他の投資家に損害を与え、市場の信頼を損なう「インサイダー取引」。重い処罰を伴う犯罪行為だが、実際にインサイダー取引を行う人は昔も今も変わらず存在している。この記事では過去や現在のインサイダー取引や「インサイダー取引まがい」の事例について紹介する。

厳しい処罰を伴う「インサイダー取引」

 会社関係者などが非公開の内部情報などを利用して特定有価証券の売買を行う「インサイダー取引」。他の投資家に損害を与え、金融商品市場の信頼を失わせる行為として世界中で規制されている。日本では「金融商品取引法」により規制されており、違反者への罰則は、個人の場合は「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」と「取引によって得た財産の没収」、法人には「5億円以下の罰金」と厳しい。

 しかしインサイダー取引は当初から「犯罪行為」だったわけではない。法律が整備される以前には、堂々とインサイダー取引を行って財を成した人もいたという。また現代でも、新しいシステムや仕組みに法律が追いつかず「インサイダー取引まがい」がまかり通った例がある。

 今回はそれらの事例について、過去に掲載された記事から振り返っていく。

初代SEC長官はインサイダーで大もうけ?

 米国の株式市場を監視・監督するSEC(Securities and Exchange Commission、米証券取引委員会)。初代長官はジョン・F・ケネディの父親「ジョセフ・パトリック・ケネディ」で、実は数々のインサイダー取引によって巨財を築いてきた人物だ。

 当時の米国にインサイダー取引を明確に禁止する法律はなかったものの、そのような人物が「クリーンなマーケットをつくる」SECのトップに任命されたことは、多くの人に驚きを与えたという。

任天堂で吹き飛んだバイオ株プチバブル

 現代では、インサイダー取引は犯罪とされている。インサイダー取引に関わった者はもちろん法律によって厳しく処罰されるが、インサイダー取引の疑いをかけられただけで「市場」に悪影響が出るケースも少なくない。

 そうした企業のひとつが、創薬ベンチャーのアキュセラ・インクだ。一時期、アキュセラをはじめとするバイオベンチャーの株式は「プチバブル」と呼ばれるほど人気を集めていたという。しかし期待された新薬の開発に失敗したことに加え、2016年5月にはインサイダー取引の疑いがかけられたことで株価が5分の1まで縮小してしまった。

順法意識が欠如していた、不祥事とは

 インサイダー取引と似た構図の「犯罪」は、他の分野にも見られる。たとえば公営ギャンブルである地方競馬の場合、騎手などの関係者が馬券を買うことは競馬法によって禁止されている。インサイダー取引の規制と同様、内部関係者による不正を防止するためだ。

 それにもかかわらず北海道帯広市の「ばんえい競馬」では、騎手や厩務員が馬券を購入したとして、合計13人が書類送検された。原因は順法意識の欠如。過去には騎手の暴力事件という不祥事も起こしていたこともあり、同市の米沢則寿市長は「ばんえい競馬の存続を危ぶんだ」という。

「革新」と「詐欺」の境界線

 実質的にインサイダー取引と同じでも、法律による規制が追いついていないものもある。その一つが、個人が発行する仮想株式を売買できるサービス「VALU」だ。VALUではSNSの影響度に応じてVAと呼ばれる仮想株式が割り当てられる。ユーザーは自分のVAを専門市場に公開し、ビットコインを使って自由に売り買いできるという。

 このVALUでインサイダー取引まがいの騒動を起こしたのが、人気YouTuberのヒカル氏だ。SNS上で自身のVAの価格をつり上げる「情報」を流し、価格が上昇したところで手持ちのVAすべてを放出するという手口で物議を醸した。しかし専門家によると、VALUの仕組みは「法律のすき間を縫うように」できており、ヒカル氏の行為も「株でいう風説の流布やインサイダー取引には該当しない」のだという。(※その後、VALUは2020年3月にサービスを終了している)

最後に

 日本はもちろん世界中で規制されるインサイダー取引。金融市場への信頼を破壊しかねない行為だが、法の網をくぐろうとする人や直接「犯罪」に手を染める人は後を絶たない。

 インサイダー取引は厳しく処罰されるだけでなく、疑いをかけられただけでも市場の制裁を招きかねない。関係者一人ひとりの順法意識が求められている。

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