2019年に設立された仮想通貨交換会社、FTXトレーディング。豊富な金融商品を扱う大手交換会社として注目を集めたが、22年11月に破綻した。今回はFTXの破綻が暗号資産(仮想通貨)業界に与えている影響と、その背景について過去記事から紹介する。

突然の破綻に追い込まれた「FTX」

 FTXとは、バハマに本社を置く仮想通貨の交換会社のこと。2019年にサム・バンクマン-フリードによって創設されたが、22年11月に経営破綻した。

 FTXの特徴は、豊富な金融商品を取り扱っていることだ。日本の交換会社では現物取引またはレバレッジ取引でしか仮想通貨を取り扱えないが、FTXはデリバティブ取引の1つである先物取引や株式トークンの取引にも対応していた。

 FTXの破綻は、暗号資産関連のニュースサイト「コインデスク」による報道がきっかけとされている。報道の内容はFTXの財務健全性を疑問視するもので、これが取り付け騒ぎに発展した。報道からわずか10日あまりで破綻したFTXだが、その直後にハッキングにより数億ドル(数百億円)もの資産が不正に引き出されるなど混乱が続いた。

 この記事ではFTXが取り扱った仮想通貨に関する話題と、FTX破綻の背景やその影響についてこれまでの記事から振り返ってみる。

メッシの契約金の一部にトークン スポーツ界で普及する暗号資産

 仮想通貨の利用は、近年急速に加速している。21年にスペイン1部リーグのFCバルセロナからフランス1部リーグのパリ・サンジェルマンへ移籍したサッカー界のスター、リオネル・メッシ選手の年俸の一部が「ファントークン(fan token)」と呼ばれる仮想通貨で支払われたという。

メルカリのアプリ、ビットコインを買える機能は両刃の剣

 日本でも仮想通貨取引への関心が高まっている。こうしたニーズに対応して、メルカリは23年春より「フリマアプリ内で仮想通貨を購入できる機能」を追加すると発表した。まずは仮想通貨の中でも特に知名度が高い、ビットコインの取り扱いから始める予定だ。

「サイバー戦争でウクライナは必ず勝つ」戦時下のデジタル変革大臣 独占取材

 仮想通貨はウクライナ危機でも注目を集めている。ウクライナ政府は「ウクライナ軍の差し迫ったニーズに対応するため」と、暗号資産寄付サイトを立ち上げ、数日間で6000万ドル以上の調達に成功した。これらの仮想通貨は、防弾チョッキやヘルメットなどの装備品や、医薬品の購入に充てられているという。

仮想通貨業者FTXが経営破綻、“感染”という倒産ドミノは広がるか

 仮想通貨の重要性が増すほど仮想通貨交換業者の影響力も大きくなる。FTXの破綻が市場に与える影響も少なくない。業界内では「FTX破綻の影響をゼロにする手立てはない」という声もある。実際、22年11月2日の時点で3800円程度だったFTT(FTXが発行するトークン)は、破綻から間もない11月16日時点で220円前後まで急落した。

FTX破綻の根底はマジカル思考

 FTX破綻の背景にあるのは、人間が持つ「矛盾に目をつむる傾向」だという。暗号資産の仕組みに関するサイバー空間の働きは多くの人にとって理解が難しいが、それに「神秘的な説明」を付けて無理やり納得してきた結果の1つがFTXの破綻だという。

ユートピアの別断面、身構える番人たち 後追いの制度整備 成長産業を育めるか

 FTXの破綻は「Web3」の発展にも悪影響を与えそうだ。日本は国家の成長戦略としてWeb3ビジネスを推進しているが、乱高下する仮想通貨はビジネスに使いにくく、Web3ビジネスへの本格的な投資も進んでいない。

最後に

 スポーツ選手の年俸から軍備調達の資金まで、仮想通貨はさまざまな場面で活用されている。しかしFTX破綻で注目されたように、仮想通貨には不可解で不安定な側面もある。今後は日本でも、フリマアプリで仮想通貨を手軽に購入できるようになるという。最先端の技術をどのように活用していくべきか、またリスクにどのように備えるべきか、考えていく必要がある。

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