イノベーション理論を提唱した、20世紀前半を代表する経済学者「シュンペーター」。彼が示したイノベーションの概念は、21世紀の現代においても世界中の企業経営者たちによって実践されている。この記事ではそうした事例やシュンペーターにまつわる話題を過去記事から振り返る。

イノベーション理論を提唱した「シュンペーター」

 シュンペーターとは20世紀前半の経済学者の一人だ。特に「イノベーション」を中心とする独自の経済発展理論を展開したことで知られている。

 シュンペーターが生まれたのは1883年。オーストリア出身で第1次世界大戦後にオーストリア大蔵大臣や独ボン大学教授を歴任したが、1932年にナチスから逃れてアメリカに移住した。その後は米ハーバード大学教授として教べんをとる一方で、計量経済学会の創設、アメリカ経済学協会や国際経済学協会の会長職を務めた。

 シュンペーターが提唱した「イノベーション理論」によると、イノベーションとは「価値の創出方法を変革して、その領域に革命をもたらすこと」を指す。そして変革の段階では「新結合(ニューコンビネーション)」が起きるという。このイノベーションと、企画者(イノベーションを行う人)、銀行の3つが経済発展の重要な要素となるというのがシュンペーターの主張だ。ちなみにここでいうイノベーションは技術革新に限らず、社会に新たな価値をもたらす創造であればすべてがイノベーションであるという。

 今日、多くの企業経営者たちがシュンペーターの理論を実践し、世界にイノベーションをもたらしている。この記事ではシュンペーターの言葉や彼の理論を実践した事例のいくつかを、過去記事からピックアップしてみる。

イノベーション生む 5つの力

 シュンペーターによると、イノベーションは次の5つに分類できるという。

  1. 新しい財貨、すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産
  2. 新しい生産方法、これは決して科学的な新しい発見に基づく必要はなく、商品の商業的取り扱いに関する新しい方法をも含んでいる
  3. 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
  4. 新しい組織の出現
  5. 新しい販路の開拓

 これらはいずれも決して特別な内容ではない。つまりイノベーションとは必ずしも画期的な技術を生み出すことではなく、既存技術をユニークなアプローチで応用することによって新商品や新市場を創造したり、組織を変革したりすることもイノベーションといえる。

“名ばかり専務”を経営者に変えた言葉

 晩年、病床にあったシュンペーターは友人に「一人でも多く優秀な学生を一流の経済学者に育てた教師として知られたいと思っている」と語ったという。その友人の息子が経済学者のドラッカーだ。マネジメント理論で知られるドラッカーはシュンペーターの言葉を記憶にとどめ、その後も生涯にわたり「何によって覚えられたいか」と自らに問いかけ続けたという。

中途半端な高価格は百害あって一利なし

 シュンペーターが残した言葉の中で、特に有名なのが「新結合」だ。一般に「経済成長を起動する要因」だと解釈されている。単純に「異なる2つのものを結合すること」と捉えれば、その実践でイノベーションを起こした事例も少なくない。

 たとえばロイヤルブルーティージャパンが販売する「ワインボトル入り高級茶飲料」は、1本5000円前後から60万円という値付けにもかかわらず月間5000~6000本もの問い合わせがある。1本30万円の「MASA Super premium」は2014年に販売開始し、2017年時点ですでに完売しているという。

堤清二は「発想の早すぎる経営者」だった

 セゾングループを率いた堤清二氏は「俺はシュンペーターは読んでいない」と語ったという。しかし堤氏の経営手法は「丸物という百貨店を壊してパルコにしたり、緑屋をカード会社に転換したり」と、まさにシュンペーターが提唱した「創造的破壊」そのものだったという。

日本から「ユニコーン企業」が飛躍する、2つの条件

 シュンペーターの言葉に「郵便馬車を何台つないでも、決して鉄道を得ることはできない」というものがある。これは「既存事業の延長線上では、画期的なイノベーションは起きない」という意味で、だからこそイノベーションにはスタートアップが必要とされている。

 とはいえ「若手起業家の育成」や「臆病気質」といった課題を抱える日本では、海外と戦えるスタートアップ企業の育成が困難だという。

シュンペーターの「予言」 資本主義は生き残るか

 イノベーションの父と呼ばれるシュンペーターは、「資本主義は生き延びることができるか。いや、できるとは思わない」という意外な言葉も残した。ただしこれは予言ではなく「私の考えに同意するかどうかは重要ではない」とも語っている。問題を直視し、考えることの重要さを訴えることがシュンペーターの本当の狙いだ。

最後に

 イノベーション理論を提唱し、「新結合」や「創造的破壊」などの概念を残したシュンペーター。20世紀前半を代表する経済学者は、ドラッカーなど他の経済学者はもちろん、現代のさまざまな経営者たちにも大きな影響を与えている。どのような分野においてもイノベーションは欠かせない。シュンペーターの理論が、今後も多くの企業と世界を動かしていく様子に注目していきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。