デジタル空間の仮想世界や、そこで提供されるさまざまなサービスを指す「メタバース(巨大仮想現実空間)」。ITベンチャーだけでなくIT大手も注目しており、特に米フェイスブックは社名を「メタ・プラットフォームズ(メタ)」に変更するほどの力の入れようだ。今回はメタバースをテーマに、最近の記事から注目のトピックを紹介する。

フェイスブックも社名をメタに変更し社運をかける「メタバース」

 メタバースとは、コンピューターネットワークの中に構築された「仮想空間」や、その空間を通して提供されるサービスのことだ。利用者はパソコンやスマートフォン、さらには「VR(仮想現実)ゴーグル」などを通してメタバースに参加し、自分の分身である「アバター」を操作して他の利用者と交流したり、仕事や買い物などの日常生活と同様の行動をしたりできる。

 メタバースを活用したサービスとして有名なのは、2000年代前半に誕生した「セカンドライフ」だ。しかし先進的な取り組みに対して、3次元処理にパソコンのスペックが追い付かないなど、環境が整っていなかった。また、制作側がビジネスを展開して収益化することを優先させすぎたとの指摘もある。

 メタバースが注目を集めるようになった背景には、仮想空間をストレスなく利用できる技術やパソコンなどの端末の性能が向上したことがある。また、暗号資産(仮想通貨)やデジタルアートの流通に利用される「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」といった仮想空間での経済活動を支援する技術の進歩も上げられるだろう。そして、新型コロナウイルスの感染拡大によって、リアルの交流が制限されるようになったことも無視できない。

 この記事ではメタバースに特に力を入れているメタ(Meta、旧フェイスブック)の事例を中心に、これまでの記事を振り返ってみる。

メタバースとは何か IT、ビジネスでにわかに流行

 2021年10月18日、米フェイスブック(現メタ)はメタバースの構築のために「1万人の新規採用」を発表した。同社は21年7月に、今後5年程度でソーシャルメディア企業からメタバース企業への移行を目指すとしていた。

 ITベンチャーからIT大手まで幅広い注目を集めるメタバース。SF小説・映画には、本格的なメタバースを舞台とするものが多いが、本格的なメタバースはまだフィクションの世界のものだ。

 とはいえ、一部のユーザーからはメタバースが「インターネットの次の発展段階になる」との期待も出ている。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって、リモートワークを高度化するメタバースへの関心が高まっている。こうした中、次のトレンドに乗りたいと願う投資家や企業がメタバースに引き寄せられている。

メタが仮想空間に本腰、先行するヴァーベラはイベント会場の運営も

 メタが提供するメタバースは「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」。BtoBでの用途を念頭に置いており、利用者はVR端末を使って仮想空間に参加し、空間内に設置された会議室で他の利用者と「議論をしたり、資料を発表したり」できる。

 スタートアップ企業である米ヴァーベラも5年以上前から開発を進めてきた。会議室だけでなく、オフィス全体やイベント会場まで備えているのが特徴だ。

 リモートワークは何かしらの孤立感を生み出すとされている。これに対し、ヴァーベラの共同創業者であるアレックス・ハウランド氏は同社のシステムなら「同僚と偶然出会ったり、会議の合間に話をしたりできる」と言う。ただし、メタバースにも課題はある。1つ目が世界中で利用された場合の時差の問題だ。2つ目がセキュリティー面。3つ目が異なるプラットフォーム同士の相互運用だ。

フェイスブックの社名変更で話題のメタバース、注目すべき関連企業

 21年12月、フェイスブックが社名をメタに変更した。主力となる事業をこれまでのSNS(交流サイト)から、メタバース関連のサービスに移行する。

 メタバースに注力する企業はメタだけではない。同じくIT大手の米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフトをはじめ、米オンラインゲームサービスのロブロックス、半導体メーカーの米エヌビディア、そして中国IT大手のテンセントなども、それぞれの主力サービスと絡めてメタバースの開発・活用に取り組んでいる。

メタバース普及の鍵は、人々が集まりやすいゲームコンテンツ?

 メタバースは「コンテンツが大事」と語るのは、KPMGコンサルティングのディレクター、ヒョン・バロ氏。3次元空間を作ること自体は特段難しくないものの「理由がなければ人が集まらない」というのがその理由だ。

 集まるための明確なミッション(目的)を持たせるという点で、バロ氏が注目するのがゲーム。ゲームのジャンルによって目的がはっきりしているので人々が集まりやすい。例えば世界中で人気を集めるオンラインゲーム「フォートナイト」なら、チームで相手を倒すことがミッションだ。「メタバースは、ゲーム業界が先行するのではないか」(バロ氏)という。

いばらの道のメタバース市場、メタに勝算はあるか

 社名を変更してまでメタバースへの注力をアピールしたメタだが、その道のりは平たんではないという。

 メタバースの分野では、フォートナイトを提供する米エピックゲームズや、「ポケモンGO」の米ナイアンティックをはじめとするライバルが存在する。ナイアンティックでは、「リアルワールド・メタバース」と銘打ち、AR(拡張現実)を活用したメタバースを構築しようとしている。

 またマイクロソフトもビジネス分野でのメタバース活用を狙っており、メタと正面から競合する。半導体大手のエヌビディアは21年11月に仮想空間内で共同作業をするための企業向けプラットフォーム「オムニバース」の提供を開始している。

最後に

 コンピューターネットワーク内の仮想空間でさまざまな活動を可能にするメタバース。社名を「メタ」に変更したフェイスブックをはじめ、多くのIT企業がメタバース関連のサービスに取り組んでいる。

 メタバースは、私たちのビジネスや日常生活など生活のすべてに影響を与える可能性がある。メタやライバル企業たちの取り組みがどのように進展していくか注目だ。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

ウェビナー開催 成田悠輔×安田洋祐 激論!「ビジネス+経済学」

 米グーグルなど最先端企業で経済学者の採用が相次いでいます。最新の経済学は様々なビジネス活動を遂行する根拠となり、確実性を高めることが実証されています。一方、日本に目を向けてみれば、仕事場でも「本当は防げる失敗」が繰り返されているのが実情です。

 日経ビジネスLIVEは日経BOOKプラスと共同で、7月19日(火)20:00~21:00に「気鋭の経済学者が激論『経済学はビジネスに役立つか?』」と題して、ウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは米イェール大学助教授の成田悠輔氏と大阪大学大学院准教授の安田洋祐氏。本当に役立つ経済学を、ビジネスに取り入れるにはどうすればいいか。経済学の活用を通じて企業はどんなメリットを得られるのか。気鋭の経済学者による議論をお届けします。

■開催日:2022年7月19日(火)20:00~21:00(予定)
■テーマ:成田悠輔×安田洋祐 気鋭の経済学者が激論「経済学はビジネスに役立つか?」
■講師:米イェール大学助教授・成田悠輔氏、大阪大学大学院経済学研究科准教授・安田洋祐氏
■モデレーター:エコノミクスデザイン共同創業者・代表取締役・今井誠氏
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料(事前登録制、先着順)。

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。