1巻 #2 「俺の金ピカ」
1巻 #2 「俺の金ピカ」
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 今年の就活戦線が、いよいよ本番に入りました。しっかりと準備してきた学生さんもいれば、いまひとつ本気で考えてこなくて「準備不足だ、どうしよう」と焦っている学生さんもいるかもしれませんね。

 そんな就活生の方々に向けて、つい先日、拙著『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたを引き出す自己分析』を上梓しました。

 コルク代表の佐渡島庸平さんも言っていましたがこちら、就活とは、いわば企業とのデート、もしくは“お見合い”のようなものです。自分にピッタリな会社を選ぶには、まずは自分がどんなことが得意で、どんな場面で自分の力を発揮できるのか、逆にどんなことが苦手で、どんな場面では自分らしさを発揮できないのかなど、正しく自己理解をする必要があります。そのうえで、自分の魅力を採用側に分かりやすく発信することが大切です。書籍ではそのようなことを書きました。

『宇宙兄弟』から学ぶ、自分の「キャラ」の活かし方

 就活シーズンを過ごしている皆さんがもう少し具体的にイメージしやすいように、「もし、マンガ『宇宙兄弟』の登場人物たちが就活生だったら」と仮定して、小山宙哉さんが描いた原作の個性的なキャラクターの振る舞いをFFS理論に沿って分析し、彼ら彼女らと似た個性を持つ人が、就活の現場でついやってしまいがちな行動、やらかしがちな失敗を取り上げていきます。

 そうしたネガティブな部分をどのようにポジティブに転換し、面接やエントリーシート(ES)で発信していくとよいのか、を解説していくことで、ご自身のキャラクターをもっともいい形でアピールできるようになっていただけたら、と思います。就活のヒントにしていただけたら幸いです。

 なお、この企画はもちろん、作者である小山さんに了解を得ていますが、これは『宇宙兄弟』の大ファンである私(古野)と前田はるみさんが、マンガを読んで考え、FFS理論で意味づけた、いわば妄想です。何卒、ご了解ください。

 最初に登場してもらうのは、『宇宙兄弟』の主人公である南波六太(ムッタ)です。

 連載が進んで現在は宇宙飛行士として大活躍のムッタ。ですが、「宇宙飛行士になる」という幼い頃の夢に、最初から素直に飛び込めたわけではないことは、宇宙兄弟ファンならよくご存じのことでしょう。

他者評価を気にし、ネガティブ思考になりがちな「保全性」

 子どもの頃から宇宙飛行士に憧れていたムッタですが、そんな“大それた、現実離れした夢”を学校の友人には言い出せず、自動車メーカーに就職し、技術者として成果を出すものの、あることから上司と衝突して(文字通り頭突きを食らわして)、会社をクビになってしまいます。

1巻 #1「弟ヒビトと兄ムッタ」
1巻 #1「弟ヒビトと兄ムッタ」
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 31歳にして、フリーターのムッタ。同じ夢を抱きながら、先に宇宙飛行士になった弟の南波日々人(ヒビト)と比較して、「あいつはすごいが俺はダメ」と自分をネガティブに評価していました。いじけたムッタのお決まりのフレーズは、「ドーハの悲劇の日(※)に生まれたから、悲劇には慣れている」です。

(※1993年10月28日に、サッカーの日本代表がワールドカップ予選でイラクに敗退したことを指します。初の予選突破がかかり、2-1でリードしながらロスタイムに同点にされ得失点差で敗退、日本中が悲鳴に満ちたものです)

 これらのムッタのエピソードから、5つの因子を手がかりに人の個性を分析するFFS理論(開発者:小林惠智博士、詳しくはこちら)を使ってムッタの個性を観察すると、「保全性」の高いタイプであることが分かります(他のエピソードからは「受容性」の高さも読み取れますが、ここでは「保全性」に焦点を当てて話を進めていきます)。

 友人にどう思われるのかが気になって、自分の本当の夢を言えずに諦めてしまうところや、他人(ヒビト)と自分を比較して「できない自分」を卑下してしまうところなど、「保全性」の高い人がネガティブな状態のときにやりがちな言動が、宇宙飛行士という夢に向かい始める前のムッタには、そのままに表れています。

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