小山:なるほど。どうなんだろう? いろんな人を観察しているかというと、しているのかな?

古野:小山さんのように「受容性」の高い人は、実は観察力が高いという結果が出るんですよ。

小山:そうですか。

古野:FFS理論は、さっき言ったように、人の潜在的な強みを把握できる理論ですが、もう一つの側面としてストレスの理論でもあります。因子によって、どんなときにストレスを感じるのか。ストレスを感じると、その人のいい面がどのように悪く出るのか。そういうことも分かる理論です。

人の役に立てずに自虐的になるキャラクター

古野:人のポジティブな部分とネガティブな部分が絶妙に表現されているなと思ったのが、ピコ・ノートンです(※『宇宙兄弟』の登場人物で、宇宙開発の技術者)。最初、ムッタたちの教官として登場したときは、ダメダメな感じでしたね。昼間から酒を飲んでばかりいて、教官らしいことは何一つしようとしない。そんな彼をFFS理論で分析すると、「受容性」が高い人物と考えられます。

 「受容性」の高い人は、「人の役に立てていないこと」がストレッサー(ストレスを生む原因)になるんですね。そして、ストレス状態になると、自虐的で逃避的になります。そのことから考えて、最初このドラマに登場したときのピコは、ストレス状態にあったのではないかと分析しました。だから、自虐的で逃避的で、ムッタたち訓練生のことはほったらかしてゲームばかりしている(笑)。

 でもそのうち、課題に真剣に取り組むムッタたちの会話が気になって、少しずつ関わろうとし始めます。それで、「パラシュートの『パ』ぐらいは教えてやってもいいかな」という、あの名言につながっていくわけです。ピコは途中から、ムッタにとってすごく優しい、面倒見のいい先輩に変わっていきますね。周りの人が育っていくことに関わろうとするのは、「受容性」の特性なんです。

11巻#105 「技術者のスイッチ」
11巻#105 「技術者のスイッチ」
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 ストレス状態にあってネガティブな発言や行動をしていた人が、何かをきっかけにポジティブに変わっていくことがあります。見た目も表情もガラリと変わります。このとき因子の軸がブレると、僕からすると違和感があるんです。

小山:因子の軸がブレる、とは?

古野:「あれ? この人はさっきまで『保全性』の特性が出ていたのに、『拡散性』の高い人に変わっちゃったな」とかですね。

小山:ああ、なるほど。

古野:でも、小山さんが描く登場人物は、ポジティブな状態からネガティブな状態へ変わるときの因子が一致している。だから、「なるほど、こういう人っているよね」と思える。登場人物の人物像が鮮やかに浮かび上がってくるんです。

 かなりの人物眼を持っていないと、こんなシーンは描けないと思うんです。小山さんの中では、人物のいい面と悪い面がイメージできているんでしょうか?

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