インターンシップは、学生が企業や組織で働き、その業務内容や労働環境を理解・体験するものだ。そのインターンシップが変化し始めている。その変化が就職活動にどのような影響を与えているのかを探るとともに、新しい形のインターンシップを模索する企業の取り組みを紹介する。

採用選考に直結するインターンシップが増えている

 インターンシップは、学生が企業や組織で働き、その業務内容や労働環境を理解・体験するものだ。学生にとっては、その企業や職種が自分に合っているかどうか、適性を知る場として非常に重要だ。

 日本ではインターンシップはあくまで「職業体験の場」であり、これまで採用選考に直結することはあまりなかった。しかし最近はインターンシップが選考と直結するケースが増えている。企業にとっては、早くから学生を囲い込める一方、学生にとっては学業に取り組む妨げになる恐れもある。

止まらぬ早期化、迫る「大学4年間ずっと就活」時代

 通年採用の拡大に伴い、一部の企業では、大学1~2年生の段階から学生に接触する動きがみられる。都内のIT企業採用担当者は「人材の奪い合いはさらにひどくなるだろう。1年生や2年生のときから、認知度向上のイベントなどで接触を図っていく必要はあると思う」と話す。これが意味することは、“4年制就活”時代が訪れる可能性だ。学生たちは学業との両立をどう図っていけばよいのだろうか。

 2019年6月、東京ビッグサイトで開かれた大学3年生向けインターンシップの合同説明会に1万人以上の学生が訪れた。多くは私服姿だったが、すでにリクルートスーツを着込んで“臨戦態勢”の学生もちらほら。企業側の担当者も「この時期からリクルートスーツを着ている学生がこれほど多いのは初めて」と驚きを隠せない。

 学生がインターンシップの説明会に本気で臨むのも無理はない。19年春に入社した同年卒の学生を対象にリクルートキャリアが実施した調査では「参加中に内定の可能性があることを知らされた」は15.9%、「採用直結が明示されていた」は10.7%となっている。つまり、実に4分の1以上のインターンにとって、インターンシップが採用に大きく関わるものだったことになる。選考と関係なく、純粋に企業の認知度向上や業界研究に資するインターンシップも存在するが、採用選考は大学3年の夏から始まっていると言っても過言ではない状況だ。

就活「超・早期化」 大学はレジャーランドどころか“職安”に

 「就活の早期化」は、着実に進んでいる。20年には、経団連が主導して定めていた広報活動や面接の解禁時期が名実ともに消滅した。経団連に代わり政府は21~23年卒について「3月エントリー解禁、6月選考解禁」の維持を決めたが、既に採用の現場は「無法地帯」と化している。

 そんな中、インターンシップは、もはや職業体験なのか、選考なのかが分からない状況にある。今は、ベンチャーだけでなく大手企業でも選考の色が強くなっているとの声が出ており、インターンシップは実質的な本選考に変容しつつある。

 夏季インターンシップが一段落した20年10月、マイナビが約5200人の学生から回答を得た調査では、学生の93.8%が平均で5.9社のインターンシップに応募経験があると回答した。また、インターンシップ参加後には23.1%の学生が「インターンシップ参加者限定の採用選考の案内を受けた」という。インターンシップが事実上、採用に直結している証しと言えるだろう。

「ジョブ型」で新卒採用はどう変わる? KDDIの場合

 「ジョブ型雇用」(あらかじめ仕事の内容や報酬などを明確にした上で会社と個人が契約する雇用形態)の広がりも、インターンシップのあり方に影響をもたらしそうだ。

 KDDIは21年卒で採用予定の270人のうち、120人をジョブ型で採用する。22年卒は約5割に増やすなど、ジョブ型の割合を徐々に高めていく方針だ。ジョブ型ではない従来型の枠は今後も一定数残すものの、インターンシップなどを通じて判断したスキルに応じて報酬を設定する予定で、2倍程度の給与の差が生まれる可能性もあるという。

 また、KDDIは従来から実施してきた短期インターンシップに加え、20年秋から、22年卒を主な対象とした長期インターンシップを始める。インターンシップに関わる現場の社員が採用活動にも関わるようにして、インターンシップから採用、配属までが一直線につながるようになるという。学生はインターンシップに応募する段階から就職時の職務を意識することになるのだ。

ダイキン、東大生向け「世界一周インターン」の狙い

 一方で、インターンシップの多様化も進んでいる。空調大手のダイキン工業は、19年に「世界一周インターンシップ」の報告会を開いた。インターンシップを8月中旬に3週間をかけて実施。米国や中国、ベルギーなどダイキンの主な海外拠点を回り、会社が与えた課題をこなした。対象は東京大学の学生で、240人の応募者の中から筆記試験、面接などを経て選ばれた10人が参加した。ちなみに、これとは別に40人の東大生も1つの海外拠点に滞在する形で、同じようなインターンシップを経験した。

 会社が求めたのは、新製品やサービスの提案だ。ダイキンの役員や人事担当者向けの報告会では、空調機器が部屋を見渡せる高い場所に設置される点を生かして、カメラを備えた「見守り空調」を提案した学生の姿も。これがあれば、「孤独死を防ぐことができる」とその意義を説明してみせた。

 「東大生の感性の豊かさやプレゼンテーション能力の高さを感じた」。学生たちの報告を聞いたダイキンの人事担当者はこう手ごたえを語った。だが、ダイキンの峯野義博専務執行役員・グローバル戦略本部長は学生に「ダイキンには入社しなくてもよいです。世界で活躍する人材になってください」とエールを送る“太っ腹ぶり”を見せた。

 「できれば入社してほしい」(ダイキンの役員)のが本音だが、インターンは就業体験の場。採用と直結するものではないというのがダイキンの立場だ。

日立はインターンもオンラインで、新型コロナが生んだ新潮流

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、インターンシップをオンラインで実施する企業も出てきた。たとえば、日立製作所は20年夏に実施した理系学生向けのインターンシップを全面的にオンラインに切り替えた。

 同社のインターンシップは、全国の研究開発拠点や日立ハイテクなどの子会社が主導している。原子力関連やモビリティサービスの研究、半導体検査向けの画像処理・認識技術の開発など数十種類にもわたるプログラムを用意するのが特徴だ。従来は学生が各地の職場に通う形で実施し、夏と冬の2回、計500~600人の学生が参加していた。

 しかし、オンラインでは、対面で手取り足取り教えたり、実際に現場を見てもらったりするのが難しい。一方、移動時間が不要なので、アルバイトなどを抱える学生が参加しやすくなった。住んでいるところから離れた拠点でのインターンにも参加しやすくなり、応募人数は例年より増えたという。

最後に

 通年採用やジョブ型雇用の広がり、そしてコロナ禍などの影響により、インターンシップのあり方は変化し、多様化している。インターンシップが採用と直結するようになる一方、そしてこれまでにない形のものや、オンライン化なども登場している。2021年以降、インターンシップはさらにどのように変化するのか。

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