AUKUS(オーカス)は、2021年9月にオーストラリア(Australia)、英国(United Kingdom)、米国(United States)の3カ国によって発足合意に至った軍事・安全保障上の同盟の枠組みである。太平洋を中心とする海域の軍事的主導権を握る対中国戦略の枠組みともされる。本記事では、AUKUS創設の背景にある中国の脅威や、賛同する日本の立場などについて過去記事から考察していく。
中国を念頭に置いた軍事パートナーシップ「AUKUS」

AUKUSとは、オーストラリア(Australia)、英国(United Kingdom)、米国(United States)の3カ国による軍事パートナーシップのこと。インド太平洋地域で安全保障上の脅威を増す中国を念頭に置き、「オーストラリアへの原子力潜水艦配備」や「安全保障に関するサイバーテクノロジーの強化」を主な目的としている。
中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国だ。同国が提唱する「一帯一路」構想は南太平洋もカバーし、2018年と19年にはヴィクトリア州が参画協定を結ぶなど経済面での両国のつながりは深い。しかし中国による海洋進出の動きが強まるにつれて両国の関係は悪化し、21年にはオーストラリア政府がヴィクトリア州と中国による協定を破棄するなど緊張関係が高まっている。
AUKUSに対してインド太平洋の国々からはさまざまな反応があるが、同じように中国の脅威にさらされる日本はAUKUSへの支持を表明する。
この記事ではAUKUSの創設や中国の脅威、それらの日本との関係に関する過去記事を紹介していく。
AUKUSはファイブアイズのアジア支店、英米系の独善が招いた不信
21年9月15日に設置が表明されたAUKUS。海洋進出を加速する中国への重要な対抗策の1つと期待される一方、欧州やアジア諸国の一部は説明不足を理由にAUKUSへの不信を隠さない。特に潜水艦開発の受注を破棄されたフランスは、米国やオーストラリアの態度を「裏切り行為だ」と厳しく非難している。
「一帯一路」構想にみる「中国第一主義」
そもそもAUKUS設置の発端となったのは、「一帯一路」を筆頭に中国が進める覇権構想への警戒感だ。一帯一路はアジアから欧州、アフリカまでカバーする広域経済圏で、ユーラシア大陸に「中華経済圏」を作る狙いがあるとされる。
米中開戦危機はいつ訪れるか
中国と対立を強める米国。専門家の間からは「米国と中国の開戦危機が近い」との声も聞かれるが、米海軍が保有する艦艇の数はすでに中国より少なく、今後さらに減少していく。AUKUSによりオーストラリアに原子力潜水艦が配備されるのも、40年以降になる見込みだ。
ブレマー氏「バイデン氏は外交でミス、中国は国内問題で多忙。日本に好機」
AUKUSの設立にともない、オーストラリアが潜水艦を導入する契約相手を米英に替えたことで激しく反発するフランス。ユーラシアグループ社長のイアン・ブレマー氏は「バイデン氏の外交ミス」と指摘する。しかしながら、AUKUSの対抗相手となる中国も恒大集団の経営危機やテック企業の部品不足など国内問題に奔走しており、米国との冷戦を加速させる余裕はないことも現実だ。
日米首脳会談、「あらゆる選択肢」と「拡大抑止」が示す本気の同盟
AUKUSの枠組みには加わっていない日本も、中国の脅威を感じている点で米国やオーストラリアと立場を同じくする。22年5月23日に東京で行われた日米首脳会談では「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」という共同声明が発表されるなど、日米間の軍事面での関係は今後さらに強化されていくとみられる。
日本が中国を経済安全保障の「敵性国」とすることが簡単でない理由
一方で日本が中国を「敵性国」と割り切ってしまうことは難しい。地球温暖化対策に不可欠なレアアースなどの鉱物資源は中国が世界的なシェアを占めており、50年のカーボンニュートラルを公約に掲げる日本にとっても、中国は重要なパートナーとなるためだ。
最後に
中国の軍事的脅威への対抗策として設立されたAUKUS。念頭に置かれた中国はもちろん、根回しもないままオーストラリアとの契約を破棄されたフランスも反発するなど、思わぬ混乱の中でのスタートとなった。同じように中国の脅威に直面する日本としても、今後のAUKUSの行方に注目すべきだろう。
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