グローバル化とデジタル化が進む中でIT業界を中心にオフショア(海外)での開発が加速している。オフショアを積極的に活用していくことで競争力を高め、巨大化している企業も出てきた。本記事では、オフショアの取り組みや事例を過去記事を通して紹介していく。

オフショアとは

 オフショアとは、直訳すると「沖合」「海外」という意味だが、ビジネスシーンでは途上国や新興国での事業や取り組みのことを指す。例えば、フィリピンなどに工場やコールセンターを作り、国内よりも安い設備費や人件費でビジネスを推進することが例として挙げられる。

 オフショアを実施することで、従来までよりもコストを抑えて事業の利益率を改善できるというメリットがある。この他にも「オフショア開発」のような、海外の新興国で人件費が安く、スキルの高いエンジニアを採用した開発を進めることもある。

 では、オフショアの事例にはどういったものがあるのか。

ベトナム人エンジニアを戦力に、企業のDX一手に支える

 「ベトナム人エンジニアの優秀さに驚いた。国としてもIT関連の産業育成に力を入れていて、日本とは違ってエンジニアが花形職業になっている。国の中でトップレベルの理系人材がITエンジニアを目指し、日本語を学んで日本で働きたいと言ってくれる」とサンアスタリスクの小林泰平CEO(最高経営責任者)は語る。

 ベトナムは技術力の高さから日本のIT関連企業のオフショア拠点として人気がある。小林氏はフランジア(現サンアスタリスク)のベトナム法人立ち上げに加わることになり、現地に駐在。ベトナムの文化や人の勤勉さに触れ、可能性を確信した。最近は、スタートアップに加え大企業からの問い合わせも増えており、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める三菱地所、伊藤忠商事などからの注文も入るようになった。

ルワンダに開発作業を委託

 「アフリカで開発したと聞いたら、お客さんはびっくりするでしょうね」。ITベンチャー、レックスバート・コミュニケーションズ(東京・千代田)の田中秀和社長は、2013年3月に顧客企業に納入した社内研修ソフトについて得意げにこう話す。

 タブレットで動作するこのソフト、実は開発作業の多くをルワンダの企業に委託した。委託先は国家戦略が生んだITベンチャーの1社。手始めに自社用ソフトの開発作業の一部を同社に委託したところ、想像以上の品質で仕上がってきた。「このコストでこれだけの仕事ができるのなら、オフショア開発の拠点として面白いのではないか」。そう直感した田中社長は、顧客企業から受託した開発案件についても、ルワンダ企業を活用するようになる。

若年層はオフショア・ファンド投資に走る

 ネットオークションで生計を立てている大阪府在住の西谷敦氏(仮名、29歳)は、国民年金の代わりにオフショア・ファンドへの投資を通じた「自分年金」作りに力を入れている。投資商品の中身は複数ファンドに分散投資する「ファンド・オブ・ファンズ」に近い。運用期間は25年。クレジット払いの手数料などを含めれば数%のコストが毎年かかるうえ、満期前に解約しようとすれば高額の手数料が必要になる。日本の投資信託など、商品によってはより低コストのものも多くあるので、単純に比較すれば、西谷氏が虎の子を投じるオフショア商品の「商品力」が高いとは言えない。それでも、日本に漠たる不安を抱く若年層はオフショア投資に走る。

2016年、情報漏洩が続出の理由

 IT業界はコスト低減などのためシステム開発を海外委託する、オフショア開発を増やしてきた。だが、「リーマン・ショック以降伸び悩んでいる」と日本ニアショア開発推進機構の小林亮介代表理事は語る。「オフショアを使わないでほしい」、みずほ銀行のシステム開発に携わるIT企業の担当者は、みずほからこう要請された。

 実は、銀行業界の一部ではオフショアへの拒否反応が広がっている。発端は、ある邦銀がインドのエンジニアを活用し安価に基幹システムを構築、その後金融機関としての信用を揺るがすようなトラブルが相次いだことだ。多くの銀行が、国の経済を支える金融の基幹部分のシステム構築を新興企業に任せることのリスクを痛感した。

企業と個別契約で税金を減免 タックスヘイブンの新事実

 国との契約を見直すことで税金が安くなることをご存じだろうか。といっても、誰もが契約できるわけではない。タックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる国々が、大企業との間で特別な契約を結んでいる。大企業の統括会社を自国内に置いてもらう代わりに、この統括会社にかかる税金を安くすることを認めているのだ。それらの国々の代表的な特徴は「低い法人税率」「緩やかな会社法の規制」「消極的な情報開示」であり、これらの国とのオフショア取引により税の負担軽減や回避が行われている。

GAFAの課税逃れを追及

 欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー委員が、GAFA(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム)の課税逃れを追及している。市場を席巻している国で納税せず、税率の低い国で一括して納税処理をしているのは不公平と判断しているからだ。「巨大企業は、資本金や市場へのアクセス、スキルを持った人材の獲得など様々な面で優位に立っています。そんな彼らが社会とビジネスの場に貢献していないとしたら、いかがでしょうか。デジタル課税について、私はあらゆる手段の中で経済協力開発機構(OECD)の協定がベストだと考えています」と同氏は語った。

最後に

 オフショアについて、各方面からトピックスを拾い出して紹介してきた。幅広い業界で起きているDXが加速してくると、オフショアか、オンショア、ニアショアかという区別自体が明確でなくなってくるだろう。また、オフショア化は情報漏洩や課税逃れなどの課題を生じさせていることも忘れてはならない。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。