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 もともと3回目は英国のEU離脱(Brexit、ブレグジット)に関する緊急座談会を掲載する予定だったが、その前に別の原稿を入れたい。今週末にブレグジットと無関係ではないイベントが日本で開催されるからだ。ラグビーワールドカップ(W杯)の準決勝で、26日に英国のイングランドがニュージーランドと対戦、27日に英国のウェールズが南アフリカと対戦する。そして11月2日が決勝戦だ。

 まず、ブレグジットの日程とラグビーW杯の関係について。英首相のボリス・ジョンソンは10月末にEU離脱を訴え続けてきたが、英議会が離脱案を審議する時間が少ないと反発し、延期を余儀なくされそうだ。ボリスは延期の条件として12月12日の総選挙を提案している。

 ボリスの父親であるスタンレー・ジョンソンは「イングランドが決勝に進んだらボリスは日本に応援に行く」と言っている(https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/100200101/)。本来の政治日程であれば離脱日の直後なので難しかったが、長期延期となれば来日できるかもしれない。

 そもそもボリスはラグビー好きだ。「イートン校やオックスフォード大学でもラグビーをしていた。いいプレーヤーだった」とスタンレーは証言する。今回のW杯の準々決勝でイングランドがオーストラリアに勝った後も、ボリスは英議会で勝利に言及していた。

 そして、移民への理解という意味でも今回のW杯は重要な役割を果たすかもしれない。なぜならブレグジットはもともと移民急増への対応が大きなテーマであり、強硬離脱派は移民排斥のキャンペーンを展開していたからだ。

 こうした背景があり、2016年の国民投票以降、英国で人種差別が増えていると言われる。

 実際、サッカーではアフリカ系の選手に対する人種差別が大きな問題になっている。プレミアリーグでは人種差別のヤジやツイッターの投稿が目立ち、リーグが対応に追われている。10月には2020年欧州選手権予選のイングランド対ブルガリア戦で、人種差別のヤジによって試合が中断。後日、ヤジを飛ばしていた6人が逮捕された。

ラグビーのイングランド代表の中心選手として活躍するマロ・イトジェ(写真:PA Images/アフロ)

 ラグビーのイングランド代表に象徴的な選手がいる。ロックのマロ・イトジェだ。両親がナイジェリア人で英国で生まれた。身長195cm、体重115kgと恵まれた体格を持つ。

 2016年に世界最優秀新人を獲得したばかりだが、既にイングランドの中心選手として活躍している。ラインアウトを引っ張るほか、スピードがあり、タックルが強烈だ。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院で政治学を修めるなど文武両道で、イングランド代表の将来のキャプテン候補と言われている。

 そのイトジェは先週、サッカー、イングランド代表選手に対する人種差別について強く非難した。英メディアによると、「人種差別にゾッとする。恐ろしい。私は経験がないが、ラグビー界でもプロや草の根のラグビーの試合で被害にあった人々を知っている」と語った。