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 晴れて宇宙飛行士になったムッタは、実践に備えてNASAでの訓練に明け暮れます。しかし、あるミッションのバックアップクルーへの抜てきを断ったことから、月面で使うバギーの開発部署に異動を告げられます。つまり、“飛ばされた”のです。

 ここで結果を出さなければ、宇宙飛行士には戻れないかもしれない。焦るムッタに与えられた課題は、「クレーターに落ちても壊れないバギー、もしくはクレーターに落ちないバギーを製作する」というものでした。

 月のような低重力環境でブレーキ性能を高めることは意味がないし、宇宙空間へ打ち上げるものだから軽量でなければならず、頑丈なバギーは作れません。
 さて、どうするか?

 ムッタは宇宙飛行士になる前、自動車開発分野で専門性を窮めた一流の技術者でした。また、子どもの頃からJAXA関連のイベントに通い詰めてきた、筋金入りの“宇宙マニア”でした。この2つの分野において、ムッタの知識はかなり体系化されていたと考えられます。

 ムッタの記憶をよぎったのは、自動車開発会社に勤めていた頃に取り組んだ「空飛ぶ車構想」でした。当時の最大の課題は、交通の秩序を空でどう維持するかということ。その解決策として考え出したのが、「フロントガラスに〝道を映し出す〟」というアイデアでした。その案を引っ張り出して、「道なき月面に道を映し出す」というプランに昇華させたのです。

 こうして、技術者としての経験と人脈、それに月面環境の情報を総動員して、これまで誰も考え付かなかったアイデアを生み出したのです。

14巻#134「解決案かもしれない」

自分の専門領域で、徹底的に理論武装を

 私の知り合いに、仕事では即断即決、周りからはかなり行動派と見なされている人がいます。実は彼は、FFS診断では「保全性」が第一因子です。つまり、本来は行動派ではありません。

 本人もそれは自覚している様子です。

 「僕はとても慎重で、誰かに指摘されることが不安で仕方ない。だから、徹底的に情報を集めて調べつくして、どんな質問にも完璧に答えようとしているだけです」

 仮にこの人をTさんと呼ぶことにしましょう。Tさんは現在、大手メーカーの人事部門のリーダーです。そうなったのは、新人で配属された部門がたまたま人事労務だったからです。