「アセスメント」とは、特定の対象を客観的な基準で評価・分析すること。対象は環境であったり、組織、人、特定の製品であったりする。いずれの場合でも、アセスメントは適切な行動や対応のために必要不可欠とされる。今回は過去記事から、各業界のアセスメント事例をピックアップしていく。

分野・対象を問わず活用される「アセスメント」

 「アセスメント(Assessment)」とは、特定の物事や組織・人などの対象を客観的な基準で評価・分析することをいう。分析の結果はその後の対応を適切に行うために利用される。

 アセスメントの対象はさまざまで、例えば開発工事や特定の製品などが環境にどのような影響を与えるか調査・予測・評価する「環境アセスメント」、組織の現状を正しく診断・評価するための「組織アセスメント」、社内外の人材を対象にその人の特性や適性を判断する「人材アセスメント」、職場などの潜在的な危険性や有害性を評価する「リスクアセスメント」などがある(ただしすべてのアセスメントに「○○アセスメント」という名前が付いているとは限らない)。

 この記事では環境アセスメントをはじめ、いくつかの「アセスメント事例」について過去記事の中から紹介していく。

風向き変わるか? 取り残される風力発電

 アセスメントの中でも特に有名なのが「環境アセスメント」だ。例えば風力発電のような施設を造る場合、施設を建設・稼働させることで周辺環境にどのような影響を与えるか(騒音や景観阻害、バードストライクなど)を評価・分析しなければならない。

 ただし環境アセスメントには手間も時間も必要だ。アセスメントをすることで事業に遅れが発生することもある。例えば、風力発電は2012年10月に「環境影響評価法」(通称「環境アセスメント法」)の対象事業に追加された。これによってアセスメントに要する手続き期間は最低でも3年、長引けば5年もかかるようになり、さらに、調査のため1億円超の費用が余計に必要になった。

逆風下で増殖する“ミニ”石炭火力

 国の環境アセスメント制度を逃れる「アセス逃れ」を指摘されているのが、「ミニ石炭火力」と呼ばれる短期間で事業化できる火力発電所だ。石炭火力発電所では出力11万2500キロワット(kW)以上がアセスメントの対象なので、それを下回ればアセスメントを逃れられる。

 東日本大震災に伴う原発事故により各地の原子力発電所が停止し、安価なベースロード電源として石炭が注目されたためだ。また、16年4月の「電力自由化」を念頭に、短期間で事業化できるミニ石炭火力の建設が相次いだ。12年~17年の5年間だけでも、約20カ所のミニ石炭火力が計画、もしくは運転開始したという。

ミリ波レーダーだけで歩行者を検知

 アセスメントを積極的に活用しているのが自動車業界だ。自動車メーカーが開発する新製品の予防安全性能や衝突安全性能などの評価に利用している。例えば歩行者を対象とした自動ブレーキは、欧州の「EuroNCAP」や日本の「JNCAP」などの自動車アセスメントの規定に基づいて評価している。

 自動ブレーキで歩行者を認識するにはカメラが必須という常識を覆して、ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)は、新型SUV(多目的スポーツ車)「ティグアン」に、ミリ波レーダーだけで機能する歩行者検知システムを搭載した。これも自動車アセスメントを利用して評価されている。

日本の自動車産業に「LCA」の圧力 脱炭素へ物流も製造も総力戦

 自動車業界が特に危機感を募らせているのが、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」規制だ。これは「原料の採掘、部品や完成品の生産、使用、廃棄・再利用に至るまでの製品のライフサイクル全体で生じる二酸化炭素(CO2)排出量を評価し、規制する」ものだ。欧州市場に製品を出荷するメーカーにとって避けて通ることができない重要不可欠なアセスメントとされる。

 日本の全電源に占める火力発電の割合は、欧州共同体(EU)が37%なのに対し、約75%に上る。国内での素材や部品、完成車の製造の各段階でCO2排出量が多い電力を使うため、LCA規制では不利になるのだ。

サイバー防衛で大事な「Who」「How」「Why」

 サイバーセキュリティーの分野でもアセスメントは行われている。米連邦金融機関検査協議会が作成する「サイバーセキュリティー・アセスメント・ツール(CAT)」もそのひとつで、例えば日本の金融機関でもCATを使ってグループ全体や営業拠点のITセキュリティー水準を評価し、対策の策定に生かしているという。

災害避難所に蔓延する「我慢すべき」の正体

 「災害時の避難所生活」を対象としたアセスメントもある。たとえば「ラピッドアセスメント」というものがある。避難者に優先順位を付けるためのリストを作るというものだ。避難所に集まる人たちの中で、寝たきりの高齢者、妊婦、子ども、乳幼児などをリスト化して、この人たちに優先的にトイレに近い場所などを割り当てたり、必要な物資を配ったりするというものだ。だが、日本の避難所ではその概念がないというのだ。

最後に

 私たちの身の回りには、さまざまな「アセスメント」がある。その内容は多種多様だが、中には法律や業界ルールとして規定されているものもあるため注意が必要だ。建設業界やエネルギー産業、自動車メーカーなどはもちろん、どのような業界に属していても、それぞれの分野に応じたアセスメントの内容と今後の法整備などの動向に、注意すべきだろう。

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