全2750文字

 鹿児島市内にあるJR鹿児島駅。JR九州は19年8月、秋に完成予定だった駅舎の改修工事の延期を余儀なくされた。来年3月の完成に向けて「待ち」の状況が続く。

 山口県では、瀬戸内海の周防大島と本土を結ぶ橋の補修工事が2カ月延びた。滋賀県では、認定こども園の工事が進まず、開園できなかった。愛知県みよし市では、この夏に予定していた学校給食センターの耐震化工事が「入札不調」に終わった。

すべての工事延期は“同一犯”?

 駅も橋も子育て施設も給食センターも、その工事の発注元である自治体や企業を悩ます犯人は同じだ。「高力(こうりき)ボルト不足」。日本全国の建設現場で今、このボルトが足りていない。その不足の背景や構造を掘り下げていくと、ここにも「中小企業の淘汰と消滅」が関わっていることが見えてきた。

愛知県みよし市では、学校給食センターの耐震化工事がボルト不足で延期になった。

 高力ボルトは鉄骨の柱や天井、梁(はり)をつなぐ部材として使われてきた。利点は取り付けが簡単な点。職人不足に悩む溶接の手間を省く効果も期待され、日本の建設現場で広く重宝されてきた経緯がある。

 「ボルト不足」に直面した愛知県みよし市の担当者は「まさかボルトでつまずくとは思ってもいなかった」と話す。予定していた学校給食センターの耐震化工事は、16年から期間を3期に分けて天井を補強する作業だ。無論、過去の2期の工事では何の問題も起きておらず、当然、高力ボルトもあった。

 しかし今回、応札した事業者からの返答は「必要な1000本のボルトを調達できず、工期内での施工ができない」。市が別途、ボルトをかき集めてくることなどできるわけもなく、異例の入札やり直しと工事延期しか道は残されていなかった。

 全国の建設現場での高力ボルトの調達価格は1トン当たり30万円前後。この1年だけでも5万円ほど上昇しているという。納期も、最も長いときで「8カ月待ち」。足元では最悪期は脱したとみられるものの、それでもなお「6カ月待ち」の状況が続く。

 あるメーカーの関係者は「今できる量を精いっぱい造っている状況。身動きが取れない状況は私たちも一緒だ」と話す。各建設現場で6カ月待ちの状況だとすると、今造っているボルトは半年前の注文を消化している状況にすぎない。もともと簡単に手に入るはずのものが、突如「入手困難なレアアイテム」に化けたのはなぜなのか。