小売業でありながらオリジナル商品の製造に携わるSPA(製造小売業)。日本では「ユニクロ」のファーストリテイリングに代表されるアパレル企業が中心だが、それぞれ消費者のニーズを巧みにつかんだ商品企画により事業を拡大している。今回は過去記事に掲載したSPAの事例から、特に注目すべきものをピックアップしていく。
ユニクロ、H&Mに代表される「SPA」

SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel:製造小売業)とは、主にアパレル業界などを中心に「小売業がオリジナル商品の製造に携わる」ビジネスモデルのことをいう。1986年に米国の衣料品小売り大手GAPが提唱した概念。現在では日本のユニクロ、スウェーデンのH&M、スペインのZARAなどがSPAの代表的な企業(ブランド)として知られている。
SPAの一般的なスタイルは、小売業を営む企業が自ら商品企画を行い、製造技術を持つ企業に生産を委託するというものだ。通常の小売業と比較してSPAには「消費者中心の商品開発が行える」という強みがあるうえ、大量生産体制が整えば「製造コストを大幅に抑える」ことも可能だ。つまり「消費者のニーズを捉えたファッション性の高い商品を、低価格で販売できる」ことがSPAの最大のメリットとなる。加えて、SPAでは企画から製造、そして販売までのサイクルを短くすることが容易なことから、SPA企業の中には「ファストファッション」と呼ばれるものも多い(H&MやZARAなど)。
この記事ではユニクロをはじめとする国内のSPA企業について、過去記事から振り返ってみる。
失敗こそ成長の源、ユニクロ・柳井氏が歩んだ道
SPAと聞いて真っ先に思い浮かべるのが「ユニクロ」。しかしH&MやZARAがファッション性を重視した商品企画を特徴とするのに対し、ユニクロを手がけるファーストリテイリングの柳井正氏(会長兼社長)の持論は「トレンドよりベーシックなものに大きな需要がある」というものだ。
1987年にオリジナル商品の製造に携わるようになり、国内初の本格的なSPAとなったユニクロ(ファーストリテイリング)。品質確保などの課題で何度も失敗と改良を繰り返しながら成長を続けてきた。新型コロナウイルス禍でアパレル業界全体が落ち込む中、2020年8月期の連結売上高は2兆88億円と好調を維持している。
縮小市場でも西松屋が連続増収できるワケ
ベビー向けのアパレルチェーンとして有名な西松屋もSPAの代表格だ。少子化によって市場が縮小する中、同社では「記録が残る1983年以降、一度も赤字になったことがない」という。好調の背景にあるのは、小売業でありながら「生産性」の考え方を現場に持ち込み、日常業務の中に「カイゼン」を取り入れた柔軟な取り組みだ。
ベイシアグループ、非「グループ一丸」で1兆円到達
チェーン展開により1兆円規模の売り上げを誇るベイシアグループ。その傘下にある2大ブランドがホームセンターのカインズとアパレルのワークマンで、どちらもSPAとして成功を収めている。特にワークマンは「作業服」という特殊な分野に特化しながら、ファッション性の高い商品開発や販売手法で女性からの評価も高い。
良品計画・金井政明会長「まだ国内には3000店は出せる」
無印良品を手がける良品計画もSPAの有名企業だ。モノが売れない時代といわれる中、同社の金井政明会長は「まだ国内には3000店は出せる」と強気を崩さない。その自信の背景には「メーカーの負担になることを言い出しにくい小売業」ではないという同社の強みがある。
安さだけじゃない靴のヒラキ、「まとめ買い」促す仕掛け
「靴」の製造販売で堅調に売り上げを伸ばしているのはヒラキだ。多くの商品が3000円以下で、499円のバレエシューズや780円の厚底スニーカー、180円のキッズスニーカーなど格安の商品も多い。こうした販売戦略をとれる理由の一つに、同社が自社で商品を企画し、海外の委託先の工場で製造して販売するSPAであることが挙げられる。
最後に
小売業でありながら商品企画まで手がけるSPA。SPAのビジネスモデルを採用する企業の中には、ユニクロや西松屋、ワークマンなど話題も業績も好調なところが多い。少子高齢化で「モノが売れない時代」といわれるうえ、コロナ禍で消費がさらに落ち込んでいる現在、既存のSPAだけでなく新たなSPAの登場と活躍にも期待していきたい。
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掲載当初、良品計画の記事中で同社の社名が一部、「良品企画」となっておりました。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。 [2022/08/17 17:30]
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