アジア・太平洋地域の15カ国が参加し、物品貿易や各種貿易ルールの円滑化を目指すRCEP(東アジアの地域的な包括的経済連携)。人口、GDP(国内総生産)、貿易額で世界全体の約3割を占める巨大市場だけに、参加国はもちろん世界からの注目度も高い。今回はRCEPに関するこれまでの記事を振り返ってみる。

世界の約3割を占める巨大市場をまとめ上げる「RCEP」

 RCEPの対象は工業製品・農林水産品等の物品貿易に加え、税関手続きや検疫措置、投資、知的財産、電子商取引、政府調達、紛争解決など貿易分野の各種ルールだ。

 RCEPはASEAN10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドによって構成される。合計すると世界の人口(22.7億人)、GDP(25.8兆ドル)、貿易総額(5.5兆ドル)と世界全体の約3割を占める巨大市場だ。

 この記事ではRCEPをテーマにした過去記事から注目のトピックを紹介していく。

アセアン、米中摩擦で高まるRCEPへの期待

 ASEAN域内でRCEPへの期待と注目が高まっている。背景にあるのは米中摩擦だ。ASEAN諸国はこれまで「中間財を中国に輸出し、同国で組み立てて米国に輸出する」というサプライチェーンを構築してきたが、米中の対立がこの枠組みを機能不全にしている。

 交渉に参加する他の国からは「中国から安価な製品が大量に流れ込むことへの懸念」の声が上がった。

RCEP妥結先送り、離脱が濃厚な「問題児」インドの事情

 2019年11月4日、RCEPに向けた首脳会合がバンコクで開催された。この会合ではRCEPの妥結が期待されていたものの、結果として妥結は持ち越された。

 その原因をつくったのは交渉参加国のインドだ。国内産業の圧迫と貿易赤字の拡大を懸念するインドにとって、RCEPによって中国から安価な製品が流入することは大きな脅威になる。

RCEP署名もインドはそっぽ、米中に印中対立、コロナ禍が翻弄

 20年11月15日、インドを除く15カ国によってRCEPが締結された。これによって世界GDPの約3割を占める巨大市場が誕生したが、インドと中国の対立はRCEPの今後にしこりを残すことになった。

 ASEANをはじめとする15カ国は引き続きインドのRCEP参加を促す考えだが、中印対立、米印対立、そして新型コロナウイルス禍による市場の混乱に警戒感を強めるインドがRCEPに参加する可能性は低いとみられている。

RCEPは3軍、日本を「仮想米国」とした中国の思惑

 世界のGDPの約3割という巨大市場を対象とするRCEPだが、専門家によると「過大評価は禁物」だという。明星大学教授で元経済産業省の細川昌彦氏は、「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が1軍だとしたら、RCEPは3軍レベルの貿易自由化」と指摘する。

 たとえばTPPの関税撤廃率は99%だが、RCEPは参加国全体で91%。日本からの輸入品に対する関税撤廃のレベルも中国は86%、韓国は83%。中国が即時撤廃する品目にも、数%の低関税品や関税を撤廃しても影響の少ないものが選ばれており、RCEPによる恩恵は限定的だという。

RCEPとTPPをめぐり日米中印がはじく皮算用

 TPPは米国が主導した「中国外し」の経済圏、RCEPは中国が主導する「米国抜き」の経済圏という見方がある。とはいえRCEPには「経済協力の枠組み」という側面があり、カンボジアやラオス、ミャンマーといった経済成長が進んでいない国を支援する役割がある。

 日本にとってもRCEPは「中韓との自由貿易協定(FTA)、ルールの共通化」というメリットがあるが、RCEPの政治的利用を目指す中国の思惑やインドの不参加など、懸念材料もあるという。

最後に

 ASEANや中国などアジア・太平洋地域の15カ国が参加した貿易協定「RCEP」。世界のGDPの約3割を占める巨大市場の誕生は、参加国である日本にとっても大きなチャンスとなる。参加が期待されていたインドの交渉離脱、経済協定の政治利用を狙う中国の思惑など不安要素もあるものの、RCEPがアジア太平洋地域の経済をどのように活性化していくか、期待しながら見守っていきたい。

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