世界共通の規格やルールとなるグローバル・スタンダード。私たちの周りにはさまざまなグローバル・スタンダードが存在し、日常生活やビジネスの場面で大きな影響を及ぼしている。今回はこれまでに掲載した記事の中から、グローバル・スタンダードに関する注目のトピックを振り返る。

あらゆる分野に広がる「グローバル・スタンダード」

 グローバル・スタンダードとは、特定の国や地域だけでなく世界中で共通する規格やルールのことをいう。例えば信号の色と並び(左から緑・黄・赤)は世界共通であり、インターネットなどの通信規格もグローバル・スタンダードだ。

 グローバル・スタンダードはさまざまな分野に存在する。こうした規格やルールの成立過程に決まりはなく、自然発生的に標準化されるものや、業界内で先行する技術や影響力を持つ企業が普及を図るものもある。いずれにせよ、ひとたびグローバル・スタンダードが形作られると業界内のすべてのプレーヤーがその影響を受け、独自のルールを採用する国や企業は不利な立場に置かれるのが一般的だ。このため特に経済や産業の分野では、国家戦略として自国に有利なグローバル・スタンダードを普及させようとする動きも少なくない。

 この記事ではグローバル・スタンダードを巡る過去記事から、特に日本や日本企業と関わりの深い話題を紹介していく。

「メガFTA」が対米、対中戦略を左右する

 グローバル・スタンダードは国際貿易に大きな影響を与える。中国の経済力が日増しに力を増し、それに伴い米中貿易摩擦が激化の一途をたどる現在、日本にとっては日欧EPAやTPP11をグローバル・スタンダードにしていくことは非常に重要だ。

賛否渦巻く「9月入学」、今年度は「実質11カ月」案も浮上

 「学校の入学月」にもグローバル・スタンダードが存在する。例えば日本では「4月入学」が当たり前だが、欧米や中国では「9月入学」が標準だ。

 入学月は留学や国際人材の採用に大きな影響を与えるため、日本が従来のルールに固執するのは得策ではない。安倍晋三首相(当時)も「9月入学も有力な選択肢の1つだろう。前広に検討していきたい」と語るなど、政府としても今後議論を深めていく考えだ。

ダメだった昆虫ワクチン、「ワクチン最貧国」脱却に必要なこと

 新型コロナウイルスのワクチン開発で出遅れている日本。その背景には「日本だけで治験を行い、日本国内のみに供給するビジネスモデル」にこだわる厚生労働省の思惑があるという。

 世界的には複数の国が参加してワクチン開発を行うことがグローバル・スタンダードとなっているだけに、その基準からの逸脱は日本の医療現場に深刻な悪影響を及ぼしている。

「げたは履かせない」サントリー・新浪氏が語る女性登用術

 大手飲料メーカーのサントリーでは「グローバルスタンダードの働き方」に取り組んでいる。同社社長の新浪剛史氏によると、そのカギを握るのは「健康」だ。

 欧米では健康意識の高さから、仕事と休暇のメリハリをしっかりつけることが標準化している。一方で日本は文化的に長期休暇を取得しにくいのが現状だ。このため新浪社長は「残業を減らすよりも、有給休暇を増やせ」という指示を出し、社内の働き方をグローバルスタンダードに近づけようとしているという。

住友商事が進める「脱・東京中心人事」、海外間の異動しやすく

 「日本の人事制度は世界から見ても特殊」と語るのは、住友商事グローバル人材マネジメント部の副部長、楊方(ヤン・ファン)氏。中国の現地法人から出向している楊氏によると、海外人材の採用や海外転勤を巡る日本企業の慣習はグローバル・スタンダードと異なるという。

 住友商事では2019年に海外人材の異動に関する共通ルール「Global Mobility Policy(GMP)」を策定し、「外国籍人材という概念」のない人事制度の構築を目指している。

「再エネだけでない第3の道を」日の丸企業が導くアジアの進路

 「世界のエネルギーの主流は再生可能エネルギー」だという。しかし「太陽光発電を大量に設置できる広大な土地もなければ、洋上風力の稼働率を高める豊かな風況にも恵まれない」アジアの国々にとって、再生可能エネルギー一辺倒による脱炭素は難しい。

 こうした状況を踏まえ、日本最大の発電会社JERAでは洋上風力を中心とする再生可能エネルギーの拡大と、火力発電の(アンモニア、水素への)燃料転換を同時に進めるという柔軟な手法により、アジア各国が取り組む脱炭素への貢献を目指している。

「国により正しさが違うことを、まず理解しよう」

 東レの社長、日覺昭廣社長は「統一的な条件というものは本来あり得ない」と語る。国や地域によって気候や歴史、慣習は違う。考え方の常識も異なるため、重要なのはグローバル・スタンダードに従うことではなく「互いに相手の見え方を肯定して理解した上で、あるべき姿を考える」ことだという。

最後に

 貿易ルールや入学ルール、医薬品開発、人事制度、エネルギー政策にいたるまで、世界にはさまざまなグローバル・スタンダードが存在している。こうしたルールや制度は事実上の強制力を持つものも多いが、一方でグローバル・スタンダードに従うことだけが正解というわけでもない。日常生活やビジネスの場面でどのような基準で行動すればよいのか、視野を広げつつ考えていきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

春割実施中

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。