労務では、細かい法律や手続きを知っておく必要があります。Tさんは、仕事での不安を払拭するため、手当たり次第に参考書を読み、会社が契約する社会保険労務士に疑問をぶつけ続けたそうです。
さらに、その情報収集は周辺に及びます。人事制度から人材育成まで枠を広げていくことで、「人事関連で一番詳しいやつ」という“称号”を得るに至ったのです。
ただし、これだけ豊富な専門知識で武装しても、Tさんは望んで今のポジションに就いたわけではありませんでした。
「保全性」の高い人は、自分から枠の外へ飛び出すのは苦手なのです。
『宇宙兄弟』の愛読者の方、もしくは前回を読んでくださった方は、ムッタがどうやって宇宙飛行士になるための切符を手に入れたか、覚えていますよね? ヒビトがムッタに内緒で、JAXAの選抜試験に応募したことがきっかけでした。ムッタ自身が道を切り開いたわけではありません(第1回を参照)。
「保全性」が高い人はこう戦おう
Tさんの場合、上司から常に相談されるほどの専門性を磨き、「自分の部下に欲しい人材」という評判を獲得しました。その結果、上司に引き上げられて、今の地位を築き上げたのです。
思いつきで動くのが苦手で、しっかり情報を集めたいと考える人、FFS理論的には「保全性」が高い人が、一歩を踏み出し、自信を持って戦うためのコツをまとめます。
「保全性」の高い人は、やみくもに情報を集めるのではなく、誰にも負けない専門領域を持つことを目指すとよいでしょう。「この領域なら誰にも負けない」と思えるくらいの知識を蓄積し、体系化するのです。その知識の及ぶ範囲でなら、自信を持って戦えるはずです。
反対に、それ以外の領域で戦おうとは絶対にしないことです。自分の守備範囲を見極めることが大切です。これは、未知の領域にも飛び込んでいける「拡散性」の高い人とは異なる戦い方です。
不安を感じたら、頭の中を自分の専門領域で使える情報で埋めて、徹底的に理論武装するのがいいでしょう。「ここまで調べつくした」「インデックスも付いているから、すぐに対応できる」「自分が一番詳しい」と“思わざるを得ない”状態まで、自分を追い込むのです。
そうすれば、余計なことを考える隙がなくなり、不安感を払拭できます。自信にもつながります。ここぞという大事な会議やプレゼンの場で、決定打を打つことができるはずです。
思い当たる方は、実際に「コロコロ」を机に置くのもいいかもしれません。そして「コロコロムッタになりかかった」と気づいたらゴミ集めをストップ。そのプレッシャーを専門分野での情報収集に向けましょう。
© Chuya Koyama/Kodansha(構成:前田 はるみ)
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