食品宅配分野で大きな存在感を持つオイシックス・ラ・大地。本記事では、過去のニュースや高島宏平社長へのインタビューの内容をもとに、同社のこれまでの歩みや、ビジョンを探っていく。

オイシックス・ラ・大地の沿革・概要

 オイシックス・ラ・大地は、有機・無添加食品、ミールキットの通信販売を行う企業。有機野菜などの食品宅配専門スーパー「Oisix」や、有機野菜などのカタログ食品宅配「大地を守る会」、有機野菜などの個別宅配「らでぃっしゅぼーや」を運営していることで知られている。同社は2000年、元マッキンゼー・アンド・カンパニーの高島宏平氏が代表となり設立された。

大地を守る会とオイシックス、統合決断の真意

 有機農産物の宅配で草分け的存在の大地を守る会と、Eコマース市場で急成長していたオイシックス(現在の社名はオイシックス・ラ・大地)はなぜ統合を決断したのか。消費者の安全志向に答える農業は今後どこへ向かうのか。両社のトップにインタビューした記事の1回目は、大地を守る会の藤田和芳社長だ。同氏は、オイシックスが立ち上がった当時から、高島社長と知り合いだったという。両氏のあいだでは、年に2、3回食事をし、業界の話をするという関係が続いていた。その延長で、経営統合の話が出てきたという。

オイシックスドット大地が狙う“どこでも接点”

 そして、同年10月に両社は経営統合を果たした。社名も、オイシックスからオイシックスドット大地へ。この統合によって、オイシックスは食品・食材の通信販売で、企業としては業界トップになった。同社執行役員の奥谷孝司氏に、「オイシックス」と「大地を守る会」という2つのブランドの方向性について聞いた。奥谷氏は、「『これからの食卓』『これからの畑』をテーマに据え、食に関する社会課題の解決を進めながら、より多くの人により良い食生活を提供すべく、両ブランドが力を合わせていきます」と述べる。

対アマゾン、勝機あり

 同社が手掛ける生鮮品の宅配事業には、当時多くの競合が参入しはじめていた。たとえばネットの巨人、アマゾンだ。同社の日本法人も2017年4月、首都圏の一部で生鮮品の宅配「アマゾンフレッシュ」を開始している。米国では8月末、137億ドル(約1.5兆円)を投じて米高級スーパーのホールフーズ・マーケットを買収。同社の特徴である有機野菜をはじめとする高品質の商品を武器に食品市場に殴りこみをかける。では、オイシックスは後発の追い上げをどうかわすのか。その答えとなり得るのが、調達先のネットワークだ。

経営者がゴールを決めて過程は現場に任せるべき

 弊誌では、高島社長にもインタビューを行っている。2000年6月にオイシックスを設立し、ネット通販サイト「Oisix」を立ち上げ、最初は生鮮食品20品目の販売からスタートした同社。その後、オイシックスは「ふぞろい野菜」の販売や定期購入サービス「おいしっくすくらぶ」など、個人向けのネット食品宅配サービスで新しい付加価値を生み出し続けてきた。高島社長はオイシックス創業以来、同社を率い続けてきた。2017年10月には大地を守る会と経営統合し「オイシックスドット大地」の社長に就任。そんな高島社長が、折に触れて思い返してきたのが、戦後有数の名経営者・小倉昌男氏の姿だったという。本記事では、高島社長へのインタビューの前半をお届けする。

経営とは、左右に振れるらせん階段のようなもの

 本記事は、高島社長へのインタビューの後半だ。同氏はこのインタビューで、経営とは「らせん階段」のようなものだと述べる。ベンチャー企業の経営トップは、「サービス品質を安定させなくてはいけない」「もう上場したからちゃんとしなくてはいけない」など、常にいろいろな方向に経営が振れる。そして、振れながら本体の勢いがなくなって、大企業のようになってしまう。大小はあれど、どの会社でもこうした現象は共通して起きるものではないかと、高島社長は述べる。その上で同氏が強調するのが、「今、らせん階段のどちらに向かうのが良いのか」をしっかりと判断することだという。

なぜ農家は小倉優子さんに耳を傾けるべきなのか

 2018年2月に、らでぃっしゅぼーやを完全子会社化した同社。同年7月には、社名を現在のオイシックス・ラ・大地に変更した。当時同社が狙っていたのは、「頑張るママ」という市場だ。目玉商品の一つ、「ミールキット」という野菜や肉、魚などの食材と調味料をレシピ付きのセットで届け、調理時間を短縮する商材を武器に、顧客獲得にいそしんでいた。そのミールキットの一つ、チキンカレーは、タレントの小倉優子さん監修のもと発売された。この商品のポイントは、バターを作る時間を調理時間に含めていないところにある。小倉さんの「『子どもと楽しむ』『子どもと学ぶ』という工程を入れたい」という提案を受けたものだ。ミールキットの最大の特徴は調理時間を短縮する点にある。だが、この商品に関しては「休日の昼に子どもと一緒に作る」というシチュエーションを想定し、あえて時短を優先しないことにしたという。

ヒットの新法則、こう使いこなす 企業が今すべきこと

 そして2020年、オイシックス・ラ・大地は、コロナ禍を逆手に取り急成長する。外出自粛の影響で、2020年4~6月のあいだ、2万4000人以上が新規入会したのだ。しかし、ネット注文のはずなのに、増えるのはやはり電話。宅配サービスブランドの一つ、「大地を守る会」では4月、コールセンターの人員を25%増やした。比較的高齢の会員が多い大地を守る会のコールセンターには、「スマホで注文したいのだけど、どうやったらいいのか分からない」など、ウェブページを見れば分かる内容の問い合わせも多く、「手取り足取りで方法をお伝えしている」(永坂崇カスタマーサポート部長)。ピークの6月にはコールセンターへの問い合わせが前年比50%増えた。オイシックスの4~6月の売上高は前年比4割増。電話でのきめ細やかな対応は受注を下支えするために欠かせないサービスになっているという。

最後に

 ここまで、オイシックス・ラ・大地の企業沿革や概要、過去の記事を紹介してきた。食品宅配業で、現在大きな存在感を持つ同社は、これまで様々な企業との提携や統合を経て、現在まで生き残ってきた。一時は、アマゾンのようなグローバル企業も、この分野への進出していたが、オイシックス・ラ・大地の勢いは衰えるどころか、このコロナ禍でさらに勢いを増したようだ。今後も、その動向に注目だ。

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