2国間が経済的に連動せず、互いに影響を受けない状態にあることを「デカップリング」という。近年は米中対立によって両国のデカップリングが進んでいるとする見方があり、世界経済に及ぼす影響に注目が集まっている。今回は米中のデカップリングの現状と欧州の状況について、過去記事からピックアップしていく。

米中の対立が「デカップリング」を生み出す?

 デカップリングとは、国同士の経済や市場を切り離して連動していない状態を指す。デカップリングになれば、一方の国の経済が停滞しても相手国はその影響を受けることはなく、経済成長が続くことになる。

 デカップリングが注目を集めているのは米中対立によるところが大きい。両国は互いに密に連携しながら成長してきたが、ドナルド・トランプ米大統領(当時)が米中対立をあおったことで、デカップリングが進んだという指摘がある。一方でデカップリングは起きていないという見方もある。

 この記事では米中のデカップリングに関する話題を中心に、欧州の状況も含め、注目すべき過去記事を紹介していく。

米中デカップリングの「予行演習」となった新型コロナ危機

 米国では、中国との平和共存は不可能であり、中国とそれに従う国々を米国中心の世界から、全ての面で切り離すべきだ(デカップリング)という意見が強まっている。

 そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大は、図らずもその「予行演習」となってしまった。人の往来は止まり、サプライチェーンは寸断され、物流は滞り、経済活動は低下した。中国経済が世界経済に組み込まれた状況で中国を切り離すことは、こういう結果をもたらすということだ。

「深まる米中『デカップリング』。国際企業は打撃に備えよ」

 国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、新型コロナ後、米中間の緊張はさらに緊迫した状態に陥るとする。さらに米国と中国の経済的な対立に加え、米国は中国だけでなく欧州などその他の地域からも孤立するとみている。

 米中関係の泥沼化が日本企業に多大な影響を与えることは言うまでもない。そんな中、日本が果たすべき役割として同氏が期待しているのは、通信やデータ、IoT(モノのインターネット)といった技術の国際標準化の領域でリーダーシップを発揮することだ。技術の国際標準まで「真実を隠す」傾向にある中国に奪われれば、世界はますます混沌とするというのがその理由だ。

米中デカップリングの真実

 米中のデカップリングが話題となる中、投資の分野ではデカップリングどころか、むしろ両国のつながりがより深くなっているという指摘もある。例えばショート動画アプリ「快手(クアイショウ)」を手がける中国の快手科技が2021年2月に香港市場へ上場する際、フィデリティやブラックロックなど米投資運用大手が大きな役割を果たしている。

 米投資顧問会社シーフェアラー・キャピタル・パートナーズのニコラス・ボースト氏は、「金融分野での分断どころか、米中2国間の投資関係は今や世界最大級の規模に達した。さらに、他にはないペースで拡大している」と話す。

米中対立とサプライチェーン危機 デカップリングは起きていない

 識者の中には「米中のデカップリングは幻想にすぎない」と指摘する人もいる。21年の時点でも中国は米国から大量の穀物を輸入しているなど、両国の相互依存度は高い。もはや「デカップリングには手遅れ」という見方もある。現在起きているのはデカップリングではなく「各国が中国への一極依存に伴うリスクに気付いただけ」というのが、これらの識者たちの主張だ。

ドイツとロシアのビジネス関係が示す、デカップリングが困難な理由

 デカップリングは米中以外の国同士でも話題になっている。その一例がドイツとロシアだ。ロシアが14年にウクライナのクリミア半島を併合して以来、ドイツとロシアの政治的な関係は大幅に悪化した。貿易も同様に低調だ。ロシアの対独貿易額は20年、450億ユーロとウクライナ紛争前の半分近くまで落ち込んだ。

 だが、最近の貿易額の減少は、ロシア通貨ルーブルの下落と石油やガスの価格低下に負うところが大きい。逆にドイツからロシアへの対外直接投資額は経済制裁を科された後の15年、35億ユーロに拡大した。18年には38億ユーロに達している。ロシアに進出しているドイツ企業は約4000社で、ロシアに暮らす1億4500万人の消費者に向けて商品を生産しているのだ。

最後に

 2国間が経済的に分断されるデカップリング。今日の世界では、米中、あるいは欧州とロシアの間で政治的な摩擦や緊張が高まっているが、デカップリングはほとんど発生していないとする見方が多い。その一方で、新型コロナの感染拡大は、米中デカップリングの「予行演習」になったといわれるほど世界経済を分断している。こうした分断が各国にどのような影響を与えるのか、そして新型コロナ後にどうなるのか、その行方に注目したい。

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