ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味している。もともと医療や福祉の分野で使われてきた言葉だが、今、ビジネスの世界でもウェルビーイングへの注目が高まっている。今回は過去記事の中から、ウェルビーイングについての注目トピックを振り返る。
スタートアップから大手企業まで注目する「ウェルビーイング」

身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する「ウェルビーイング(well-being)」。もともと世界保健機関(WHO)憲章の前文にうたわれている言葉で、従来は医療や看護、社会福祉の現場で特に用いられてきた言葉だ。
今、ウェルビーイングはビジネスの世界でも注目を集めている。多様性を認めるダイバーシティ、仕事とプライベートを両立させるワークライフバランス、「すべての人に健康と福祉を」というSDGsの考え方を実現していく上で、ウェルビーイングは重要な要素になるという。
すでにさまざまな企業がウェルビーイングに注目し、中にはマーケティングに活用しているケースも見られる。この記事ではそうした経営者たちの考え方や識者による提言を過去記事から紹介していく。
「生き生き働ける」最先端企業は一体、何をしているのか
スタートアップから大手企業まで、経営者たちが一堂に会する「Industry Co-Creation(ICC)サミット」。2019年に開催された「ICCサミット FUKUOKA 2019」では、ウェルビーイングにいち早く取り組み、結果を出してきた先端企業の経営陣がその内容について語った。
そうした企業の代表例が、社員のウェルビーイングに取り組む「チーフ・ピープル・オフィサー(CPO)」という役員を置く「楽天」や「LIFULL」だ。
ウェルビーイングを実現するためには、その効果を適切に評価し運営しなければいけない。そこで、どんな体験がウェルビーイングを高めるのに有効なのか、10項目の体験を掲げて測定している。国際標準として測るためにも、「幸せを感じるか」ではなく「どんな体験が有効なのか」を設定するのだという。
社員一人ひとりを「幸せにする」組織はどうつくる?
「日本一働きたい会社」に選出されたLIFULL、そして社員の健康や生活をサポートするさまざまな施策を実施している楽天。両社ともウェルビーイングの面で先進的な企業だが、それでも「さらに上を求め続けるから、いつまでたっても満足できない」という状況に陥ってしまうという。
同じくウェルビーイングに取り組むネットプロテクションズの柴田紳社長は「ルーティンワークをできるだけ減らした上で配置にゆとりを持たせ、社員の各人が50%の力を出せば業務は回るようにしている」と語る。残りの50%でやりたい仕事を自由にできるようにして、社員に満足できる仕事をしてもらうためだ。
また、LIFULL CPOの羽田幸広氏は社員に自由を提供する前に社是である「利他主義」という価値観を共有していると言う。「ユーザーやクライアントのために貢献することを第一として、貢献につながる自己実現を常に目標にしてね」ということをいつも伝えており、社内でウェルビーイングを実践しながらも共通した価値提供、その指針にギャップが生じないようにしているそうだ。
日本のデジタル化のカギは「ウェルビーイング(幸福)」にあり
東欧のエストニアでは、国が各種行政サービスのデジタル化を通してウェルビーイングの実現を目指しているという。日本でも企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化により、社員がこれまで紙や対面でのやり取りに費やしていた時間を「自分の好きなことや、本来得たい価値のために使える」ようになることで、それぞれのウェルビーイングが実現していくと期待されている。
本記事の対談の最後には、デジタル変革に際して、一人ひとりがデジタルツールを使うことの重要性が主張されている。「ツールは会社や行政が提供してくれる。個人はツールをいかに使うかが大事。中国ではデジタル化が進んでいるが、個人が新しいアプリやサービスを使っている。日本でも個人がデジタル化した生活を自ら実践すれば、日本全体もデジタル化していく」という。
幸福度マーケティングで実現する「企業変革」
食品、化粧品、日用品、住宅、自動車、製薬、小売り、テクノロジーなど、あらゆる業種の先進企業がウェルビーイングに注目している。それらの企業の中には、自社のパーパス(存在意義)や経営理念、経営戦略としてウェルビーイングを標榜するところも少なくない。
ウェルビーイングに代表される社会的意義と、企業の経済的利益は決して二律背反の関係ではない。両者が両輪となることで、それぞれの価値が最大化されるのだという。
「幸せ、ウェルビーイング」というパーパスを中心としたブランディングで重要なのは、「幸せ、ウェルビーイング」に掛け算すべき概念を言葉で定義することだ。例えば、サンリオエンターテイメントでは、「Kawaii(かわいい)」がそれに該当する。kawaiiの研究では、「性別年代を問わず、身近な人にKawaii感情を持つ人の幸福度は高い傾向にある」といったことが見え始めているという。
最後に
個人が「肉体的、精神的、社会的に良好な状態」にあることを意味するウェルビーイング。ウェルビーイングは現代社会のあらゆる面で注目を集めているが、それは企業の活動においても例外ではない。社員一人ひとりのウェルビーイングをどのように実現するか、それを企業の利益とどのようにマッチングさせていくか。これからの各社の取り組みに注目していきたい。
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