最初は「嫌なヤツ」と思うこともある

小山:何だろうな。ただ昔、ふと考えたことはあります。いろんな人物がいる中で、どんな人がマンガの主人公になるだろうか。そう考えたときに、「誰を主人公にすることもできる」、と気づいたんです。

 つまり、人それぞれ正義というものがありますよね。それぞれの正義は全然違う方向を向いていても、その人だけを見れば、それが正しく見える。だから、それを受け入れる。

古野:受け入れる。作者としてですね。

小山:そうです。そうすれば、誰を描くときも、その人の正しい部分やいい部分を見つけていくことができると思ったんですね。

古野:ということは、最初からすべての登場人物について、いい面を引き出そうとしたわけですね。だから『宇宙兄弟』の登場人物に悪い人がいないんですね。でも、最初からいい面が常に見えるわけじゃないのでは?

小山:そうですね。僕自身もそれを知らないんです。初めにポンと出てきたときに、すごく嫌な感じで出てくる。「こいつ嫌なヤツやな」と(笑)。誰が見ても嫌なヤツに見えたとしても、なぜそういう考えに至ったのかを聞いていくんです。

古野:聞いていく、というのは?

小山:自分の脳内で質問していく感じです。頭の中にキャラクターがいて、最初は完成されているわけではないんですが、僕が質問して、何かリアクションがあるたびにキャラクターがどんどん作られていきます。

 さっきの話でいうと、過去に何かがあってその性格になっているはずなので、その過去までを振り返って聞いていくんです。そうすると見えてくるものがあります。その人が生きてきた歴史が土台になって、キャラクターが完成されていくという感じです。

古野:あるキャラクターが登場したら、「その人が今こうなったのは子どもの頃にこういう経験があるからだな」と、自分で問いかけながらキャラクターを作っていくわけですね。ということは、キャラクターを最初から作り込んでいるわけではない?

小山:最初から作ってないです。マンガのキャラクターをどうやって作るんですか、と聞かれて、多くの漫画家さんが「キャラクターは作るものじゃなくて、育てるものです」と答えていますが、僕はそれが正解だと思っています。僕はそれをもっとキャッチーな言葉で、「キャラクターと出会う」と言ってるんですが(笑)。

キャラクターに昔の部活のことを聞いてみた

小山:僕が漫画家として持つべきと思っているのは、「出会う」という意識でキャラクターに向き合う姿勢です。

古野:出会うという意識、というと?

小山:例えば現実の世界でも、初めて出会う人って、その人のことをよく知らないじゃないですか。「この人はこんな性格」と決まったものがすべて見えているわけじゃない。家族のことや、学生の頃の部活のことなどいろんな質問をしていって、徐々にその人のことが分かってくる。そういう体験をキャラクターに対してもやっています。

古野:……すごいですね。

小山:この前、紫(※)にも部活のことを聞きました(※紫三世。ムッタの先輩宇宙飛行士)。僕、それを聞くまで、紫がバスケ部だったって知らなかったですよ。

38巻#357 「フェイクの人」
38巻#357 「フェイクの人」
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古野:あ、紫はバスケ部。そのイメージはすごくあります。ハマります。