実は、ムッタのようなタイプは、日本人では多数派です。

 5つの因子のうち、気質に由来する因子である「保全性」と「拡散性」に着目すると、日本人の65%は「保全性」が高く、35%は「拡散性」が高いことが我々の調査で分かっています。ですから、先ほど挙げたムッタの言動は、日本人のおよそ6割の人にとっては、「身に覚えがある」と感じられるかもしれません。

自分を「評価されるところがない」と低く見積もりがち

 では、ここからは、ムッタに代表される「保全性」の高い人が就活に臨んだ場合の、ありがちな振る舞いを見ていきましょう。

 「保全性」の高い就活生の悩みで多いのが、「エントリーシートに書くことがない」。

 これに本気で悩んでいる「保全性」の高い人が実に多いのです。
 これは妄想ですが、おそらく今ムッタが就活をしたら「俺はいったい何を書くべきなんだ」と、悩みに悩んで、答えが出ないまま部屋の掃除を始めるような気がします。

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2巻 #12「コロコロムッタ」
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 それはなぜか。
 「保全性」の高い人には、「慎重である」という特性があるのですが、その「慎重さ」をネガティブに理解しているからです。

 「保全性」の高い人が慎重なのは、失敗したくないという気持ちが強いからです。失敗して、「できない奴」と思われたくないから、これまでやったことのないことに対しては、なかなか最初の一歩を踏み出すことができません。

 それは裏を返せば、物事を着実に成し遂げたい気持ちの強さ、です。
 着実に成し遂げるために、「保全性」の高い人は事前にたくさんの情報を集め、きちんと整理するなど準備して、計画的に取り組みます。

 ただし、準備万端整った状態にしようとすれば、物事に取りかかるまでに時間がかかります。何かを始めても、一歩一歩、コツコツと進めていくので、意外性や派手さはまったくありません。ウサギとカメでいえば、カメでしょうね。

 そして最近は、多くの企業が「柔軟性があり、変革推進できる人材を求める」といったメッセージを打ち出しています。
 「保全性」が高い人は、これを見て「慎重さ=挑戦しない、前に進む勇気がない」と捉えて、自分のことを「企業が評価する取りえがない人間だ」と思い込んでいるのです。

 しかも、ムッタの振る舞いでも見たように、他人と比較して「自分はダメだ」と卑下しがちなところもあります。例えば、身近にいる活動的な友人と比較して、「誰々さんはいろんなことに挑戦して、あんなこともやっているけれど、自分は何もしていない」と思って、焦りを覚えてしまう。と同時に、「自分はあの人に負けている」と自分を低く見積もって、自信を失くしてしまいます。

 そして、就活直前になって、「時間がない、間に合わない」「あー、もう書くことなんて何もない」とお手上げ状態になってしまうのです。

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