「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」はソフトウエアやプログラム、ウェブサービス同士をつなぐインターフェースのことだ。ソフトウエアの機能を共有できる。それを利用することで生まれる新たな経済圏が「APIエコノミー」だ。APIエコノミーは日本でも注目を集めており、便利なサービスが次々に生み出されている。今回は過去の記事の中から、APIエコノミーの注目事例を紹介する。

ビジネスの可能性を広げる「APIエコノミー」

 「APIエコノミー」とは、APIの活用によって生み出される経済圏だ。前提となる「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」とは、インターネット上でソフトウエアの機能を共有するための仕組みのこと。例えば米グーグルが公開しているGoogleマップのAPIを利用すれば、企業や個人のウェブサイトでGoogleマップの機能を使えるようになる。このようにAPIの活用でビジネスの機会が拡大した環境を、APIエコノミーと呼んでいる。

 APIエコノミーの概念が生まれたのは1990年代だが、言葉として定着してきたのは2013年ごろのこと。インターネット技術の発達とともに生み出された数多くのAPIは、すでに多くの企業によって利用されている。

 日本でAPIエコノミーが注目を集めている理由の一つは、APIによるDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進だ。IT人材の不足や既存システムの老朽化に悩む日本では、他国と比較して行政や企業のデジタル化が遅れている。APIエコノミーは、その課題を解決するための一手でもある。

 APIの活用は、オリジナルのソフトウエアを開発するのに比べて、時間もコストもかからない。便利なサービスをスピーディーに、かつ安価にユーザーに提供できれば、多くの企業にとってメリットといえる。

 この記事では、APIエコノミーで近年注目を集めている事例を中心に過去の記事を紹介していく。

グーグルマップの地図機能を他社も使えるワケ

 APIの代表格といわれるほど、多くの企業・サービスが利用しているのはグーグルが公開する「Google Map API」だ。一方、日本企業の中にも自社のAPIを公開する企業が数多く存在している。

 老舗倉庫業者の寺田倉庫(東京・品川)もそうした企業の一つだ。同社では自社の倉庫向けに開発した倉庫・物流管理ソフト「minikura」を活用できるAPIを公開している。出庫・配送や着荷・入庫といった基本的な保管・物流の仕組みから、商品撮影やクリーニングなど、様々な指示を外部事業者がAPIを通して直接出せるようになった。

「脱物理鍵」が開く新市場 DXを支えるスマートロック

 スタートアップ企業のジゴワッツ(東京・中央)が開発した「バーチャルキー」は、スマホのアプリで自動車の鍵を操作するスマートロックシステムだ。同社のバーチャルキーはAPIを活用しており、GoogleカレンダーやSNS(交流サイト)と連携してバーチャルキーを生成できる。これによって鍵の紛失リスクや車両管理のための人員コストを削減できるという。

 中古車買い取りチェーン「ガリバー」を運営するのIDOMは、ローンサービス「ガリバースマートローン」にこのバーチャルキーを利用している。ローンの返済が遅れると、バーチャルキーによる鍵の開閉時に入金を催促するメッセージを表示し、何度も返済が遅れると鍵を無効にして車を回収する仕組みだ。

キャッシュレス決済の新潮流「BNPL」 クレカ不要で後払い

 APIの利用が進んでいる分野の一つが金融サービスだ。例えばGMOペイメントサービス(東京・渋谷)が提供する後払い決済サービスの「GMO後払い」では、クラウド倉庫管理システムや通販サイトのカートシステム、受注管理システムと連携可能なAPIを公開しており、BtoB分野を中心としたAPIエコノミーを構築している。

ふくおかFG、スマホから地銀を再定義

 福岡銀行などを傘下に置くふくおかフィナンシャルグループ(FG)は、企業内ベンチャーiBankマーケティング(福岡市)を通して「口座連動による収支管理や目的別預金、余剰資金の資産運用、カードローンのサービスなど」の機能をAPIとして公開している。iBankマーケティングはスマホを使った金融サービスプラットフォームを運営する企業として2016年に設立された。このAPIはふくおかFG傘下の3行だけでなく沖縄銀行、広島銀行をはじめとする複数の地銀に利用されており、デジタル領域での地銀の連携に貢献している。

地銀の反転攻勢 変革進む勘定系システム

 APIを活用した地銀の連携は首都圏でも始まっている。千葉銀行を中心に発足した「TSUBASAアライアンス」では、日本IBMの支援を受けて「TSUBASA FinTech共通基盤」と呼ばれるAPIを公開している。参加銀行はこのAPIを利用することで、事務やシステムの共同化を通してコスト削減が可能になるという。

スーパーシティ“動く”全国マップ 「丸ごと未来都市」の中身とは?

 国が後押しする「スーパーシティ」構想でもAPIが活用されている。スーパーシティとはAI(人工知能)やビッグデータを活用した未来都市のこと。日常生活と関連した「行政」「移動」「物流」「支払い」「医療・介護」「教育」「エネルギー・水」「環境・ゴミ」「防災」「防犯・安全」の10領域のうち、5つ以上をカバーした、生活全般にまたがる取り組みが必要となる。

 スーパーシティでは、横断的なデータを収集・活用する「データ連携基盤」の構築も求められる。都市OSといわれるもので、オープンAPIによって、サービス間の相互連携を可能にするものだ。例えば、デジタル化した住民IDを使って行政手続きをウェブ上で行うだけではなく、医療分野との連携で個々の健康状態に応じた医療サービスを提供する。

最後に

 APIは複数のソフトウエアを結びつけるハブだ。すでにGoogleマップやGoogleカレンダーのように汎用性が高いものはもちろん、業務アプリケーションや決済サービスなどの分野でも様々なAPエコノミーが構築されている。スマホアプリからスーパーシティに至るまで、APIエコノミーの発展が私たちの仕事や生活をどのように便利にしていくか、引き続き注目していきたい。

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