団塊の世代を含め、日本人の2割近くが75歳以上になることで発生する「2025年問題」。社会保障制度の維持はもちろん、減少する現役世代の負担が重くなることで日本経済にも深刻な影響を及ぼすと考えられている。この記事では2025年問題をテーマに、これまでの記事から注目すべきポイントを紹介していく。

日本人の約2割が後期高齢者になる「2025年問題」

 「2025年問題」とは、いわゆる団塊の世代のすべてが75歳以上となる2025年以降に発生すると予想される、さまざまな問題を指す言葉だ。

 団塊の世代を含む全人口の約18%が後期高齢者という超高齢化社会では、年金や医療、福祉などを合わせた社会保障給付費が一気に増大し、社会福祉制度の維持が困難になると予想される。また高齢化と同時に少子化も進むため、現役世代の負担は増える一方だ。

 労働力の減少、認知症患者の増加、老々介護、孤独死、孤立死といった問題が増えることで社会から活気が失われ、日本経済や各地域の都市計画に与える影響も計り知れない。

 今回はこれまでに掲載した2025年問題に関する記事を通し、現代日本が抱える課題と将来の展望について考える。

「忖度(そんたく)」する社会がキレる老人を生む

 理不尽な理屈を振りかざし、保育園・幼稚園や小児科医院といった公共性の高い施設の設置に反対する老人が増えているという。「自分たちを無視するな」という高齢者たちの声に、自治体側も腹をくくって対応できないのが現状だ。

 こうした「老害」ともいえるトラブルや既得権を振りかざす振る舞いだけでなく、高齢者が「窃盗犯」や「粗暴犯」になるケースも少なくない。少子高齢化の進展、特に2025年問題が社会に与える影響は深刻さを増している。

「老人を嫌うのは老人自身なんです」

 2007年刊行の著書『暴走老人!』で注目を集めた芥川賞作家の藤原智美氏。藤原氏によると、キレる老人問題の背景には高齢者の身体的な衰えに加え「思考力やメンタルの部分」の衰えもあるという。メンタルの老化によってストレスへの耐性や克服する力が弱くなったにもかかわらず、それを自覚できないことがコミュニケーション不全につながり、トラブルへと発展するのだ。

 『暴走老人!』刊行から10年が経過し、状況はより深刻になっていると語る藤原氏。事態の改善には「国の抜本的な社会設計」が必要だという。

コロナで孤立死急増、介護度の悪化も

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出を自粛したり、デイサービスなどの施設利用を控えたりする人が増えた結果、介護が必要になったり、介護度が悪化したりする事例が増えている。

 しかもこうした傾向は東京をはじめとする都市部より、人と人とのつながりが深いと思われがちな「地方」ほど多いという。認知症やうつなどの問題が増え、そうした高齢者を支える施設の職員などもストレスがたまっているという。

カギは中古住宅の流通改革

 横浜市立大学の齊藤広子教授によると、2025年問題を解決するカギの一つが「高齢期を心豊かに、安心して暮らせる環境づくり」だという。

 その際のポイントとなるのは、「年を重ねて高度な医療や介護が必要になった場合でも、同じ場所もしくは同じ地域社会の中で暮らし続けられること」と「地域住民同士の交流を密にすること」の2点だ。こうした観点から注目されているのがCCRC(継続的ケア付き高齢者コミュニティー)で、たとえば東京都日野市に整備された「ゆいま~る多摩平の森」はそのモデルケースになるという。

団塊より団塊ジュニアが深刻

 2025年問題よりもさらに深刻な「2040年問題」を指摘する声もある。団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年度には社会保障給付費の対GDP(国内総生産)比率が推計23.8~24.1%に急増(2025年度時点では推計21.7~21.8%)するうえ、65歳以上の高齢者と15歳未満の従属人口に対して15~64歳の現役人口のバランスが大きく崩れて、現役世代1人当たりの負担はますます増大するためだ。加えて、高齢者人口の増加により年金額もさらに抑制される。

 2040年問題に備えるには、現役期間の延長やシニアの働き方といった社会構造の変革が必要だ。

最後に

 日本人の2割近くが75歳以上となる2025年。これに伴って発生する社会保障費の現役世代の負担増や「キレる老人」によるトラブルなど「2025年問題」への懸念は高まる一方だ。2025年問題や、その先にある「2040年問題」に備えるには社会構造の変革が欠かせない。高齢化社会に対応した住環境や働き方をどのように整備していくべきか、官民を挙げて考えていきたい。

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