「人を信じる基準」を持っている

 では「凝縮性」が高いと、部下と良好な関係性を築くのは難しいのでしょうか。もちろんそんなことはありません。

 「凝縮性」が高く、部下に慕われる優秀なリーダー像を、『宇宙兄弟』(小山宙哉作、講談社)の登場人物、NASA宇宙飛行士のブライアン・Jで見てみましょう。

 ブライアンは、強力なリーダーシップと周りへの配慮で、宇宙飛行士やNASAスタッフからの憧れと尊敬を集めています。人間的な魅力に溢れた人物です。

 なぜ、私たちがブライアンを「凝縮性が高い」と分析するかといえば、彼は「人を信じる基準」をはっきりと言い切るからです。

 彼には、相手にいつもする質問があります。
 「死ぬ覚悟はあるか」

 死と隣り合わせの職業だからこその、究極の質問です。これに相手がどう答えるかによって、ブライアンは相手を「信じるか」「信じないか」を決めているのです。

 この「信じる」「信じない」というフレーズを好んで使うのも、「凝縮性」の特徴です。そこには自分なりの「正義の基準」があり、基準に合っているものはすべて「正義」。誰でも信じるわけではなく、基準に合う人だけを「信じるに値する人」と明確に決めているのです。「みんないい人」と信じやすいのは受容性です。そして、受容性には「信じない」もないのです。

 ブライアンが宇宙飛行士仲間やスタッフに対する接し方は、「凝縮・上司」がぜひ見習いたいところです。

 ここで彼の部下だった⽇本⼈宇宙⾶⾏⼠、吾妻滝⽣(アズマ)に登場してもらいましょう。彼も昔、ブライアンから「死ぬ覚悟はあるか」と問われた一人です。そして今、かつてブライアンから⽰された「信じる・信じないの基準」を噛みしめているところです。

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6巻#52「一つの質問」
6巻#52「一つの質問」
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「相手に合わせる」ことにも正義はあると知る

 アズマは、国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在や合計50時間を超える船外活動の実績を持つベテラン宇宙飛行士です。「日本人で最初に月面に降りるのは彼だろう」とマスコミや世間から期待され、報道は過熱する一方。しかし、本人は「英雄」に祭り上げられることを望んでいないし、「日本人初」の称号も重圧でしかありません。

 ブライアンは、そんなアズマの繊細さに気づいていました。彼を重圧から解放するため、彼にこう伝えます。

 「俺に任せろ。日本人初のムーンウォーカーにはヒビトを推薦しておく」

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