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成果を褒めない上司と、それが不満な部下

 「自分の感じ方や考え方が普通で、だから他の人もきっと自分と同じように感じているはず」
 人はどうしてもそう思いがちです。

 ところが実際は、個性が違えば、感じ方や考え方、行動までも違ってきます。冷静に考えれば分かることです。それなのに、自分と同じ感覚や考え方を相手にも期待したり、押し付けたりしてしまう。そこに、擦れ違いやトラブルが起きる。

 例えば、こんなケースです。

 部下は上司の指示通りに仕事をしっかりと仕上げました。上司に報告すると、上司はただうなずくだけ。「首尾よくやった」と思っている部下は、「えっ、褒めてくれないの?」と肩透かしを食らいます。

 あるいは、次のようなケースも。

 ミーティングが始まる前、その場の雰囲気を和ませようとしたメンバーの1人が、最近見たテレビの話題を持ち出しました。すると、上司がピシャリと一言、「無駄話はもういいかな」。せっかくの気遣いを制されたメンバーは、気まずそうにうつむくしかありません。

 どちらも「上司が冷たい、人間味がない」のが原因のように思えるかもしれませんが、実は個性の違いによるものです。FFS理論(開発者:小林惠智博士、詳しくはこちら)は、「個性による感じ方、考え方、行動の違い」に着目して、チームの生産性向上を目指すもので、こうした「悪意はないのに誤解される」悲劇を避けるためにも役立ちます。

 こうしたすれ違いは、「受容性」の高い部下と、「弁別性」の高い上司の間でよく起こります。

白黒つけたがる弁別性

 「受容性」は、これまでにも何度か出てきましたね。人の個性を構成する5つの因子のうちの一つで、「受け容れる力」のことです。「受け容れる」というと受け身に捉えられがちですが、決して受け身ではなく、積極的に周囲の人を元気にしていこうとする個性です。なぜなら、人が喜ぶことが、自分の喜びだからです。

 「受容性」の高い人は、仲間の役に立ちたいと思い、役に立っている実感を欲しがります。日本人にとても多い属性です。

 一方、「弁別性」は、黒か白か、0か1かの「二律に分けていく力」のことです。

 判断軸は、「適切である」か「適切でない」かです。状況や心理状態をどちらかにはっきり分けて、無駄なく合理的に進めていこうとする個性です。

 そのため、「弁別性」の高い上司の指示は、定量的で的確。普段は冗談も言いません。会議では冒頭に気の利いた話もなく、単刀直入に本題に入ります。

 部下が指示通りに仕事を遂行するのは、「よきこと」ではありますが、特別に褒めるほどではありません。このように余分なことをしない、ムダがないのが、「弁別性」の高い人の特徴です。