企業間で活発化しているアライアンス。同業同士が手を組んで規模の拡大を目指す形がある一方で、全くの異業種間が手を組んで新たな事業価値を生み出そうという動きも活発化している。この記事では、アライアンスを巡る企業の事例を、過去記事を通して紹介していく。

アライアンスとは

 アライアンスとは、グロービス経営大学院のまとめによると、「複数の企業が互いに経済的なメリットを享受するために、緩やかな協力体制を構築すること。1つの企業に統合する必要があるM&Aに比べて、時間・資金をそれほど要することなく進めることができ、思惑が外れた場合の解消も容易にできる点で異なる」とある。その協力体制とは、実際には業務提携や資本提携という形で行われている。航空業界では早くからコードシェア便やマイレージサービスの共有化などを行っており、航空会社同士の業務提携はアライアンスの好例と言える。

東京海上日動とタイムズ24が業務提携

 東京海上日動火災保険は2020年6月下旬、パーク24の事業会社、タイムズ24と業務提携した。同社はコインパーキングの国内最大手で、近年は駐車場シェアサービス「B」にも注力している。シェアサービスは、空き駐車場を持つ個人や法人がサービスに登録、ユーザーはネット上で駐車場を予約し利用する。自動車保険を扱う損害保険会社には免許返納などで加入者が車を手放した際に、真っ先に情報が入ってくる。車を手放すということは、その車を駐車していたスペースが空くということだ。もし車を手放した加入者が駐車場を自ら所有していれば、シェアサービスに登録してもらえる可能性も高い。

トヨタとNTTが資本提携、見据える「6G」時代の街づくり

 トヨタ自動車とNTTは2020年3月24日、それぞれ約2000億円を出資して株式を持ち合う資本提携を決めたと発表した。両社が持つ最先端の技術・ノウハウを持ち寄り、世界的に激しい競争が続く自動運転技術の開発強化や、ITを活用した街づくり「スマートシティー」の早期実用化につなげる狙い。NTTはIoT(モノのインターネット)をはじめデジタル技術を活用し、ビルのエネルギー管理の最適化や災害に強い安心・安全な街づくりなどを成長の柱にしていく方針を打ち出している。自動車業界を舞台とした国内通信各社の陣取り合戦が激しさを増している中で、今回はNTTの包括的な取り組みがトヨタを射止めたもようだ。

造船1位と2位が提携

競合と手を組み、生き残りを図ろうとしている
●日本の造船企業の協力図

 同業による提携の事例だ。造船業界では2019年に入り中国や韓国の大手が統合するなど大型再編が続いており、日本でも再編の必要性が叫ばれていた。今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)の提携内容はこうだ。今治造船はJMUが実施する第三者割当増資を引き受け、両社はLNG(液化天然ガス)運搬船を除く商船で営業と設計の共同会社を設立する。詳細は19年度中に締結する予定の最終契約で詰めるが、出資規模はJMUの筆頭株主、JFEホールディングスとIHIのそれぞれの持ち分(45.93%)を超えない範囲となる予定だ。

スシローと神明HDの経営統合「握れなかった」理由

 スシローグローバルホールディングスと元気寿司は2019年6月18日、経営戦略の違いが明確になったため、神明ホールディングス(HD、神戸市)を含めた資本業務提携を解消し、交渉していた経営統合を断念すると発表した。統合を仕掛けたのはコメ卸最大手で非上場の神明HDだ。元気寿司を15年に子会社化していた神明は、17年にスシロー株の32.72%を380億円で取得して持ち分法適用会社にした。

 このころから出資した2社を経営統合させてシェアと経営効率を引き上げるという絵を描いていた。スシローはすしに使うシャリ用に大量のコメが必要になる。神明の持ち分法適用会社になった後も、それまでと同様に全農パールライスからの仕入れを続けていた。神明側は調達先を自社に変更するよう求めたとみられるが、スシローは使うコメが変わると味が変わってしまうという理由で応じなかったようだ。実務面でも気持ちの上でも神明とスシローの距離感が縮まらないうちにスシロー株が上昇を続け、経営統合に向けた前提条件が崩れ始めてしまった。これが統合断念に至った理由だろう。

大手企業がベンチャーと医薬品開発と提携

 事業多角化を進める王子ホールディングス(HD)が2020年11月27日、レクメド(東京都町田市)に出資すると発表した狙いは明快だ。レクメドは木質成分由来の医薬品の開発を手掛けている。パートナーとして創薬のノウハウを獲得すると同時に、自らが持つ木材技術との相乗効果は大きいとみている。医療用医薬品は木材から有効成分を抽出したものが多くある。抗がん剤では中国原産樹木から抽出した成分や、針葉樹の樹皮から抽出した成分で作られたものがある。木質成分の技術を積み重ねてきた王子HDは数年前から医薬品に転用する研究開発に着手。20年4月に100%子会社の王子ファーマを設立し、本格的な事業化に乗り出した。

菅首相の重要政策「地銀再編」は、4つの方策で

 金融機関でも提携していく動きが見られる。菅義偉首相は、主要政策の一つとして地方銀行の改革を掲げている。その再編の4つの方策のうちの一つとして「トランスリージョナルバンク」がある。地域は離れていてもシステム投資や証券、資産運用、信託など業務で連携する機能統合型だ。2012年に千葉、中国、第四銀行が基幹システムの共同化に動き始めた「TSUBASAプロジェクト」が、その後システム開発などにこだわらない連携強化に広がり、伊予、東邦、武蔵野銀行などが加わっている。

社会と共存するための提携

 神奈川県は2020年11月1日、行政サービスのデジタル化やAI活用による効率化を推進するために、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた70人の専門部署を設置した。トップは黒岩祐治知事だが、実質的にデジタル関連政策を統括するのは、2020年8月から県の情報統括責任者(CIO)とデータ統括責任者(CDO)を務める江口清貴氏だ。江口氏は県の職員ではない。LINEの執行役員を務める人物だ。統合相手のヤフーも災害情報の発信で自治体との連携に力を入れている。国内で2000万以上のユーザーを抱える「Yahoo!防災速報」アプリを活用し、自治体が市民に注意喚起や災害時の避難所開設情報などを発信するスキームを用意している。

最後に

 アライアンスには様々な形があることを過去の記事を通して見てきた。経済的なメリットを享受するための企業間の提携は今後もますます増えていく一方で、災害情報を共有していくなど、社会で共存していくための提携も今後増えそうだ。

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