企業本来の目的を遂行するため、既存の制度や業務プロセスを抜本的に見直す「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」。社内組織をゼロベースで見直すことにもつながる大規模な取り組みで、特に大手企業などで検討・実施されるケースが増えている。今回は過去の記事から、BPRに関連する話題を紹介していく。

社内制度や業務プロセスを抜本的に見直す「BPR」

 BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とは、企業本来の目的を遂行するために社内制度や業務プロセスなどを抜本的に見直して再構築を図ることだ。

 多くの企業では時間の経過とともに、社内組織の分断や専門化が進んでいく。その中で、業務全体の効率化よりも組織ごとの責任分担が重視され、結果として本来の目的が果たされない(果たされにくい)ことも少なくない。

 こうした状況を打破するために生み出されたのがBPRだ。一般的な業務改善が既存業務の効率化を目指すのに対し、BPRはリエンジニアリング、つまり既存の管理方法や業務プロセスを抜本的に見直し、変更することが基本となる。

 BPRの手順は大きく分けて「他社で実績のある統合基幹業務システム(ERP)パッケージを導入する方法」と「自社の業務プロセスを分析・可視化し、再構築を行う方法」の2つがある。いずれの方法もトップダウンによるプロジェクトの立ち上げ、ゼロベース思考やデジタルトランスフォーメーション(DX)などの導入、そして相応のコストが必要となる。

 この記事ではBPRに取り組む経営者のインタビューや国内企業の事例などを、過去の記事から振り返っていく。

かんぽ生命、人や態勢・体制などすべて変えたい

 かんぽ生命保険は被保険者数は約2400万人、保有契約(個人保険)が約3200万件という膨大な契約を管理する基幹系システムを作り直している(2016年12月当時)。その理由について取締役兼代表執行役副社長(当時)の井戸潔氏は「カルチャーを変えていくきっかけとする。その思いが非常に強い」と語る。

 井戸氏の言うカルチャーには、社員や業務そのものをはじめ、システム開発の進め方や態勢、パートナー会社との付き合い方まで含まれているという。大規模なシステム開発をきっかけに、同社の商品や事務に関するBPRを進めていくことが同氏の狙いだ。

ミドルマネジメントの能力開発が問われる

 サントリーホールディングスの執行役員・人事部長(当時)の神田秀樹氏によると、同社では経営戦略として働き方改革と健康経営に取り組んできた。さらに進めて17年を「働き方ナカミ改革元年」と位置付け、柱となる3つの活動を推進している。その筆頭に挙げられるのが「IT活用を軸としたBPRのさらなる推進」だ。

 もともとテレワークに力を入れてきたサントリーだが、新たな取り組みではモバイルPCなどを活用して、さらに働き方改革と健康経営を進めていくという。

ブラック霞が関退治に「デジタル政府庁」発足?

 霞が関の政府省庁では、ほとんどの省庁で「かなりの超過勤務が常態化している」という。これまでも「人員の適切な配置」といった業務改革を進めてきたものの、課題の解決には至っていない。

 そこで注目されているのがBPRだ。自民党行革本部は政府に対し、内閣官房のトップに民間人を置き、強力なトップダウンで業務の抜本的見直しを進める「推進チーム」の設置を求めた。推進チームを司令塔として業務の根本的見直しに関する全省庁共通のルールを策定。このルールに基づいて、最新システムやBPRなどの手法を導入して「霞が関の生産性革命」の実現に踏み出すというのだ。

安川電機・小笠原浩社長「DX、他人任せにしない」

 安川電機では、小笠原浩社長自ら陣頭指揮を執ってDXを推進している。DXを進めるには、先に業務の進め方をそろえなければならない。こういった改革は、社長の仕事だという考えだ。人事権がない担当者が取り組むと、おかしな業務をそのままにしてIT化しようとして失敗すると言う。すでに「約70社ある連結決算の対象の間で、500近くにも上る勘定科目の定義やコードを統一」するなど一定の成果を挙げている。今後もさらに「業務の標準化」も進めていくという。

 DXでは具体的な目標を2段階で定めている。まずは「1週間で決算データをまとめられるようにする」、次の段階では「転勤しても着任したその日から仕事ができるようにする」ことだ。

カインズ高家社長「進めているのはDXではなくCX、全社改革だ」

 カインズでは単なるDXではなくCX(コーポレートトランスフォーメーション:全社改革)を推進している。19年に就任した高家正行社長はこの改革を「第3の創業」と位置付け、過去30年の成功体験にとらわれずに「組織と人」の大改革を行っていくという。

 改革では顧客価値を軸にして事業単位を3つに分け、それぞれの顧客がどういう人たちで、その人たちが何に困っているか、何をすれば喜んでもらえるのかを徹底的に考える体制にした。

最後に

 かんぽ生命、サントリーなど日本屈指の大企業が取り組みを進め、霞が関の官公庁も興味を示しているBPR。既存の組織や業務プロセスを抜本的に見直すには手間もコストも必要だが、今日のグローバルな競争を企業・組織が生き抜くためには欠かせない取り組みの1つといえる。BPRの取り組みに、引き続き注目していきたい。

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2022.5.26更新

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