プロダクトアウトとは「企業側の都合で商品を開発する」こと。プロダクトアウトは「顧客の欲しいものをつくる」マーケットインとの比較で批判されることもあるが、プロダクトアウトによって生み出された「定番のヒット商品」や「革新的な製品」は数多くある。この記事ではプロダクトアウトの手法を採用してきた企業やその事例について、過去記事から振り返る。

革新的な製品を生み出してきた「プロダクトアウト」

 プロダクトアウトとは「企業側の都合で商品を開発する」こと。これと対比されるのが「顧客の欲しいものをつくる」マーケットインの手法で、顧客重視の視点からマーケットインが推奨されることも多い。

 プロダクトアウトは企業の自己満足であるとか、時代遅れだとかと批判されることも少なくない。しかし米アップルのiPhoneやソニー(現ソニーグループ)のウォークマンといった革新的な製品はプロダクトアウトによって生まれた。プロダクトアウトは「顧客を軽視している」わけではなく、「顧客がまだ気づいていないニーズに応えている」という見方もある。

 この記事では、これまでにプロダクトアウトによって成功を収めた事例やプロダクトアウトを採用している企業事例を紹介していく。

大衆迎合に走るアップル、新型iPhoneに透ける焦り

 プロダクトアウトによって生まれた製品の代表格が、アップルのiPhoneだ。アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は、「消費者の意見を聞いても、イノベーティブな製品は生まれない」と語っていたという。

 しかし現在のアップルは既存のユーザーが離れることを懸念し、マーケットインに転換しつつある。

カップヌードル、ポカリスエットが定番であり続ける理由

 日清食品の「カップヌードル」、大塚製薬の「ポカリスエット」は、発売から数十年が経過した現在も売り上げを伸ばしている。これらの「定番商品」はプロダクトアウトによって生み出された。

 プロダクトアウトが重視するのは作り手の論理やコンセプトで、その根底にあるのは「万人に共通する、満たされていないニーズはないのか」という視点だ。

「ユニクロになろうとは思わない」

 SPA(製造小売り)モデルで成長を続けるライフスタイルアクセント。ファクトリーブランド「ファクトリエ」を通し、欧州ブランドのように歴史あるブランドの職人が尊敬され、企業としても高い評価を受ける「価値創造型ビジネス」の提供を目指している。

 ライフスタイルアクセントの山田敏夫CEOによると「価値創造型ビジネスには、『消費者が何を欲しいのか』に振り回されないプロダクトアウト思考」が必要という。

オアシスG関谷CEO「やれと言われた仕事はやっぱり続かない」

 「スーツに見える作業着」をヒットさせたアパレルブランドWWS。同ブランドを手がけるオアシスライフスタイルグループ(東京・港)は過去5年間で水道工事、飲食業、アパレル業という3つの事業をゼロから育てた。

 関谷有三CEOによるとプロダクトアウトとは、「独自性」や「面白さ」につながるものだという。「マーケットインが4、プロダクトアウトが6」を目指すことで、事業成立の時間と面白さをバランスさせている。

「1万円のビニール傘」の市場はどうすれば開拓できるか?

 創業300年の老舗傘メーカー、ホワイトローズ(東京・台東)。最近では折り畳み式ビニール傘や1本約1万円のワンタッチ型ビニール傘をクラウドファンディングで公開し話題を集めた。

 須藤宰社長は、顧客の声と社長の考えをバランス良く組み合わせる「マーケットインを意識したプロダクトアウト」が理想だという。

キユーピー植物性卵「HOBOTAMA」卵アレルギーの人の福音となるか

 キユーピーが開発した「HOBOTAMA」は、卵アレルギーの人でも食べられる植物由来のスクランブルエッグ。2021年6月から業務用として販売を始めた。

 需要が未知数なことから「廃番になるのをぎりぎり免れる売り上げを予算に設定」し、価格も一般的な業務用スクランブルエッグの3倍程度と高額だ。

最後に

 「顧客の潜在的なニーズ」を取り入れたプロダクトアウトの製品には、定番商品となったり、革新的なヒット商品になったりしたものも多い。今後もプロダクトアウト製品に注目したい。

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