世界恐慌、リーマン・ショック、新型コロナウイルスなどにより、歴史の中で何度も繰り返されている「不景気」。特に日本国内ではバブル崩壊以降「失われた20年」と呼ばれた景気停滞が現在も尾を引いている。今回はこうした不景気にまつわるトピックを、これまで掲載された記事から振り返っていく。

「不景気」は繰り返す

 歴史は繰り返すというが不景気の歴史も例外ではない。過去100年弱の歴史を振り返るだけでも、1930年ごろの世界恐慌、1987年のブラックマンデー、2008年のリーマン・ショックなど、世界中でいくつもの不景気が記録されてきた。そして2020年には新型コロナウイルスの感染拡大により、再び世界規模の不景気が訪れている。

 日本経済も、バブル崩壊以降、失われた20年と呼ばれるほどの不景気(景気停滞)が続いてきた。デフレ解消を目指す「アベノミクス」などの政策も実施されたが、これまでのところ決定的な効果は感じられていない。

 今回の記事では「不景気」をテーマにした過去記事を通して、過去のデフレや2020年に入ってからの(新型コロナに関連する)不景気の事例、現状を紹介していく。

転機は1995年、強い日本型経営が暗転した

 戦後の高度成長期をけん引した「強い日本型経営」。中心となったのは家電メーカーなどの製造業だ。しかし1990年代に入ると状況は一変し、日本は長く続く「不景気」へと突入する。

 背景にあるのはインターネットの普及だ。あらゆる情報と技術がデジタル化され、人件費の安い新興国でも日本の熟練企業と遜色ないものが簡単につくれるようになった。こうした流れの中で生き残るには「もうからない事業からいち早く撤退し、投資を選別する」という柔軟な発想が必要だが、日本型経営、特に年功序列や終身雇用が当たり前だった日本企業にとって、このような方針転換は簡単ではないという。

 長引く不景気から抜け出すには、「経営陣のクビをかけるほどの真剣さで」日本型経営の改革を行うことが必要だ。

危機を逆手に取る

 近年、欧米のメディアでは「Japanization(日本化)」という言葉が頻繁に使われているという。治療不能のデフレに陥った、財政悪化の最先端を走る国として日本が注目されているのだ。日本政府が有効な対策を打てない中、世界は「日本を反面教師に危機から脱するための処方箋を描こうとしている」という。

 こうした危機を乗り越えるカギとして期待されるのが、労働人口の底上げだ。出産や子育てを終えた女性、高齢者、若者の雇用を促進することで、国民全体のGDP(国内総生産)を押し上げることができるという。

 加えて、企業が起こすイノベーションにも大きな期待がかかる。政府がまとめた「経済財政の中長期試算」(2011年当時)によると、2023年度までに「イノベーションが実質2%成長を生み出すけん引力になり得る」というのだ。

 これらの施策で日本が立ち直ることになれば、それはJapanizationへの処方箋として日本の大きな強みになる。

不確実だから先手を打つ

 不景気を乗り越えるため、経営者は「海外展開、新規事業、M&A」など様々なリスクを取ることがある。そして施策が成功した経営者は高い評価を受けている。

 たとえばイノベーションの分野で評価を受けているのは、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長や日本電産の永守重信会長CEOなどだ。

 これらの経営者に共通するのは、「腹をくくって」「先手を打つ」という攻めの姿勢だ。一方で、大多数の日本の経営者には「計算できるリスクであれば、積極的に取りにいく姿勢」が欠けているという。

 危機的状況にある企業を再生するだけでなく、その後も「中長期的に企業を伸ばしていく」ためにリスクを取って先手を打てるかどうか、不景気に立ち向かう経営者の手腕が問われている。

再浮上する1930年代との相似性

 不景気は日本だけの課題ではない。世界的な規模でも、不景気は波のように繰り返しやってきているという。中国の不良債権問題、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ姿勢、サウジアラビアの原油増産、ブラジル大統領の弾劾決議など新興国の政治リスク、英国のEU離脱、「米国第一」を掲げたトランプ前大統領など、景気に大きな影響を与えかねない不安要素は多い。

 こうした動きが、世界恐慌の1930年代に似ているとの指摘がある。1980年代からのグローバリズムが反転し、世界恐慌のような不景気が近づきつつある今、1930年代の「教訓」を学んで生かすことが求められている。

アジア経済、総崩れの足音 米中摩擦が内需にも飛び火

 米国と中国の貿易摩擦は、アジア経済を揺さぶっていた。特に中国への依存度が高いタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンといった国では景気の低迷が大きく、このままでは米国を含む「世界同時不況」の可能性も現実性を帯びてくるという。

野口悠紀雄氏「楽観的な見通しでは、取り返しつかなくなる可能性」

 欧米を中心とする反グローバリズム、米中の貿易摩擦などで疲弊してきた近年の世界経済。そこに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスだ。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏によると、現在の世界は「第2次世界大戦以降、我々が初めて経験する大きな危機」に直面しているという。

 影響はリーマン・ショックよりはるかに大きいと予想する野口氏。「V字回復があり得るという考えは根拠が薄い」としたうえで、「一部の体力のない国家が破綻する可能性がある」「格差は大きく拡大する」と述べて楽観的な姿勢を戒めている。

星野リゾート、4分の3の施設が前年並みに 「小さな旅」が奏功

 とはいえ、個々の企業レベルでは明るい話題もある。新型コロナの影響で深刻なダメージを受けた観光業界の中でも、一部の企業で回復の兆しが見られているのだ。

 多くの施設を運営する「星野リゾート」は2020年4月、5月に売り上げが大きく低迷したものの、6月以降は4分の3の施設で需要が戻り始め、8月には前年同月と同じレベルにまで回復したという。

 回復の秘密について、代表の星野佳路氏は「地元客に小さな旅を楽しんでもらうマイクロツーリズムを提唱して、真剣に取り組んだ」ためと語る。

 施設の大きさやサービスの内容、魅力がそれぞれ異なる中で、どのようにマイクロツーリズムを展開するかは「現地スタッフに考えてもらう」ことが必要だという。星野リゾートではコロナ以前からそのような取り組みを続けており、それがコロナ禍で奏功した形だ。

最後に

 1930年代の再来ともいわれる2010年代の不景気と、それに輪をかけた新型コロナショック。日本ではバブル崩壊以降の不景気から脱却できず、それを反面教師としようとした欧米も、反グローバリズムやコロナの影響で景気が低迷する。

 コロナ後の経済回復がいまだに見通せない状況の中で、各国政府はもちろん、企業単位での取り組みがどのように奏功していくか注目していきたい。

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