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 「日本は、2060年までに中小企業の数を現在の半分以下、160万社程度まで減らすべきである」

 そんな「中小企業淘汰論」を主張し、経済界で話題を呼んでいる人物がいる。300年以上の歴史を持つ老舗企業で、国宝や重要文化財の修復などを手掛ける小西美術工芸社(東京・港)の社長、デービッド・アトキンソン氏だ。

中小企業の経営を託されたアトキンソン氏は様々な改革を進め、会社を一気によみがえらせた(写真:的野 弘路)

 ゴールドマン・サックス証券(GS)のアナリストだった1990年代に、日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表。以来、日本経済を客観的立場から分析する論客として知られてきたアトキンソン氏が、小西美術工芸社の社長に就任したのは2011年のことだった。GSを退職した後、日本の伝統文化に関心を持ち京都に住んでいたところ、後継者を探していた同社の先代社長、小西美奈氏と偶然知り合ったのがきっかけだ。

 経営を任されたアトキンソン氏は、非正規雇用だった職人を正社員にするなど様々な改革を進め、在庫管理など社内の仕組みも次々に刷新した。利益率を大幅に向上させ、従業員約80人の中小企業を一気によみがえらせた。

中小企業経営を知りぬいた上での結論

 こうして中小企業経営に期せずして深く携わったアトキンソン氏が今年9月に出版した書籍が『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか』(講談社+α新書)だ。だが、中小企業経営を知りぬいた上で書かれたであろうその本の中身は、それこそ中小企業経営者にとって衝撃的なものだった。「中小企業こそが日本経済の停滞の原因であり、再浮揚のためにはその淘汰が不可欠」。これがこの本の骨子だ。

 「中小企業を半減させるなど、とんでもない暴論」。そう憤る人は多いはずだ。日本の企業数のうち99.7%は中小企業が占め、国民の雇用の7割を担っている。アトキンソン氏が「宝」と評価する文化財同様、中小企業もまた「日本の宝」ではないか、という声もあるに違いない。

 そんな声について、アトキンソン氏は「感情論ではなく、論理とデータを用いて冷静に議論すべきだ」と話す。