新型コロナウイルスの感染拡大により、「セーフティーネット」(社会保障)をめぐる動きが世界中で活発になっている。日本でも、新型コロナ以前から課題となっている年金や保険に加えて、各種補助金や給付金をめぐる議論が盛んだ。今回はこうしたセーフティーネットに関するトピックを紹介する。

社会を支えるさまざまなセーフティーネット

 セーフティーネットとは人々に安全や安心を提供するための仕組み、つまり社会保障などを意味する言葉だ。

 もちろん、社会保障にはさまざまな種類がある。たとえば「老後の生活を支えるセーフティーネット」となる年金制度、「病気やけがによる経済的な負担を軽くするためのセーフティーネット」となる健康保険などはその代表だ。加えて国や自治体による助成金や給付金には、「企業の存続を支えるセーフティーネット」「個人の生活を守るセーフティーネット」としての役割が期待されている。

 新型コロナの感染拡大による世界的な不景気の中、かつてないほどの注目を集めるセーフティーネット。ここでは年金や健康保険に関する話題をはじめ、コロナ禍で議論されている各種セーフティーネットについて過去記事から振り返る。

今が山場の年金、「百年安心」は本当か

 しばしばセーフティーネットの代表として挙げられる年金。もともと「100年安心」という触れ込みの制度だったが、平均寿命の延びや少子高齢化などを背景に先行きを不安視する人も少なくない。

 これに対し、政府は「マクロ経済スライド」の強化で年金支給額の上昇を抑えるとともに、受給資格期間(加入期間)を短縮してより多くの人々が年金を受け取れるようにすることで、国民年金を「将来も持続する制度」にしようとしている。

健保の破綻回避には「外国人」受け入れが必須

 もう一つの代表的なセーフティーネットである「健康保険」も制度の存続が危ぶまれている。少子高齢化による人口減少で保険料収入が減る一方、高齢者1人当たりの医療費が増加し、現役世代など若年層の負担が重くなっているのだ。大企業などの保険組合の中には、財政悪化により解散するところも増えているという。

 保険制度を存続させるには「若くて健康な働き手を増やしていく」ことが不可欠だ。日本人の人口が減少傾向にある今、「外国人労働者」を積極的に受け入れることが問題解決のカギとなる。

 新型コロナの感染拡大は、国内外でセーフティーネットに関する議論を加速させている。特に注目を集めているのは、フリーランス(雇用されていない人)に対する保障だ。

 現在の日本には、労働者に対するセーフティーネットとして「雇用調整助成金」「雇用保険」「生活保護」という3段階の仕組みが用意されている。しかしこれらすべてを利用できるのは会社などに勤める人で、フリーランスが利用できるのは最後の生活保護のみだ。

 すでに欧米では「フリーランスに社会的な保障は必要ないのか」を議論する動きがあるという。働き方改革によって非雇用型の就労がどんどん拡大する日本でも、同様の議論が求められている。

慶大井手教授、一律10万円給付は「トランプ以上のバラマキ」

 国民1人当たり10万円を支給する特別定額給付金が始まった(2020年5月当時)。新型コロナによって失業や休業を強いられる人が増える中、国民の生活を保障するセーフティーネットという位置付けだ。

 「所得制限なし」で一律に現金を支給したことに対しては疑問や批判の声も少なくない。慶応義塾大学教授の井手英策氏も「暮らしが厳しい人たちの生存保障に集中しないで、なぜみんなに現金を配るのか全く理解できない」と語る。

竹中平蔵氏の提言で紛糾のベーシックインカム、スペインで導入難航

 東洋大学教授の竹中平蔵氏が、テレビ番組で「ベーシックインカム」の導入を提言した。内容は「一定所得以下の国民を対象に毎月7万円を支給する」というものだ。

 ベーシックインカムに関する議論は世界中で行われているが、本格導入への道のりは険しい。たとえばスペインでは「約230万人を支給対象」とするベーシックインカムの導入が決定(2020年5月末時点)されたが、支給条件の複雑さや職員の人手不足などにより手続きは難航しているという。

財務省諮問機関が持続化給付金終了を提言、中小再編の号砲か

 コロナ禍で中小企業を支える持続化給付金について、存廃をめぐる議論が始まっている。

 法人で最大200万円、個人事業者で同100万円を支給する持続化給付金は、多くの中小企業のセーフティーネットとなっている。一方で不正受給の多発や「不振企業の延命につながる」との批判も少なくない。

 政府が、限られた財源の中でどのようにセーフティーネットを確保していくかが注目されている。

コロナ禍からパート・アルバイトを守れない「雇用調整助成金」

 企業が従業員を休業させる際に、休業手当の一部を助成する雇用調整助成金。雇用の維持という役割が期待される一方で、企業の中には「代替の利かない正社員は雇用調整助成金を活用してつなぎ留める一方、非正規雇用者を解雇」しているケースもあるという。

 労働者のセーフティーネットとなる助成金だが、一部では正規雇用者と非正規雇用者の「格差」を生み出しているのも現状だ。

最後に

 年金、保険、給付金や助成金など、私たちの身の回りにはさまざまなセーフティーネットが張り巡らされている。

 しかしそれらセーフティーネットの中には、存続が危ぶまれるものや効果が疑問視されているものも少なくない。依然としてコロナ禍が続く中、セーフティーネットの今後に要注目だ。

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