リスクを考慮し米中両国とのバランスを取るしたたかさも持ち合わせている。

TSMCが米国に新工場、「脱台湾」超えた長期戦略

 TSMCは米国や日本での工場建設に積極的だ。これを「脱台湾」の動きと見る関係者もいるが、同社は「世界の先端半導体の4分の3以上を製造できる拠点」を台湾に保有し続けており、必ずしも台湾から主要拠点を移そうとしているわけではない。むしろビジネス上の利益を最優先に考え、台湾有事を含むあらゆるリスクに対して長期的に、柔軟に取り組もうとする意図が見られるという。

九州シリコンアイランドで占う未来 TSMC特需に沸く熊本 経済効果は4兆円

 TSMCが工場を建設中の熊本県では「TSMC特需」と呼ばれる経済効果が生まれている。岸田文雄政権は同社工場を「経済安全保障の要」として重視し、最大4760億円の補助金投入を表明。TSMCはもちろん地元の半導体関連企業も積極的な投資や人材確保に動き、「求人倍率3.33倍」「新卒初任給28万円」などが話題を集めている。

熊本の賃金相場を動かしたTSMC

 熊本県に建設中のTSMC新工場は、新卒採用で初任給28万円(23年春の大卒初任給)、中途採用は総務・人事などの事務系で年収800万~1200万円(語学力や経験による)とされ、県内の水準を大きく上回る。一方、こうした動きは県内の賃金相場にも影響を与えているという。特にTSMCに社員を引き抜かれた半導体関連業界では、従来よりも好条件を提示して人材確保に努める企業が増えている。

半導体開発で陣取り合戦 復権狙う米IBM、TSMC独走への焦り

 TSMCに対し、かつて半導体開発でトップを走っていた米IBMも新たな動きを見せる。次世代半導体の受託生産を目指す日本企業、Rapidus(ラピダス、東京・千代田)や韓国のサムスン電子、米インテルなどと手を組むことで、復権の機会をうかがう。

台湾有事は日本企業の有事

 とはいえTSMCにとって大きなリスクとなるのが「台湾有事」だ。そして台湾有事は、台湾や中国と接する日本に与える影響も大きい。台湾からの半導体供給停止はもちろん、中国国内で日本人社員がさらされる脅威、中国から日本への輸出停止や制裁などによって受けるダメージはウクライナ危機の比ではない。

最後に

 TSMCの勢いは今なお止まらない。日本でも熊本県を中心に大きな経済効果を生み出し、その動きは米国や日本国内の半導体関連会社にも影響を与えている。TSMCの今後の動向はもちろん、その影響力に注目する中国の動きにも、引き続き関心を持っていきたい。

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