国内屈指のカメラメーカーとしての認知が高いオリンパスだが、現在は医療機器領域で世界トップシェアを誇っている。そんな同社は、いかに事業転換を行ったのか。過去のニュースを参考に探る。

オリンパスの概要・沿革

 オリンパスは、日本の光学機器・電子機器メーカー。医療事業・科学事業・映像事業で、内視鏡、顕微鏡、デジタルカメラ、小型録音機などの光学機器、電子機器を製造・販売している。創業は1919年で、以前は消費者向けのカメラメーカーとしての認知が高いが、現在は内視鏡分野では世界シェア75%程度を占めるなど、医療用の光学機器や顕微鏡分野では世界最大手となっている。

本業の危機から復活、SCREENとオリンパス

 そんなオリンパスは、「本業の危機」を経験している。そのキーワードは、デジタルカメラである。スマートフォンのカメラ機能の向上で、やはりそのビジネスが大打撃を受けたことは記憶に新しい。当時の社長、笹宏行氏によると、デジタライゼーションによって、フィルムカメラからデジタルカメラに市場のメイン商品が代わったのだという。そして、それが今度はスマートフォンに移行し、デジタルカメラの市場は大きく縮小した。それに気がついてからは規模を追わず、ミラーレスカメラによる付加価値の提供に集中する方向にすぐに手を打ったオリンパス。危機意識を持つまでに1年半ほどの時間がかかったという。

 「危機に気づくかどうかは最終的には経営者の責任」だと笹氏は述べる。情報の間口を広げておくことで、いち早く、危機に気づかないといけない。ただ、さまざまな環境要素を一人で把握するのは難しいので、どうやって腹心を育てるかということが重要だと述べた。

オリンパス、赤字のカメラ、反転できるか

 上記のインタビューの2年後となる2019年、オリンパスは新型のミラーレスカメラを発表。防塵(ぼうじん)、防滴の機能を高めるなどプロカメラマン向け仕様で、ブランド力を引き上げて入門機も含めて幅広い層にオリンパスのカメラを浸透させる狙いがあった。

 オリンパスのカメラ事業の現状は苦しかった。2018年4~9月期の部門売上高は257億円と前年同期比16%減った。2019年3月期は中国のカメラ生産子会社で操業停止した際の費用を計上し、130億円の営業赤字を計上する見通しだった。また、スマートフォンによる撮影機能の代替はカメラ各社の業績を悪化させている。現に、カシオ計算機は2018年に消費者向けのデジカメから撤退している。

国内初、内視鏡画像から「がん」を見つけるAI発売

 また、オリンパスは2019年2月に、内視鏡画像を診断するAI(人工知能)「EndoBRAIN」を3月8日に発売すると発表。検査中にリアルタイムで腫瘍を判別し、医師の診断を支援する。同製品は内視鏡分野において日本で初めて薬事承認を受けたAI製品で、価格は450万円。オリンパスは今後、EndoBRAINをあらかじめ搭載した内視鏡も発売する方針だという。EndoBRAINはオリンパスの内視鏡が撮影した大腸の画像を解析し、0.4秒でがんを識別するソフトウエア。情報システム大手のサイバネットシステムが、昭和大学や名古屋大学と共同開発し、2018年12月に医療機器として国内で承認された。

オリンパス、国内初の「内視鏡AI」が見る課題

 この「EndoBRAIN」について、もう少し詳しく見ていこう。当時、オリンパスは消化器内視鏡で世界シェア7割を占める最大手だった。しかし、先進国では製品サイクルが一巡している。ハードウエアの買い替え需要を喚起しつつ、熟練医が不足している新興国にも内視鏡システムを売り込むために、AI活用は喫緊の課題になっていた。オリンパスは今後、エンドブレインをあらかじめ組み込んだ内視鏡を発売し、さらに事業を強化していく方針だ。だが海外に目を転じると、オリンパスは先駆者とは言いがたい。既に多くの医療機器メーカーが「医療用AI」を実用化し、国もそれを後押ししている。

 たとえば、米IDx社が開発した医療用AIは2018年4月、米食品医薬品局(FDA)から「糖尿病性網膜症の診断AI」として認可された。糖尿病になると目の網膜に血管障害を起こしやすくなるが、網膜の画像から障害の程度を識別できる。米IBMもAIの「ワトソン」を用い、症状から病名候補を挙げる、その人に効果の高い薬を薦めるといった取り組みを加速している。こうした海外の動きを受けて厚生労働省は2018年、「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を設立したが、制度設計は道半ば。20年の診療報酬改定に向けて法整備を進めるものの、患者データの扱いなど課題は少なくない。

胃カメラに頼らず「サステナブル」な会社に

 しかし、現在社長を務める竹内康雄氏は、オリンパスを胃カメラに頼らず「サステナブル」な会社にしたいと述べる。事業だけでなく、マネジメントも含めて、グローバルに一流の「メドテックカンパニー」になる。それがオリンパスの目指すところだという。同氏によると、現在、オリンパスのビジネスの中心である消化器内視鏡は、ある意味、一度も真剣にグローバルな競争をしたことがない事業だという。これまでオリンパスは、製品自体を自分たちで開発し、かつ競合相手は日本企業だった。しかし、これから伸ばそうとしている外科用の内視鏡や治療器具などの競合は、日本企業ではない。グローバル企業と競合して勝てなければ、オリンパスの成長はないと、竹内社長は見ている。

オリンパス、人事のプロ招き徹底改革 日本型からの脱皮なるか

 オリンパスは人事面での改革も進めている。「世界で競合する企業はジョブ型の人事制度を採用している。年功でポジションや処遇を決めるような人事制度のままでは、世界の競合企業に対抗できない」。2020年9月10日にオリンパスが開いた人事戦略の説明会で、大月重人執行役員(人事・総務担当)はジョブ型の人事制度を導入する理由をこう説明したという。

 オリンパスが今回の人事改革に着手したのは2019年。同年4月に、国内従業員約8000人の2割強に当たる1800人の管理職の雇用をジョブ型に転換した。さらに20年4月には、世界で働く約200人の本部長級以上の社員を対象に、地域ごとでばらばらになっていた評価制度を統一した。21年4月には管理職の職務定義も世界で統一する予定だ。評価制度や職務定義を統一することで、世界の従業員を公平に評価する土壌が整う。

最後に

 ここまで、過去の記事を参考にオリンパスの企業沿革や、ここ数年の動向を紹介してきた。同社は、カメラメーカーから医療機器分野に軸足を移し、グローバル市場を狙っている。国内だけでなく、海外をも視野に入れ、グローバルカンパニーとなることを目標にするオリンパスの動向から、今後も目が離せない。

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