多数の投資家から集めた資金で、企業に大きな影響力を行使する「ファンド」。ハゲタカ集団などと嫌われることもある一方で、ベンチャー企業などの急成長には欠かせない存在となっている。ここではファンドの重要な役割や近年のファンドの動きについて取り上げた過去記事を紹介する。

巨額の投資で企業に影響を与える「ファンド」とは

 「ファンド」とは投資家から集めた一定規模の資金をプロのファンドマネジャー(運用の専門家)が運用する金融商品のことで、投資信託とも呼ばれている。ファンドマネジャーは投資先の企業をIPO(新規株式公開)させたり、M&A(合併・買収)で売却するなどして巨額の利益を上げ、その一部を投資家に還元する仕組みだ。なおVC(ベンチャーキャピタル)もファンドの一種で、こちらは創業まもないベンチャー企業を主な投資先としている。

 ファンドは投資先の企業にとっても大きなメリットをもたらす。海外では起業から数年で急成長を遂げたITベンチャーも少なくないが、それを可能にしたのもファンド(特にVC)の存在。一方でカネだけでなく口も出すファンドは投資先の経営陣と対立することも多く、経営者や個人投資家から「ハゲタカ集団」などと嫌われている一面もある。

 今回はファンドをめぐるこれまでの記事の中から、特に日本で話題となったファンドの動向を振り返っていく。

ファンドを使い倒せ、スカイプの事例とは

 2003年の創業から、わずか10年で急成長を遂げたスカイプ。創業の翌年には利用者が100万人を超え、さらにその翌年(2005年)には米イーベイが約26億ドルで買収。さらに2011年には、米マイクロソフトに85億ドルで売却された。

 これを可能にしたのがファンドの存在だ。初期ステージではVCから投資を受けて急拡大し、その後事業会社が買収。さらにバイアウトファンド(ファンドの一種)に買収され、また事業会社に売却というサイクルを繰り返しながら成長を続けたのだという。

 こうした事例を背景に、自民党の税制調査会も「VCに出資した企業の所得税を減税する案」を検討し始めている(2013年9月当時)。日本のベンチャー育成と、ファンドを利用した企業の成長・再生サイクルの活性化が狙いだ。

国内初の「フィンテックファンド」は成功するか

 金融サービスにITを活用する「フィンテック」が人気だ。2015年12月にはSBIインベストメントが「FinTechファンド」を設立し、KDDIもフィンテック関連ベンチャーへの投資拡大を検討するなどフィンテック分野への投資が注目を集めていた。

 とはいえフィンテックは他のIT分野よりもクリアすべきハードルが多く、日本で成功しているフィンテックベンチャーは少数だ。現在は少数の有望なベンチャーに投資が集中している状態だという。

楽天、スタートアップを支援する国内ファンドを新設

 2016年1月、楽天がスタートアップ企業向けの「楽天ベンチャーズ・ジャパン・ファンド」を設立した。運営資金の100億円は楽天が全額出資。「世界に通用する有望なスタートアップ企業を発掘」し、「楽天が持つグローバルな事業インフラ」で世界に発信していくのが狙いだ。

ソフトバンク孫社長、「必然」の10兆円ファンド

 ソフトバンクもIT関連企業向けの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立した。こちらは最大1000億ドル(10兆円強)という巨大な規模で、ソフトバンクとサウジアラビアの公共投資ファンドが共同で出資する。

 ファンドの設立にあたり「今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレーヤーとなる」と自信を見せた孫氏。米アップルのスティーブ・ジョブズ氏や投資家のバフェット氏を手本に、IoT関連のイノベーションとその拡大を主導していきたい考えだ。

孫正義氏が10兆円ファンドの第2弾設立を正式表明

 ソフトバンクの孫氏が「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)2」の設立を発表した(2019年5月)。規模は前回同様、最大約10兆円だ。最初のファンドは「サウジのジャーナリスト殺害事件」の影響で一部の投資家・投資先から敬遠される動きもあったといい、第2弾のファンドでは当面はソフトバンクが全額を出資するという。

ファンドが迫る 新・対話経営

 「株主の利益ばかりを主張するうさん臭い連中」「企業をモノのように売り買いするハゲタカ集団」などと嫌われることも多かったファンド。そのファンドを「企業のパートナー」と再評価する動きがあるという。

 そうした企業の1つハウス食品では、経営陣とファンド、そして学識経験者との間で中期経営計画について討論を続けている(2014年当時)。ファンドが持つ「外部の目」を生かし、新たな気づきを得ようという狙いだ。

 M&Aに詳しい専門家は「日本企業に必要なのはパートナー型の株主だ」と語り、ファンドと対立するのではなく「対話」することの重要性を説く。実際、中堅・中小企業の間では、パートナーであるファンドが「業界再編の呼び水」の役割を果たすケースも増えていたという。

異端児ではなくなった「村上ファンド」

 企業と長期的に付き合うパートナー型のファンドに対し、短期志向の「アクティビスト」と呼ばれるファンド(株主)もいる。「異端児」と呼ばれ、株価をつり上げる強引な手法で物議をかもした「村上ファンド」の村上世彰氏は、その代表例だ。

 しかし村上ファンドの事件から17年近くが経過した今(2019年当時)、以前の村上氏と同じ「アクティビスト」が増えている。当の村上氏も活発な活動を再開しており、さらにアクティビストの主張や要求に賛同する株主も増えているという。

アクティビストは「必要悪」 企業経営に改善の余地

 企業に対して時に強引な手法で迫るアクティビストだが、その存在を「必要悪」とみなす向きもある。いわく、日本企業の経営が完璧であればアクティビストはいらないが、ガバナンスや経営戦略が不十分な会社が多い以上、アクティビストの介入は意味があるというロジックだ。

 実際、香港のオアシス・マネジメント、米国のエリオット・マネジメントやサード・ポイントなど、著名なアクティビスト・ファンドが日本企業に与えてきた影響は大きいという。

最後に

 ベンチャー企業の育成から成熟した企業の経営改善まで、経済界の中でファンドが果たす役割は大きい。かつてはハゲタカなどと嫌われていたアクティビストも、近年では評価する動きがある。

 日本経済を立て直すカギとしても期待が集まるファンド。この先。ファンドと上手に付き合える企業が増えていくかどうか注目していきたい。

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