男女の違いにより発生する社会的・文化的な格差を「ジェンダーギャップ」という。日本のジェンダーギャップは先進国中最低、アジアの中でも中国や韓国に大きく差をつけられている。今回はジェンダーギャップをテーマとする過去記事を振り返る。

日本の「ジェンダーギャップ」指数の順位は156カ国中120位

 ジェンダーギャップとは性別によって発生する格差のことだ。身体的・生物学的な差ではなく、男女の「社会的・文化的な格差」を指す。世界経済フォーラムが毎年公表する「ジェンダーギャップ指数」によると日本のジェンダーギャップは先進国で最低レベルとなっている。2021年は156カ国中120位だった。アジア諸国の中でも韓国や中国、ASEAN諸国より低い。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会前会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言もそんな状況の中から、半ば必然として生まれたのかもしれない。この記事ではジェンダーギャップをめぐる最近の記事から、注目すべきトピックを紹介していく。

「日本の男女不平等、原因は昭和のままの管理職の価値観」

 19年に公表されたジェンダーギャップ指数で「121位」とされた日本。前年の110位から大きく順位を下げ、中国や韓国とも大きな差がついた。指標は、経済、政治、教育、健康の分野ごとに出されるが、中でも深刻なのは政治分野の144位だ。

 ジェンダーギャップ指数が低い原因は「昭和的な価値観」にあるとの見方がある。企業の中核となる50~60代は昭和世代で、頭では問題があると分かっていても、改善に向けて行動に移すことができない。女性活躍をもう一段、強力に進めるに当たっての最大のポイントは「管理職のマインドセット」にあるのだ。

「森喜朗氏辞任」問題でさらに厳しくなった政治リーダーの要件

 中高齢男性の価値観がトラブルを引き起こした事例が、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)による女性蔑視発言だ。その後の後継者選びにおける「密室人事」で混乱に拍車をかけたが、女性全般に対する無神経な発言が事の発端になったことは間違いない。

 国際的にも大きな話題となったこの出来事は、日本の政治や社会の分野で「リーダー」になる人の要件や資質を問うことになった。政治リーダーには激変する時代の風を読み、自らバージョンアップを図り続けた不断の努力がこれまで以上に重要になっているのだ。

「おじさん経営」から脱却せよ、4社で社外取のアメージャン教授

 日本に20年以上在住し、これまでに日本企業6社の社外取締役を務めてきたアメリカ人研究者、クリスティーナ ・アメージャン氏。同氏は日本のジェンダー・ダイバーシティー(多様性)への取り組みは「とにかく変化が遅い」と指摘する。多くの人が多様性についての話に共感するものの、それが行動につながらず、何も変わらないというのだ。

 外国人に対するダイバーシティーについては、タレントマネジメントに問題があるとする。1980年代の「おじさん経営」でグローバル競争ができると考えている経営者は、本当に大丈夫かとアメージャン氏は懸念する。

ポピンズ中村紀子会長、「迎合しない女性の登用を」

 ベビーシッターサービスを手がけるポピンズ(東京・渋谷)の創業者で現会長の中村紀子氏は、日本がジェンダーギャップ指数で120位に沈んだことについて「日本は男社会の男性の働き方を女性に求めている」と語る。幹部として登用される女性の多くは男社会に迎合しており、本当の意味で組織に影響力を与えられる人はあまりいないのだという。

東京海上は専門役員「CDIO」設置、若手女性リーダーは半数以上

 女性活躍の場を意識してつくり上げてきた日本企業も存在する。例えば東京海上ホールディングスでは、21年4月に「グループダイバーシティ&インクルージョン総括(CDIO)」と呼ばれる役職を設置し、ジェンダーを含む多様性の推進に力を注いできた。同社ではすでに準リーダー層の半数以上が女性で、今後も「男女の役割をはじめとした固定概念をなくしていく」という。

「性差」の研究がもたらすイノベーションとは

 いわゆるジェンダーキャップとは少し違うが、性差をより深く意識する研究手法が世界で広まりつつある。男女の違いを研究することでイノベーションにつなげる「ジェンダード・イノベーションズ」だ。

 科学技術研究や製品開発をする際、生物学的な性別(sex)や、社会・文化的に構築された性別(gender)を考慮し、より質の高い研究、技術革新を目指す。例えば、シートベルト開発では男性のダミー人形だけで検証され、妊婦が考慮されていなかったため交通事故で胎児が流産するリスクが増大していたという。

  日本でも国の第5次男女共同参画基本計画に「性差の視点を踏まえた研究の促進」という文言が入り、科学技術の方針を定める第6期科学技術・イノベーション基本計画に「ジェンダード・イノベーションズ創出に向け」という文言が入るなど「性差」の研究に向けた意識が高まりつつある。

最後に

 男女の違いが社会的な差別につながるジェンダーギャップ。特に日本は格差が大きく、中でも、政治、経済分野がジェンダーギャップ指数の順位を押し下げている。このため政治や企業における課題の解決が重要になっている。世界に追い付くために思考の切り替えと具体的な行動が求められている。

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