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タバコなどの密輸が増える懸念も

離脱案によっては、犯罪が増えるという見方もあります。

 アイルランド和平が成立後の20年間、我々は犯罪が起きないように努力してきました。今はブレグジットによって犯罪が増えることをとても心配しています。もし犯罪が起きてしまえば、国境の両サイドにとってダメージになるからです。

 離脱案によっては例えば、タバコなどの密輸が増える可能性があります。例えば、こんなことがありました。2015年にEUでミルクの生産調整が廃止されました。ただ、英国の調整廃止のタイミングがずれたため、不法業者がミルクを密輸するという問題がありました。彼らはお金のことしか考えていません。

 我々はアイルランド和平の後の世代で、新しい経済システムを作り上げてきました。ブレグジットの後に、新しいシステムを作り上げるのには長い時間がかかります。我々はもう引退しているでしょうから、とても心配です。

英国の政治家は北アイルランドの現状を理解しているのでしょうか。

 政治家は理解しているところもあれば、理解していない部分もあります。政治家から「合意なき離脱でもいい」というナンセンスの声が出なくなりました。合意なき離脱では多くの失業者が出る可能性があり、考えただけでゾッとします。どんな離脱案でも、合意なき離脱よりはマシという、我々の説明をようやく理解してくれるようになりました。

 しかし、ジョンソン首相の離脱案には様々な問題点があり、北アイルランドの現状を理解しているとは思えません。何度も言いますが、ブレグジットで最も影響を受けるのは食品と飲料の業界で、北アイルランドとアイルランドの国境なのです。

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 NIFDAのマイケル・ベル代表は、穏やかな口調で諭すようにブレグジットに対する強い危機意識を語った。北アイルランド最大の産業である食品関連産業の減速は、地域経済に大きな影響をもたらす。次回は北アイルランドの食品向けラベル製造会社「ニュープリント」CEOのインタビューをお届けしたい。続く。